2017年2月15日
東京電力ホールディングス株式会社
理化学研究所

 東京電力ホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、代表執行役社長:廣瀬直己、以下、「東京電力HD」)と理化学研究所(本部:埼玉県和光市、理事長:松本紘、以下、「理研」)は、本日、ダム下流域の安全性を確保しながら水力発電用ダムの運用高度化を目指す共同研究(以下、「本研究」)に関する契約を締結いたしました。

 東京電力HDは、163カ所に最大出力986万kWに相当する水力発電所を保有しています。これまでダムの放流時間や放流量については、過去の降雨実績などの気象予報データやダム操作経験をもとに判断しておりましたが、最新のビックデータ分析技術などを活用して雨量や河川流量の予測精度を向上させることで、水力発電電力量を増加させるなどダムの運用高度化を検討してまいりました。

 本研究では、理研が保有する次世代型気象モデル※1やアンサンブルデータ同化手法※2、今後確立する河川モデルによる予測技術を用い、東京電力HDがこれまで蓄積してきた雨量や河川流量などの観測データとダム操作記録などのあらゆるデータの解析を行います。
 これにより、東京電力HDでは、ダム下流域の安全性を確保しながら年間最大1,500万kWh程度の発電電力量の増加を図り、水力発電所の生産性向上につながるスマート・オペレーションの実現とCO2排出量削減への貢献を目指します。

 東京電力HDは、再生可能エネルギーの導入拡大・技術開発や効率的な設備形成に向けた取り組みを推進するとともに、水力発電用ダムの最適操作にAIを活用するなどの検討を一層進めてまいります。

 理研は、自らの研究成果を社会に普及させるため大学や企業との連携による共同研究を積極的に進めており、今回の共同研究もその取り組みのひとつになります。

 なお、本研究の概要は以下のとおりです。

1.本研究概要
 理研のシミュレーションデータと実測データの双方を組み合わせるデータ同化手法による予測技術とこれまでの東京電力HDの水力発電用ダムの各種観測データや放流操作の経験を組み合わせ、雨量・河川流量の予測精度を向上させるとともに、東京電力HDの水力発電用ダムの発電電力量を増加させる効率的な放流操作の技術検討を進める。

2.実施期間(研究準備期間を含む)
 2017年1月~2019年12月末(予定)

3.実施場所
 東京電力HD 生坂(いくさか)・平(たいら)・水内(みのち)・笹平(ささだいら)・小田切(おだぎり)の5水力発電所
 (長野県長野市周辺、信濃川水系犀川(さいかわ)、合計最大出力99,800kW)

以 上

※1 次世代型気象モデル(SCALE)は、数km~数千kmの範囲の気象を、従来よりも高解像度でシミュレーションができる。理研のデータ同化研究チームらの研究グループは、100m四方の分解能で10~30秒で半径30~60kmの範囲の全点をすき間なく観測できるフェーズドアレイ気象レーダの観測データなどを用い、SCALEを使って個々の積乱雲を忠実にシミュレーションすることに成功した。これにより、ゲリラ豪雨を100m四方の分解能で30分前に予測する手法を開発した。

※2 アンサンブルデータ同化手法とは、気象等の事象について、シミュレーションを行った結果が誤差をもつことを前提に、少しずつ異なる複数のシミュレーションを同時に実行し、その結果と観測した実測データを比較して確からしさの情報を得る方法。誤差も考慮した上で客観的にデータ同化を行うため、予測精度の向上が期待できるが、計算量が膨大となる。理研のデータ同化研究チームではこの計算を効率的に行うために、局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)というアンサンブルデータ同化手法の研究・開発を進めている。

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