<社説>知事訪米終了 新政権へ発信戦略練り直せ


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 強い逆風の中、翁長雄志知事が就任後、3度目となった訪米行動を終えた。翁長知事は上下両院の議員やシンクタンクの研究者らと面談したほか、ジョージ・ワシントン大学で講演し、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古新基地建設を米側として断念するよう訴えた。

 その最中、トランプ新政権の閣僚として初来日したマティス国防長官が安倍晋三首相、稲田朋美防衛相との会談で、辺野古新基地建設を「唯一の解決策」とする認識で一致したと発表した。
 選挙期間中、オバマ前政権の政策を否定し、日米安保条約を「片務的な取り決めだ」と批判したトランプ新大統領の下で、日米が一致した「辺野古が唯一の解決策」という枠組みを崩せるのではないかという淡い期待もあった。
 しかし、初の日米防衛相会談で新基地建設問題を含め、日米関係の懸案は全て踏襲された。
 さらに米側には、辺野古移設を巡る最高裁判決の県敗訴で問題は決着したとの見方が強いことも分かった。
 高く厚い壁に対し、県は戦略の練り直しが必要となる。
 翁長知事は今回の訪米で「『辺野古が唯一の解決策』という考え方に固執すると、今後の日米安保体制に禍根を残す」と国務省や国防総省に伝えた。
 7割を超える県民が新基地建設に反対し続ける中での工事強行に加え、オスプレイ墜落や米軍属女性暴行殺人事件など米軍基地あるが故の被害が相次いでいることで、県民の基地削減の要求は在沖米軍基地全てに向かう可能性がある。
 きょう6日にも沖縄防衛局は辺野古の海上作業を再開し、大型コンクリートブロック228個を投下する。さらに知事権限を無視して岩礁破砕許可の再申請を出さず、工事を進める見込みだ。安倍首相は10日のトランプ大統領との会談で、辺野古移設の着実な進展をアピールするだろう。
 選挙戦で在日米軍撤退をちらつかせたトランプ大統領だが、国防費増額や海兵隊増強を打ち出し、全体の安全保障政策は不透明だ。
 トランプ政権に、辺野古新基地建設が中長期的には在沖米軍基地の不安定要素となり、米国にとって損失だと伝えねばならない。ワシントン事務所の役割を含め、沖縄側の発信能力を高めたい。