伊計ヘリ不時着 16時間立ち入り規制 米軍と県警、6万平方メートル


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白い砂をまき、機体からもれた油をとる米軍ら=21日午後12時48分、うるま市与那城伊計の不時着現場

 【うるま】20日にうるま市与那城伊計島の農道に米軍普天間飛行場所属のAH1Z攻撃ヘリが不時着した後から約16時間にわたって米軍と沖縄県警は規制線を張り、広範囲にわたって現場への立ち入りを制限した。同機が離陸した21日もしばらく事故後の対応などで地主らへの立ち入り制限が続いた。2004年8月の沖国大米軍ヘリ墜落、16年12月の名護市安部のオスプレイ墜落と同様、民間地が「米軍占有地」と化し、住民の目の前で米軍優先の対応が繰り広げられた。

 識者は「民間地で住民に立ち退けということ自体がおかしい。米側に潜在的な占領意識があるのではないか」と指摘している。

 2004年の沖国大米軍ヘリ墜落事故を受けて、日米が取り交わした基地外での米軍機事故に関するガイドライン(指針)では、事故現場への立入制限について「常識的な原則を用い可能な限り小さく設定し、制限の期間を可能な限り短くすること」と定めている。だが、今回の不時着では長方形に南北200メートル、東西300メートルにわたって規制線を張り、沖縄セルラースタジアム那覇の面積の2・3個分に当たる約6万平方メートルの民間地に住民が入れなくなっていた。

 規制線は不時着から約1時間後の20日午後8時45分ごろにうるま署が農道に沿って張った。21日午前11時13分にヘリが離陸した後、約5分後に外側にあった規制線は外されたが、約100メートル先にある内側の規制線は残され、立ち入り制限が続いた。同日午後1時ごろに内側の規制線も外されたが、米軍が砂を持ち込んで機体から漏れた油を処理している間、住民は近づけなかった。

 外側の規制線についてうるま署は「交通の流れや安全確保の観点から現場の判断で規制を実施した」と説明したが、範囲に関する基準などについて言及しなかった。

 沖縄国際大学の照屋寛之教授(政治学)は「そもそも民間地域なので、住民や地主が入れないこと自体がおかしい。(米側に)潜在的な占領意識がある」と指摘する。山内正・元県消防学校長は「機体そのものに対する規制は仕方がないが、周辺の漁場や畑などの財産を規制する権利が米軍にあるのか。日本国内での発生事案なので消防法に基づいた『消防警戒区域』を設置し対応すべきだ」と話した。(清水柚里、上江洲真梨子)