住まいの雑学
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2013年7月23日 (火)

飛騨地方の古民家を守れ!「お手入れお助け隊」ってどんな団体?

飛騨の古民家を守る「お手入れお助け隊」(写真:株式会社美ら地球)
写真:株式会社美ら地球

岐阜県の飛騨地方には、築100年を超える立派な民家が多く現存している。この古民家を後世まで継承していきたい、という想いから生まれたのが今回ご紹介する「飛騨民家のお手入れお助け隊」だ。

これは、ボランティア参加者に飛騨民家の掃除やメンテナンスを手伝ってもらう目的で、2009年からスタートしたプロジェクト。地域の住民同士が触れ合う場としても好評を得ているそうだ。今回はそんな「飛騨民家のお手入れお助け隊」を主催する株式会社美ら地球の担当者に、このプロジェクトが生まれたきっかけなどを伺った。

「2009年秋から、県の委託事業として、飛騨の古民家の状況についての聞き取り調査を開始しました。そしてこのエリアに文化財級の民家が点在していること、さらにこれらが存続の危機に瀕していることが分かってきました。そんな中、一般の人が実際に民家に触れ、民家の素晴らしさを再認識する機会をつくれないかと考えたのが、『お手入れお助け隊』発足のきっかけです」

古民家再生というと、リフォームやリノベーションが主流だが、このお助け隊の活動内容はちょっと独特だ。

「我々は民家再生そのものを目指しているわけではありません。お助け隊の仕事は、居住者がいる現役の古民家にお邪魔し、掃除などのお手入れを手伝うこと。昔は、お盆やお正月に一族総出で家の手入れをしていたそうですが、今では、一族が集まる機会も少ないですからね。この活動を通じて、参加者だけでなく、家の持ち主の方にも飛騨民家の良さを再認識してほしいと思っています。作業後には、必ず持ち主の方を囲んでお昼をいただき、ボランティアの方と交流する機会も設けています」

こういったボランティア参加者と飛騨民家の住人との交流が、お互いに良い効果を生み出しているという。参加者からは、

「昔ながらの方法でお手入れしたり、実際に住んでいる方のお話を伺ったりと、そこに赴くことでしかできない貴重な体験をすることができました」(東京Iさん)

といった声も聞かれた。また、家を提供する側からも、感謝の声が寄せられている。

「それまでは怖くて汚いと言い続けていた中学生の孫が初めて2階にあがった。さらにその日の夜に『おばあちゃん、僕がこの家守っていくよ!』と言ってくれたことがすごくうれしかった」(Fさん)
「もう50年以上もこの家に住んでおり、あまり良さを感じなくなってきていたのですが、この家を見直してもらえたことにより、また愛着がわいてきました」(Kさん)

ボランティア参加者の顔ぶれはじつにさまざま。地元住民だけでなく、関東・関西など遠方からの参加者や、外国人からの問い合わせもあるという。また、最近では地元リピーターが増えており、担当者も手ごたえを感じている。

「このプロジェクトの目的は、一軒でも多く飛騨の古民家を継承すること。ですから、地元の応援を得られるのは非常にうれしいことですね。今後も『お助け隊』開催を続け、一人でも多くの方に、古民家の良さ、そして一度壊したら二度と建てられない、ということを知っていただきたいです。また、都市部を中心に、古民家カフェや古民家宿の良さが確立しつつありますが、地元でも、『先祖代々の古民家をリフォームして住むのがクール!』という価値観が若者に浸透してほしいと願っています」

飛騨地方といえば、世界遺産で有名な合掌造りの民家や、高山市の古い街並みなど、古民家のたたずまいが印象的な観光名所が多い。古民家を形として残すだけでなく、地元住民の古民家への愛着を取り戻すことが、美しい街並みを長く守っていくために必要なのかもしれない。

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