時々患者さまから、
「市販の点眼を使っているのですが、今使っているものをこのまま使い続けても大丈夫ですか?」
と聞かれることがあります。
「どのような時に使っているのですか? また、どれくらいの頻度で使っているのですか?」 (医師)
「パソコンをして疲れた時や、コンタクトをはずしたときに目に潤いを与えるために使っていますので、ほぼ毎日使っています」 (患者さま)
「成分を見てみます。
・・・・。 最近、充血が取れなくなっていることはありませんか?」 (医師)
「はい。 パソコンやコンタクトレンズのためかと思っていましたが、最近は点眼を使っても目の充血が改善しなくなってきました」 (患者さま)
「今お使いの点眼の成分をみてみると血管収斂剤といって、血管を収縮させる成分が入っています」 (医師)
「疲れ目に効果があると書いてあったので購入したのですが・・」 (患者さま)
「確かに、この目薬のコマーシャルを見たことがあるのですが、疲れ目に効果があるようなことを言っていましたよね」 (医師)
「血管収縮剤はどこがよくないのですか?」 (患者さま)
「一時的には、血管を収縮させて充血をとる効果あるのですが、常用することでその効果が弱まって、そのうち、かえって充血が取れなくなったり、充血がひどくなることもあるのです。 さらに、コンタクトレンズを使われている方ですと、無理やり血管を収縮させるとことで眼球への酸素が不足し、トラブルの原因になることもあるのです」 (医師)
「ではどのような目薬がよいのですか?」 (患者さま)
「パソコンやコンタクトレンズによる充血は、目の乾燥(ドライアイ)やピント合わせの筋肉の疲労(眼精疲労)によるものが大きいと思われます。 それらによる充血をとるのは、血管を収縮するお薬を使うよりも、それらを直接治す目薬を使われたほうがより長期的な効果があるのは当然です。 一時的に使うのであれば血管収斂剤は良いのかもしれませんが、少なくとも常用するのであれば血管収斂剤が入っていないものを使われたほうがよいと思います。
ちょうど、眠られない時に睡眠薬に頼っている方がいらっしゃいます。しかし、薬に頼らず、日中運動したり、長時間の昼寝をやめる、寝る前にお風呂でリラックスするなど日常生活の改善に努めたほうがより長期的な安眠効果が望めるのと同じです。最初のうちは不眠症の方もお薬で眠られるようになるようですが、そのうち効果が低下して、ますます眠られなくなることが多いようです」 (医師)
以前もこのブログにて、充血をとる血管収縮剤の入っている目薬はあまり常用しないほうがよいと書きました(詳しくはこちら)。
しかし、この患者さまのように、疲れ目の目薬として使っているつもりが、知らない間に血管収斂剤を常用している方もいるようです。
血管収斂(収縮)剤とは、「塩酸ナファゾリン」「塩酸テトラヒドロゾジン」「塩酸フェニレフリン」というものです。
気になったので、市販されている目薬の成分にこれらの血管収斂剤がどれだけ含まれているかを調べてみたところ、
- 『疲れ目、充血に効くお薬』
と書いてあるお薬の多くがこれらの血管収斂剤が含まれていました(ロートリセa、ロートpro、ロートアルガードクールEX、バイシンプラス、サンテFX、サンテメディカル10、サンテビオ、サンテパッソなど)(製品により濃度は違います)。
また、
- 『日焼け用目薬』
と書かれた多くの目薬にも血管収斂剤が含まれていました(ロートUVケア、バイシンUVなど)(製品により濃度は違います)。
気がつかずに、これらの血管収斂剤を含まれている目薬を『疲れ目の目薬』『日焼け用目薬』として使ってられる方がいらっしゃると思います。
●市販の点眼を使い、最近充血が取れないと気になっている方。長期にわたり継続して使われている方。特にコンタクトレンズを使用しながら使っている方
まずは、今使っている目薬の成分を調べてみて、上にあげた3つの血管収斂剤が含まれていないかを確認してみてください。濃度は低くても人によっては血管収斂剤を常用することで慢性の充血がとれなくなることもあるのです。
もしも、それらの目薬を使っていて充血が取れなくなっている場合には、いったん中止されて眼科を受診されて適切なお薬に変えられたほうがよいと思います。以前もこのブログにて書いたように、目の充血をいつまででもおいておくとそのまま充血が残ってしまうことがあるのです(詳しくはこちら)。
なお、眼科で処方するものには血管収斂剤が含まれている目薬ありませんので、ご安心ください。
(関連ブログ)
- 目の充血が気になっている方。 早く治さないと、そのまま残ってしまうこともあるのです
- 紫外線で目が真っ赤に。 さらにひどくなったり、そのままにしておくとこんなことに。 紫外線と充血
- 紫外線による目の黄色いしみ、瞼裂斑。目への紫外線の影響は、お昼よりも午前9時ごろ、真夏よりも6月7月に強くなります