カスタマイズやDIY、オーダーメイド。賃貸住宅の選択肢は広がりつつありますが、自由度が高いほどハードルも高い、と思われているのも事実。そんな中、住み手がより気軽に「自由な空間づくり」に挑戦できる賃貸が登場しました。
今回ご紹介する「HOUSE&RECIPE」は、リノベーション業界を牽引する建築設計事務所・ブルースタジオと、木賃アパートの再生・活用に取り組むモクチン企画のコラボレーション物件です。
先日行われた内覧会ではメイン写真の通り、内装はほぼスケルトン状態。それもそのはず、この物件は入居者自身が“レシピ”と呼ばれるカスタマイズツールを使って、自由に空間を編集できる賃貸住宅なのです。
この“レシピ”、元は大規模な改修が難しい小規模物件のオーナーや不動産会社をサポートするため、モクチン企画が開発した『モクチンレシピ』がベースになっています。いずれも物件そのものが持つ機能や魅力を引き出すよう考案され、物件の価値を上げるため、管理者自身が手軽に利用できるのが特徴でした。
しかし今回のように、レシピを住み手自身が選ぶのは初めて。この月島の物件に合わせ、モクチン企画とブルースタジオ共同で32種の新たなレシピを開発しました。
ベースとなる建物の構造的な部分のリノベーションは、ブルースタジオがデザイン。不要な壁や天井を取り払い、木造の持つ良さを活かした開放感・可変性ともに高い空間が生まれています。また路地に面して大きく取った開口部、1階は中心にキッチンを設け、人の集まるセミパブリックな空間としても使えるよう設計されています。
レシピは施工コストに比例してポイント化されており、合計100ポイント分まで選ぶことができます。その内容は床の素材や貼り方をはじめ、「畳を敷く」、「人工芝を敷いて室内緑化する」、「家の前の路地とのつながりを意識した床材」、など個性豊か。選ぶレシピによって空間の使い方・暮らし方そのものが変わっていくのです。
さらにオーナー負担のリノベーション費用の中には、ブルースタジオのデザイナーとの打合せも含まれています。住み手はプロと一緒にレシピを選びながら、「ここでどんな暮らし方をしたいのか」という、カスタマイズよりさらに一歩踏み込んだ住まいづくりができるのです。
服に例えるならフルオーダーメイドではなく、プロのスタイリストと一緒に厳選されたアイテムを組み合わせ、自分だけのスタイルをつくる感覚。それが「着こなす賃貸」だと言えるでしょう。
自由な空間づくりに興味はあっても、自分が本当はどんなものを求めているのか、自分にはどんな空間がフィットするのか、まっさらな状態からイメージするのはちょっと難しい、という人も多いはず。
レシピは住み手の中の「欲しいもの」を引き出すと同時に、デザイナーが「住み手に合うもの」を提案するコミュニケーションツールの役目を果たしているのです。
自分らしく着こなす賃貸のカギは、住み手の思いを引き出すツールと、一緒に考えてくれるプロの存在。こうした仕組みが広がることで、自由な賃貸を楽しむ人がますます増えていきそうですね。