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皆さんこんにちは、食と農業担当の関根です。
いま、新しいネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ系農薬)、スルホキサフロルについて、パブコメが始まっています。
パブコメは、野菜や米、果物など85品目肉をふくめると100品目以上についてスルホキサフロルの残留基準値を決めるもの。残留基準値がきまるということは、日本で使えるようになる一歩手前まで来ているということなんです。ここでとめなくてはなりません。 
このネオニコ系農薬の解禁をとめなければいけない理由を5つにまとめてみました。

 

このネオニコ系農薬「スルホキサフロル」は、人の健康や、ミツバチ、生態系の面など、さまざまな問題があります。

以下の5つの理由、ちょっと長いですけれど、この中から、自分の関心のあるところを参考にして、ぜひパブコメを送ってください、締切は3月30日です。
パブコメの送り先などの情報は一番下にまとめてあります。
 

 

◆理由1:  政府が考えているよりも人の健康に深刻な毒性があり、特に子どもへの影響が心配

スルホキサフロルは動物実験(ラット)で、死産や前足・後ろ足の奇形をひき起こしたり、骨や尿管の形も異常が現れたりすることが確認されている農薬です。
スルホキサフロルは、胎児の発達に重要な受容体と結合して、作用を阻害するはたらきがあります。そうなると、胎児が無事に発達できない可能性があるのです。しかも、人間のほうが実験動物(ラット)の場合より、約10倍も結合性が強いというので、人間の胎児への影響がラットよりも強くでることが懸念されます
現在の残留基準値案が作られる過程ではその点を考慮されていないので、見直すべきです。

日本の内閣府の「食品安全委員会」は、スルホキサフロルを含め、農薬の人の健康へのリスクを調べて一日耐用摂取量(ADI)を決めています(食品安全委員会の「農薬評価書」)。
でも、ここで食品安全委員会が参考にしているのは米国の農薬メーカーのダウ・ケミカル社による論文。この論文では、根拠もなく安易に、“ラットでは影響がでたけど人間は大丈夫”、と結論づけていて、食品安全委員会もその結論を採用してしまっています。
人のほうがラットより10倍も結合性が高いのならば、1日の許容摂取量(ADI)は今のものより厳しく1/10~1/100にするべきで、残留基準値ももっと低く見直すべきです。 

人の健康への影響については、ネオニコチノイド系農薬の使用中止を求めるネットワーク(通称:ネオニコネット)が、政府の資料を科学的な観点から検証しているので、こちらもご参考に「スルホキサフロルの哺乳類ヒトへの毒性について」

 

 

理由2: 日本の農薬の残留基準値の決め方は、国際的にかなり緩い

農薬の残留実験が厳密に行われていません。経済協力開発機構(OECD)諸国では、作物ごとに8サンプル以上のデータをとることが求められているのに、日本では2つか3つというのが一般的。今回のスルホキサフロルでも、8サンプル以上のデータという要件をみたしたものは一つもありませんこの点は、今月8日に国会(衆議院農林水産委員会)でも問題にされました。
 

理由3: 米国ではミツバチへの影響を考慮して、用途が減らされたのに日本は広いまま

アメリカではミツバチが訪れて授粉する作物の、かんきつ類や、キュウリへの使用は禁止、リンゴやナス科の野菜には落花後に使用を限定しました。
でも農林水産省は、日本でも適用害虫の防除時期と開花期がかさなることを認めながら、”注意事項”(ミツバチのいるところでは使用しない、など)を遵守すれば被害は起こらないとして使用を限定しませんでした。
でも、これまでにもネオニコ系農薬でには”注意事項”があったのに、実際ミツバチへの被害は続いていて、”注意事項”だけではミツバチを守れないことが、農林水産省自身の調査で明らかになっています(次項も参照)*
それだけではありません。

稲の穂が出る夏、水田で散布するネオニコなどの農薬が、ミツバチの大量死を引き起こす原因とわかっているのに*、さらにスルホキサフロルの使用も承認されようとしているのです。ミツバチにとって、新たな脅威が追加されることになってしまいます。
(*2016年7月農水省調査「蜜蜂被害事例調査」の最終報告。ネオニコなどの農薬とミツバチの大量死の関係を農林水産省が認めました*)
 

