小中校の6割が耐震性に「問題あり」 那覇市、改築・補強に遅れ


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 沖縄県那覇市の市立小中学校全53校のうち、少なくとも約60%に当たる32校で耐震性の確保がされていない施設があることが9日までに分かった。32校のうち老朽化が激しい16校は耐震診断をせず改築することが決定している。別の16校は耐震診断を実施した結果、全ての学校で耐震性不足が見つかった。

 耐震改修促進法などで震度6から7の地震で倒壊、崩壊しないよう、耐震性を表す構造耐震指標(Is値)0・6以上を確保することが求められているが、耐震診断を実施した16校以外にも構造耐震指標を下回る施設が他にもある可能性が高い。教育施設そのものに使用の危険性がある。

 那覇市は16年、耐震基準を満たしていないとし、無期限休館を決定した那覇市民会館のIs値は0・257だった。那覇市民会館を下回る施設がある学校は11校だった。

 耐震診断は13年と14年に市教育委員会施設課が16校で実施。校舎の一部に限って耐震性を確保している棟もあるが、全ての学校で国が求めている数値を下回った。

 那覇市内には53校の小中学校があり、今回耐震診断を実施した小中学校はその一部。耐震診断はせず、まだ改築の予算化がされていない施設がある学校は少なくとも5校ある。

 沖縄県では過去に地震の発生記録が少なかったことなどから、建物の耐震強度の目安となる地震地域係数が全国で最も低い。そのことが影響し、国は0・6以上のIs値を確保するよう求めているが、沖縄では0・525を超えることで「耐震性あり」と判断される。全国よりも低い数値であるにもかかわらず、基準値を確保することができていない。

 琉球大学環境建設工学科のカストロ・ホワン・ホセ教授(57)=建築学=は「沖縄は全国一低いIs値0・525を超えればよしと行政はしているが、沖縄で大地震が発生しないという保証はない。一概にIs値だけを見てどの程度の震度に耐えられるのか断言できないが、大地震に耐えられるとは思えない」と指摘した。(嘉数陽、田吹遥子)