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[FT]イソップ寓話より複雑な現代の世界経済

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(2010年5月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

西側の人は誰もがアリとキリギリスの物語を知っている。キリギリスは怠け者で、夏の間、アリが冬に向けて蓄えをため込むのをよそに、歌を歌って過ごす。寒い季節が訪れると、キリギリスはアリに食料を分けてほしいと請う。アリはそれを拒み、キリギリスは飢える。

この物語の教訓は何か?怠惰は困窮をもたらす、ということだ。

金を貸すアリ、建物を造るキリギリス

しかし、人生はイソップ寓話(ぐうわ)よりも複雑である。今、アリはドイツ人、中国人、そして日本人であり、一方のキリギリスは米国人や英国人、ギリシャ人、アイルランド人、スペイン人だ。アリはキリギリスが欲しがるような魅力的なモノを作る。キリギリスはアリに、見返りに何か欲しくないか尋ねる。

「いいえ」とアリは答える。「あなた方は我々が欲しいものを何も持っていません。そう、多分、海沿いのいい場所を除けばね。我々はあなた方にお金を貸しましょう。そうすれば、あなた方は我々が作ったモノを買って楽しめるし、我々は蓄えを増やせますから」

アリもキリギリスも満足だ。倹約家で慎重なアリは、余分な稼ぎを安全とされる銀行に預け、その銀行はキリギリスにお金を貸す。キリギリスはもう、モノを作らずに済む。アリがとても安い値段で提供してくれるからだ。

だが、アリは家やショッピングモールやオフィスは売ってくれない。そこで、キリギリスはモノの代わりに建物を造るようになる。そればかりか、アリに頼んで、自分たちの代わりに建設作業を請け負ってもらう。

お金が大量に流れ込んでくるために、キリギリスの集落では土地の値段が上がっていった。そこでキリギリスはもっとお金を借り、もっと建物を作り、もっとお金を使うようになる。

アリのふりをさせられる欧州のキリギリス

アリはキリギリスの集落の繁栄を見て、自分たちの銀行に「我々アリはお金を借りたくないから、キリギリスにもっとお金を貸せ」と言う。アリは金融商品の評価より、実業のモノ作りの方がずっと得意だ。そこでキリギリスは、キリギリスが抱えるローンをパッケージ化して、アリの銀行にとって魅力的な資産にする巧妙な方法を編み出す。

さて、ドイツのアリの巣は、いくつかのキリギリスの小集落ととても近い場所にある。ドイツのアリは言う。「我々は友達になりたいんです。だから、みんな同じお金を使ったらどうだろうか。けれど、まず、あなた方は永遠にアリのように振る舞うことを約束しなければなりませんよ」

キリギリスは試験に合格しなければならない。2~3年間、アリのように振る舞うのである。キリギリスは実際それをやってのけ、欧州の通貨の導入を認められることになった。

しばらくの間は、誰もが幸せに暮らした。ドイツのアリは、キリギリスに貸したお金の残高を見て、豊かになった気持ちになった。一方、キリギリスの集落では、政府が健全な財政収支を見て言った。「見ろ、我々はアリよりもちゃんと財政の原則を守れているぞ」と。

「木が空まで育つことはない」

アリは決まりが悪い思いをした。そこでアリは、キリギリスの集落で賃金と物価が急上昇しており、それがキリギリスのモノの値段を押し上げる一方、実質的な金利負担を引き下げて、さらなる借り入れと建設を促していることについて、何も言わなかった。

賢いドイツのアリは憂うつそうに、「木が空まで育つことはない」と言っていた。そうこうするうちに、キリギリスの集落で、ついに地価がピークに達する。アリの銀行は当然不安になり、貸したお金を返してくれと言う。そこで債務を負ったキリギリスは、売らざるを得なくなった。

これが連鎖破綻を生んだ。また、キリギリスの集落では建設が中止され、キリギリスはアリのモノを買わなくなった。キリギリスの集落とアリの巣の両方で仕事が消え、特にキリギリスの集落で財政赤字が急激に膨れ上がっていった。