 

理由4:花粉を運ぶ野生の虫など生態系への悪影響がまったく検討されていない

日本で、虫などが花粉を運んで授粉してくれる経済効果のうち、野生の昆虫などの貢献が7割に達するという試算が出されています。飼育されている虫だけでなく、農業にとって野生の生態系がとても大きな存在なのです。
また国際機関を含む、国内外の科学的調査により、飼育および野生の花粉媒介生物の価値が次々と明らかにされるとともに、その減少が警告されています。

また、生態系の働きへの悪影響も次々指摘されています。
「ネオニコ系農薬が予防的に使用されることで、天敵となる益虫など標的ではない生き物にも、重大な悪影響を及ぼしているという証拠が多くみられた」
「致死量ではなくても、少ない量で悪影響は出る」(例えばウィルスに対する抵抗力が弱くなる)というネオニコ系農薬の影響があきらかになったなど。
しかし、スルホキサフロルの検討では、他のネオニコ系農薬同様、養蜂家に飼われているミツバチしか検討していません。
花粉媒介生物を含む生態系への影響の観点から登録を保留する基準や枠組みができるまで、問題の農薬の承認や使用を中止すべきです。

 

 

 

理由5:水環境への影響も正しく評価されていない

ネオニコ系農薬の影響を受けにくい生物で実験されてきたため、ネオニコ系農薬の危険性が正しく評価できていません。

水質や水の中の生物への影響については、基準があり、魚類(コイ)、甲殻類(ミジンコ)、藻類で毒性の試験が行われてきました。

ネオニコチノイド系などの農薬は、ミジンコへの影響が弱いため、ミジンコで調査しても安全性を評価できたことにならない、という問題がありました。
このため、環境省で新たにユスリカを使って影響試験をすることになり、スルホキサフロルの試験結果も検討待ちの状態なのです。
 

あなたもパブコメを出そう。

パブコメは3/30まで。前回は537件の意見で、承認のプロセスが一度保留になりました。今回は、もっと切迫しています。ぜひみんなの声を合わせて新たなネオニコの解禁を止めましょう。
送り方は以下をご覧ください。また、スルホキサフロルの問題点についてはブログ

緊急!新しいネオニコ系農薬、解禁間近。パブコメ・署名で止めよう!

日本の消費者を不安にさせる「”非”科学的な」農薬残留基準の決め方

脱ネオニコに向かう欧州−ネオニコ系農薬3種を全面禁止へ

農薬メーカー優先:ミツバチへの害は「秘密」のまま承認される農薬

にもまとめていますので、ご参考に。

❏送り方

 ❏ スルホキサフロルのパブリックコメント募集サイトはこちら
 ❏ 厚生労働省によるスルホキサフロルの残留基準値と対象農作物の案はこちら
 ❏ 注意:意見は日本語で書き、個人は住所・氏名・職業・連絡先(電話番号又はメールアドレス)を、法人は法人名・所在地・連絡先(電話番号又はメールアドレス)を書いてください。

提出先:

 ❏インターネットで提出する方はこちらのページの下にある「意見提出フォームへ」というボタンをクリックし、専用フォームから提出します。

 ❏郵送の方はこちらへ→〒100-8916 東京都千代田区霞が関 1-2-2
宛先:厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部基準審査課 残留農薬等基準審査室宛て (封筒に赤で「スルホキサフロルの残留基準設定について」と書く)
 ❏FAXの方はこちらへ→FAX番号:03-3595-2432
宛先:厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部基準審査課 残留農薬等基準審査室宛て (* 表題に「スルホキサフロルの残留基準設定について」と明記する)
 

署名にも参加してください

上記のパブコメ意見を厚生労働省送ることに加えて、農林水産省や環境省など、責任のある省庁にも市民の意見を伝えるため、市民団体で協力して、緊急オンライン署名を立ち上げました。こちら↓の署名にもぜひ参加してください。

緊急署名:新たなネオニコ系農薬を承認しないよう求めます

あなたのパブコメと署名で、一緒にネオニコの解禁を止めてください!
食の恵みを支えてくれるミツバチ、そして子どもたちの未来をまもりましょう。


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