言葉遊びと遊びの言葉 岡島昭浩2007年01月15日 14:54

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言葉遊びと遊びの言葉 岡島昭浩

 古い雑誌を見ていると、そこには「応問欄」なるものがあり、読者のさまざまな問いかけに対して編集者が回答を用意したり、また別の読者が情報を寄せたりしていることが多かったように見える。また、それほど遡らなくても、『言語生活』という雑誌の「目」「耳」欄などでも読者が言葉の情報を寄せていた。その『言語生活』152号(昭和39.5)で、「全国の読者で共同研究を!」と題して、「子どもの遊びのことば」について、情報提供を呼びかけて、その後いろいろと面白い情報が集まったようである。現在、こうした呼び掛けをするには、雑誌ではなく、インターネットが便利である、ということになりそうである。
 例えば、「子供の情景」(http://www2g.biglobe.ne.jp/~gomma/kodomo.html)では、呼び掛けに対して多数の情報が寄せられている。じゃんけんに限ってみても、その呼び方、掛け声、あいこの時の掛け声、勝ち負けではなく二手に分れる時のやり方など。じゃんけん以外でも、かつて『言語生活』でも取り上げられた絵書き歌など、子どものことば遊びについても情報が寄せられている。
 「どれにしようかな」のような言い方と「だるまさんがころんだ」のような数え方に関心を寄せているのが、「どっちの神様?」(http://www.pure.co.jp/~cha-san/docchi.htm)である。「どれにしようかな」については、このページ以外にも収集しているページはある。また以前、wwwページが今ほど盛んでなかった時代に、Netnews上で情報収集が呼びかけられたことがあった。これの集計結果と思われるものがwww上に掲載されたことも有るようだが、十一月末現在では発見出来なかった。
なお、「だるまさんがころんだ」については、小矢野哲夫氏の「けとば珍聞」(http://www02.u-page.so-net.ne.jp/gb3/tkoyano/index.html/)をも参照。

 一方、ことば遊びについてみれば、既存の活字媒体におけるそれも、『教訓カレンダー』などで存在しているようであるが、インターネットの世界に目を向けるならば、その盛んな様子が伺える。例えば、Yahoo! JAPAN(http://www.yahoo.co.jp/)で、「エンターテインメント」の「ユーモア、お笑い」から「言葉と言葉遊び」の項を開いてみると、そこには十一月末現在で一〇〇を越えるwwwページが登録されている。駄洒落から回文、アナグラム、しりとりなどなど、さまざまな言語遊戯のwwwページが開かれているのである。
 その中から「言葉のよろずや」(http://www2.famille.ne.jp/~maps/kotoba/index.htm)を取り上げる。ここはまさに「よろずや」であり、ことば遊びのページとしてのみ取り上げるのは失礼に当るのであるが、「言葉の減らずや」「言葉のよろずや・大阪支社」といった同好のページを生み出しているし、言葉に対する遊び心が全体に感じられるページなのである。

さて、wwwで情報収集しようと思った場合、だまってアンケートの形式を置いておけば回答が多く寄せられる、というものではない。答える側にも楽しみを与える配慮があった方が、回答は多く寄せられるようである。また、既にある程度の情報がある方が、それを読んだ人が、「自分のところではこうだった」という報告を寄せることに繋がるようで、「情報が情報を呼ぶ」ということであるのだが、ページの管理者が、情報を整理して掲載してくれるからこそ、新たな情報が寄せられるのであろう。
 ことば遊びにしてもそうで、ただ駄洒落を垂れ流しにしているようなところでは読む気が失せてしまう。しっかりとした編集があってこそ、読むに堪える、投稿する気になるページとなるのである。
 かつて、橘正一『方言と土俗』、菊沢季生『国語研究』や楳垣実の諸雑誌など、研究者が編集者となり、その個性を感じさせる雑誌があったが、今後そのような指向を持つ研究者は、雑誌編集ではなく、wwwページ編集に向かうことになるかもしれない。

(おかじまあきひろ/日本語史・日本語学史)
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インターネット言語学情報(26)ことば遊びと遊びのことば
『言語』29巻2号(大修館書店)平成12年2月1日 p105-104

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