ドイツのアリは、自分たちの富の蓄えに大した価値がないことに気づいた。キリギリスは太陽の下の安い家以外にアリが欲しいモノを何も供給できないからだ。アリの銀行としては、不良債権を損失として処理するか、アリの政府を説得して、アリのお金をもっとキリギリスの集落につぎ込んでもらうしかない。

アリの政府は、銀行がアリのお金を損する事態を防げなかったことを認める勇気がない。そこで政府は「救済」という名の後者の道筋を選ぶ。一方、彼らはキリギリスの政府に対して、増税と歳出削減を命じる。そして、今度こそ本当にアリのように振る舞わなければならないぞ、と告げる。

金を借りられず飢えるキリギリス

こうしてキリギリスの集落は深刻な景気後退に陥る。だが、キリギリスはそれでも、アリが欲しがるモノを作ることができない。どうすれば作れるのか分からないのである。キリギリスはもう、アリの製品を買うためにお金を借りることができず、飢える羽目になった。

ドイツのアリはようやく、キリギリスに貸したお金を損失処理する。だが、この経験から何も学ばなかったアリは、ほかの場所で、さらなる債務と引き換えにもっとモノを売るのである。

さて、広い世界に目を向けると、ほかにもアリの巣があった。特にアジアはアリの巣だらけだ。ドイツによく似た日本という豊かな巣があるし、それより貧しいとはいえ規模が巨大な中国という巣もある。こうしたアリも、キリギリスに安い値段でモノを売り、キリギリスの集落に対する所有権を築くことで金持ちになりたいと考えている。

中国の巣に至っては、自分たちの製品が激安価格になることが保証される水準に自国通貨の為替レートを固定している。

アジア人にとっては幸いかな、規模が非常に大きく、珍しく勤勉な米国というキリギリスの集落が存在する。実際、これがキリギリスの集落であると判別できる唯一の材料は、そのモットーが「我ら買い物を信ず」であることだ。

アジアの巣は米国との間で、ドイツの巣が近隣諸国と築いたような関係を築いていった。アジアのアリはキリギリスの債務をどんどん積み上げ、金持ちになった気分になった。

中国アリに為替レート引き上げ迫る米キリギリス

しかし、異なる点がある。衝撃が米国を襲い、家計が借り入れと支出をやめ、財政赤字が爆発的に急増した時に、政府は「これは危険だ、歳出を削減しなければならない」とは言わない。その代わり、「我々は経済の活力を維持するために、今以上に支出を増やさなければならない」と言うのである。そして、財政赤字が巨大化する。

これがアジア人を不安にさせる。そこで中国の巣のリーダーは米国に言う。「我々は債権者として、あなた方に借り入れをやめるよう要求する。ちょうど今、欧州のキリギリスがやっているように」

すると、米国の集落のリーダーは笑って言った。「我々は、お金を貸してくれなんて頼んでいませんよ。実際、我々は、それは愚かなことだと言ったはずです。我々としては、米国のキリギリスに確実に仕事があるようにする。もし我々にお金を貸したくなければ、自分たちの通貨の価格を引き上げなさい。そうすれば、我々は以前買っていたモノを自分たちで作るようになり、あなた方は我々にお金を貸さなくて済むようになる」

借金100ドルなら個人の、1億ドルなら銀行の問題

そして米国は債権者に、過去の賢人の教訓を教える。「あなたが銀行から100ドル借りていれば、それはあなたの問題だが、あなたが銀行から1億ドル借りていれば、それは銀行の問題だ」というものだ。

中国のリーダーは、自分の巣が抱える膨大な米国債が買った金額ほどの価値がなくなるということを認めたくない。また中国人は、外国人向けに安価な製品を作り続けたいと思っている。そこで中国は結局、米国の債務をもっと買うことにする。

しかし、数十年後、中国人はついに米国人に向かって言う。「さあ、あなた方の債務と引き換えに、我々にモノを提供してもらいたい」と。すると米国のキリギリスは笑い、すぐさま債務の価値を引き下げた。アリは自分たちの蓄えの価値を失い、一部のアリは飢え死にするに至る。

この物語の教訓は何か?永続的な富を蓄えたいのであれば、キリギリスにカネを貸すな、ということだ。

By Martin Wolf

(翻訳協力 JBpress)

(c) The Financial Times Limited 2010. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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