<金口木舌>「歴代宝案」を「世界の記憶」に


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 この1年、沖縄は本当に日本の一部なのかと、憤ることが多かった。一方で世界のウチナーンチュ大会もあり「世界の中の沖縄」ということを考えた人も多かったのではないか

▼琉球王国時代の外交文書集「歴代宝案」がある。王府が編集した。1424年から1867年まで444年間の中国や諸国との外交文書を266巻にまとめた。「世界の中の琉球王国」を実証する貴重な遺産であり、研究史料だ
▼原本は失われ、7種類の写本や写真記録を基に1989年から復元編集事業が行われている。校訂本、訳註本の完結が迫り、このほど県教育委員会に答申された第3次刊行計画では、2027年度までに総索引、辞典、普及本、デジタル版を出すという
▼「戦後最大最長の文化事業」と琉球大の赤嶺守教授は強調する。中国、台湾側の協力で、中国清代の公文書から琉球関係分を選んで刊行する事業も続いている。冊封使派遣の準備など中国側の事情も新たに明らかになってきた
▼これら周辺史料と照合して校訂の正確さを増すことで、赤嶺教授は世界記憶遺産(「世界の記憶」)登録が可能になると訴える。「一つの国のこれだけ長期間の外交文書の記録は他に例がない」
▼沖縄にとって「歴代宝案」は足元の泉。さらに世界共有の記憶とすることで、「世界の中の沖縄」の重みはさらに増すに違いない。