焼玉エンジン58年ぶり再点火へ 沖水展示船 技術者ら整備


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約4トンもある焼玉エンジン(右)に命を吹き込もうと奮闘している沖縄舶用工業会の渡眞利敏会長(前列左端)らプロジェクトチームのメンバー=6日、糸満市西崎の新糸満造船

 【糸満】58年前の焼玉(やきだま)エンジンに命を吹き込もうと、平均年齢約64歳のエンジニアのプロ集団が立ち上がった。エンジンに“命”を吹き込むのは、沖縄舶用工業会(渡眞利敏会長、正会員20社)の会員企業6社から集まった「焼玉エンジン蘇生プロジェクトチーム」の7人。沖縄水産高校で動かないまま展示されていた海洋実習船「開洋丸」の焼玉エンジンの再生に挑んでいる。図面も整備記録もない中、技術と知恵を結集し「生徒たちに生きた教材として活用してほしい」と話す。約3カ月間、試行錯誤し11日までに燃焼試験を終了。14日から1週間ほどで組み立て、エンジンを始動させる予定だ。

 焼玉エンジンは「焼玉」と呼ばれる半球形の予備燃焼室を燃やし、内部を温め、軽油を中に噴射して燃焼を助ける仕組み。「ポンポン船」など小型漁船で使用されていた。

 沖縄水産の焼玉エンジンは、1951年10月から59年5月まで開洋丸(木船、30トン)に搭載され、廃船後は校内に運び込まれた。海洋技術科の仲間竜郎教諭は「何十年も前までは動かしていたらしいが、記録が残っておらず詳細は分からない」と話す。運転できる人がいないまま展示され、生徒たちから「動かないの?」と質問されるという。

 2016年10月、学校からエンジン復活の依頼を受けた沖縄舶用工業会はボランティアで引き受けた。同11月、約4トンのエンジンを糸満市西崎の新糸満造船に移動。仕事の合間に部品を全て外し、一つ一つ整備した。渡眞利会長(65)は在籍していた宮古水産高3年時の実習で動かし方を習った。「焼玉エンジンはものすごい迫力で回り、音もすごい。よみがえれば、見るだけのエンジンから動く生きた教材になる」と始動を心待ちにしている。(豊浜由紀子)