若者を中心に昨今注目を集めている「団地リノベーション」。昨年、京都市伏見区の「観月橋団地」がグッドデザイン賞サステナブルデザイン賞受賞で話題になりましたが、同じ京都でOpen Aが設計を手掛ける「堀川DIY実験」なるものが始動すると聞きつけ、早速内覧ツアーに参加してみました。
今回リノベーションされることになった「堀川団地」とは1953年に完成した全国に先駆けてつくられた鉄筋コンクリート造の下駄履き式集合住宅(1階が店舗で2階以上が住居になっている職住一体型の住宅)で、堀川通りの西側に沿って、6棟から構成されています。
この堀川団地界隈はそもそも「堀川京極」と呼ばれた京都随一の商店街だったそうですが、戦時中、強制疎開の対象となり、その姿を消してしまったそうです。その後「堀川京極」の復興を願う人々の声に応えて整備されたこの堀川団地は、電気コンセントや水洗式トイレが設置されている最新式の住居ということで、当時は人気殺到だったとか。
この堀川団地再生の取り組みで興味深いのは、住む人(コラボレーター)を募集するコンペが行われるという点。今回のリノベーションでは単なるストックの活用に留まらず、多世代、多様な人々の集住による街の活性化を目指しており、まず、再生の第一歩として、新しい住み方を実験する4住戸を用意。
この4住戸をどのように住みこなすかを広く募集し、採用されたプランを提案した人は「コラボレーター」として、実際に住戸に住みながらセルフビルドし、アイデアを実行に移すそうです。
つまり、今回の実験の仕組みとしては、まず京都府住宅供給公社が最低限の手入れをした、自由にセルフビルドができる部屋を提供し、その部屋を「こんな風にセルフビルドして、周りの人と交流したい!」という「夢」を募集。
そして、素敵な「夢」を提案した人がコラボレーターとして選定され、そのコラボレーターがセルフビルドをしながら提案した「夢」(暮らし)を実現するというもの。リーズナブルな家賃(セルフビルド期間中は家賃無料)で歴史ある堀川団地に住めるというのもうれしいポイントです。
鉄筋コンクリートを使いこなす技がなかった時代に建てられた堀川団地は、木造の京町家が、RC造の躯体にすっぽり収まっているかのような雰囲気。そのユニークなたたずまいを一新してしまうのはもったいない!
ということで、今回の「堀川DIY実験」では、コラボレーターが自分らしい空間に仕立てる手がかりとして、その特徴的な内装などを「面影」として残すリノベーションが行われるそうです。
部分的に残したものから、大胆に残したものまで、その「面影度」はさまざま。その「面影」をどう読み取り、手を加えるかがセルフビルドをする際のポイントになりそうですね。
そこで、今回行われたイベントの内覧ツアーでは、「面影度」の異なるリノベーション前の住戸を見学することができました。
「歴史と痕跡が想像力を喚起する。今の人がどう解釈し、次の時代につなげるか、堀川団地はそのモデルタイプになるでしょう」。内覧会後に行われたトークショーでこう語ったのは、東京R不動産ディレクターでOpen A代表の馬場正尊さん。
「面影度」の異なる住まいには、それぞれ異なる味わいがあり、確かに今回のプロジェクトでは、住まい手がその住居のどこに魅力を見出し、リノベーションによってどのようにその価値を引き出すかが肝になりそうです。
最小限のリノベーションを公社が行い、セルフビルドOKの賃貸として素の状態を提供。選ばれし住まい手はリーズナブルな賃料で原状回復義務も免除という条件で、堀川団地の歴史と文化を自分なりに解釈し、次の時代につなげる住まいを創造していく…どんな住戸が生まれるか、わくわくしますね!
コラボレーターの募集要項公開は7月上旬の予定。我こそは!という人は参加してみるのも面白いと思いますよ。