読めますか? テーマは〈君子〉です。

三端

答え
さんたん
(正解率 33%)

文士の筆端、武士の鋒端(ほうたん)、弁士の舌端。「君子は三端を避く」は、君子は文章、武器、弁論で他人と争わないというたとえ。

(2017年01月16日)

選択肢と回答割合

みはし 28%
みはた 39%
さんたん 33%


日月の食

答え
じつげつのしょく
(正解率 49%)

「にちげつのしょく」とも読む。日食や月食。「君子の過ちや、日月の食するが如(ごと)し」は論語の一節。君子は、たとえ過ちを犯しても、日食や月食がすぐ終わるように本来の徳性を取り戻すという意味。

(2017年01月17日)

選択肢と回答割合

にちがつのじき 20%
じつげつのしょく 49%
かづきのしょく 30%


豹変

答え
ひょうへん
(正解率 99%)

「君子は豹変す」は本来、ヒョウの毛が抜け変わって斑紋が鮮やかになるように、君子は過ちを知ったらすぐ改めること。今は態度を一変させることを非難する意味でも使う。

(2017年01月18日)

選択肢と回答割合

ひょうへん 99%
しゃくへん 1%
てんぺん 0%


小人は下達す

答え
しょうじんはかたつす
(正解率 30%)

器量の小さい人はつまらぬことを知ろうとする。「論語」で「君子は上達す」と対比させた形で出てくる。「下達」は上の人の意思を下の者に伝える意味でも使われ「上意下達」という熟語もある。

(2017年01月19日)

選択肢と回答割合

しょうじんはげたつす 50%
しょうにんはかたつす 20%
しょうじんはかたつす 30%


喩る

答え
さとる
(正解率 65%)

「たとえる」とも読むが、論語の一節「君子は義に喩り小人は利に喩る」は「君子は物事を正しい道に合うかどうかで考えるが、徳のない人は利益を得ることばかり考える」という意味。さて、トランプさんは?

(2017年01月20日)

選択肢と回答割合

にる 12%
さとる 65%
かじる 23%

◇結果とテーマの解説

(2017年01月29日)

この週は「君子」がテーマでした。トランプ米大統領の就任に合わせるにはどんな字がふさわしいか迷っていたのですが、ふと逆説的に浮かんだのがこの字でした。

偶然ですが、毎日新聞夕刊で連載中の田中優子・法政大総長のコラム「江戸から見ると」でも1月18日に「君子」がテーマになっていました。

江戸時代では論語が「君子」の導き手だった。君子とは高位高官の人であり政治をおこなう人を指すが、同時に学識と高い人格を備えた人を意味する。つまり政治をおこなう地位の高い人は人格者であって当然であり、そうあらねばならないという考え方が東アジアおよび江戸時代の日本の一般的な考えだった。

やはり君子といえば論語です。

「小人は下達す」は論語の「子の曰(のたまわ)く、君子は上達す。小人は下達す」から。「君子は高尚なことに通ずるが、小人は下賤なことに通ずる」というのが岩波文庫の「論語」の訳です(以下の論語もその引用)。これは今回最も正解率が低くなりました。

「上意下達」という四字熟語も「げたつ」と読んでしまう人が多いことは、かつての「読めますか?」の正解率27%で実証済みです。「上下」というと普通「じょうげ」と読んでしまうからでしょう。しかし米国議会などの「下院」は「かいん」で、「上下両院」は「じょうか」ですよね。「下達」もそちらと関連付けて覚えておけばいかがでしょう。

「喩る」は論語の一節「子の曰く、君子は義に喩り、小人は利に喩る」から。「君子は正義に明るく、小人は利益に明るい」。「喩る」は他にも「考える」「通じている」など、いろいろな訳語が当てられています。今は喩はほとんど「比喩」でしか使いませんし、「さとる」はほぼ「悟る」としか書きませんが、この格言の中身は古びていません。今こそ政治家の皆さんに対し用いるべきだと思います。

「日月の食」も論語の「君子の過ちや、日月の食するが如(ごと)し」から。「君子のあやまちというものは日食や月食のようなものだ。あやまちをすると〔はっきりしているので〕だれもがそれを見るし、改めるとだれもがみなそれを仰ぐ」

「孟子」ではこの言葉を引いたうえで「今の君子は、豈(あに)徒(ただ)に之に願うのみならんや。又従いて之が辞(いいわけ)を為(な)す」と嘆きます。「このごろの君子はただたんに過ちを押し通すばかりではなく、その上さらにいろいろ弁解してごまかそうとする」(これも岩波文庫より)との意味で、まことに今に通じる嘆きではありませんか。

「豹変」はほとんどの人が読める字ですが、元の意味はどれだけ知られているのでしょう。「岩波ことわざ辞典」(時田昌瑞著)によると

出典は中国の『易経』(革卦)で、君子は時代の推移に従って自己変革を遂げ、豹の毛が美しく変るように自己を一新し

とあるのですが

現代では、政治家などの考えや方針の豹変ぶりを弁護する場合や、自らが自己を正当化するようなニュアンスで用いられている。

つまり、今では孟子のいう「辞(いいわけ)」として使われているようです。

「三端」は「君子は三端を避く」という「韓詩外伝」の言葉から。君子は文章・武術・弁論で人と争うことはしない。人格者はその必要がないのでしょう。今の為政者とは大分違いますね。

トランプさんはツイッターですぐかみ付きますが、日本ではもっとひどい人がいます。例えば「てめえ」とか、とても汚い言葉を口走った上に「朝日の論説委員は、どんな聖人君主なのか、興味津津だ」と締めくくるツイートがありました。この人は「聖人君子」という言葉を知らないのか、単なる間違いなのか分かりませんが、いずれにせよツイッターは誰でも読める公共のものなのですから、君子でなくてももっと冷静になってから書いてほしいものです。

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