「普天間停止」まで2年 国の主張、論理矛盾 県「辺野古移設とは別」


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米軍普天間飛行場に駐機するMV22オスプレイ。国が県に約束した「5年以内の運用停止」の期限まで2年を切ったが危険性はそのままで、政府の負担軽減への姿勢は急速にしぼんでいる=1月6日、宜野湾市の米軍普天間飛行場

 政府が県に実現を約束したはずの米軍普天間飛行場の「5年以内の運用停止」。18日で「期限」は残り2年を切ったが、世界一危険とされる普天間の運用状況は変わらない。政府はここに来て名護市辺野古移設に県が協力しないことが運用停止が進まない理由だとし責任転嫁を強めている。だが移設は順調に進んでも約10年の工期が見込まれ、残り2年で工事が終わるはずもなく政府の主張は論理矛盾を抱える。県側は「この約束が出た時から辺野古移設と運用停止は切り離す話だった」(幹部)と述べ、自らの約束を“人質”に辺野古受け入れを迫る政府に反発を強めている。

 県が運用停止を求める中、政府は「悪いのは県だ。国は運用停止に向けて辺野古移設を努力している」(防衛省関係者)と強弁する一方、残り2年での運用停止を米側と協議もしていない。県が「負担軽減にならない」と反発する辺野古移設の強行を正当化し、開き直りの姿勢を見せる。

助け船

 政府は辺野古埋め立て承認取り消しを巡る最高裁判決で、県に勝訴したのを機に昨年12月に埋め立て工事を再開した。日米首脳会談の共同声明でも改めて辺野古移設は「唯一の解決策」と盛り込むなど、世論に辺野古移設が「既定路線」だと印象づけるのに躍起となっている。

 それに同調するかのように普天間飛行場を抱える宜野湾市の佐喜真淳市長が、政府への“助け船”とも言える発言に踏み込んだ。15日の衆院予算委員会の地方公聴会に参考人として出席した佐喜真氏は、辺野古移設に関する見解を問われ「否定できない」と述べ、事実上容認した。

 佐喜真氏はこれまで賛否を示してこなかったが、周囲に「辺野古工事が始まったんだから言わないといけない」と話し、従来より一歩踏み込んだとの認識を明らかにしている。市幹部の一人は「(埋め立て承認取り消しの)最高裁判決で国が勝訴したことが大きい。対案が出てこないので否定できないということだ」と説明した。

 一方で県は工事再開によって辺野古移設が「既定路線」となることで、政府による「5年以内運用停止」の責任放棄が正当化される事態に危機感を強める。辺野古埋め立て工事を止める権限行使を検討しており、移設工事の行方は不透明な状況が依然続く。

訓練移転の内実

 県幹部は「辺野古新基地建設阻止は知事の重大な公約で、譲れない一線だ。政府が『唯一』と主張しても、県民の多くは納得していない。県が計画の見直しと運用停止の両方を求めるのは当然だ」と話す。

 別の県幹部は「普天間の所属機は段階的に分散移転すれば、運用停止は実現できる。積み重ねが重要だ」と強調する。

 ただ日米両政府は1996年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告で従来から決まっていたKC130空中給油機の岩国移駐を除き、普天間所属機の移転を進めていない。普天間所属機の訓練を県外・国外で行う際に、日本政府がその費用を負担する枠組みで対応しているが、訓練の“拠点”が沖縄にあり続ける現実は変わらず、運用停止には程遠い状況だ。

 今月10日の日米首脳会談で安倍晋三首相とトランプ米大統領は辺野古新基地建設を推進することを改めて確認した。だが首相が米側に、残り2年以内の運用停止に向けた道筋づくりに協力を求めることはなかった。辺野古移設工事で強硬姿勢を進める一方、負担軽減を図る発言は急速にしぼんでいる。(島袋良太、明真南斗)