au、おサイフケータイなど日本向けに開発された「HTC J」


 KDDIと沖縄セルラーは、auのスマートフォンの新機種として、HTC製のAndroid 4.0搭載スマートフォン「HTC J ISW13HT」を発表した。5月下旬以降に発売される。両社では2月、日本市場に特化したスマートフォンを開発すると発表しており、今回の「HTC J」がその合意に基づく新機種となる。3色のカラーバリエーションが用意され、おサイフケータイなどに対応する。

WiMAXやおサイフケータイなどに対応

レッド

 「HTC J ISW13HT」は、HTC製のフルタッチ型Androidスマートフォン。グローバルで事業展開するHTC製ながら、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信に対応する。「音」「カメラ」「使いごこち」といった3つが特徴として打ち出され、特に初めてスマートフォンに触るユーザーを意識して仕上げられている。KDDIがスマートフォン初心者を意識して開発された「auウィジェット」に初めて対応する機種でもある。また、18日に発表されたauの絵文字刷新にも対応している。

 ただし、ゼロから開発されたものではなく、HTCの最新スマートフォンの1つ「HTC One S」をベースにした機種となる。「HTC One」は、2月、スペインで開催された展示会「Mobile World Congress 2012」で発表されたHTCの新機種群だが、日本向けの「HTC J」は、CPUやカメラ、楽曲再生機能などは同等ながら、全く異なるボディデザインに仕上げられた。

 4.3インチ、960×540ドットの有機EL(AMOLED)ディスプレイ、800万画素の裏面照射CMOSカメラを搭載し、内蔵メモリは16GB、RAMは1GBで、8GBのmicroSDHCカードが同梱される。チップセットはクアルコム製MSM8660A(1.5GHz駆動、デュアルコア)。Wi-Fi(IEEE802.11 a/b/g/n)対応で、auが活用を進める5GHz帯をサポート。Bluetooth 4.0、HDMI出力、Wi-Fiルーター機能(テザリング)も利用できる。Eメールは「@ezweb.ne.jp」でのメールアドレスが利用できる。防水は非対応。「緊急速報メール」にも対応しており、緊急地震速報や災害避難情報、津波警報を受信できる。

 大きさは約132×66×10mm(最厚部11.2mm)で、重さは142gとなる。WIN HIGH SPEEDには対応しないが、WiMAX(2.5GHz帯)が利用できる。また海外渡航時には、GSM方式とUMTS(W-CDMA方式)が利用できる。ボディカラーは、レッド、ホワイト、ブラック。パッケージにはイヤホンが同梱される。

ホワイトブラック
「au災害対策」緊急速報メールの受信設定
ワンセグに対応ワンセグ設定
初回起動時にチャンネルをスキャンプロフィール情報を送信しようとしたところ。選択肢に赤外線

3つの特徴

 HTCでは昨年、ヘッドホンブランドの「Beats Audio」(米Beats Electronics)に出資して子会社化。「HTC J」の特徴の1つである「音」とは、このBeatsの技術のこと。パッケージに同梱されるイヤホン(Beats by Dr Dre urBeats In-Ear Headphones)は、1万数千円相当のものとのこと。「Beats Audio」では、同梱のイヤホンや、別売りの密閉型ヘッドホン(キャンペーンでプレゼント)用の音質に設定でき、装着すると、最適化にした信号処理が起動し、音楽プレーヤーのほか、動画再生、ゲームなどで楽しめる。また、LISMOサービスでもBeatsの技術による音質が楽しめる。

「音楽」アイコンをクリックしたところ。関連アプリ、楽曲リストなど音楽の“ハブ”LISMO Playerの楽曲リスト

カメラ。画面右に動画撮影ボタンと静止画撮影ボタンが並ぶ

 2つ目の特徴である「カメラ」では、800万画素の裏面照射型CMOSセンサー、F2.0のレンズ(数字が小さいほど取り込む光が多くなる)を採用する。5枚のレンズを用いて、被写体のゆがみを補正し、さらにブルーガラスを挟んで、赤外線を吸収し、フレアなどを防ぐ。このレンズ群で捉えた風景を裏面照射型CMOSセンサーで捉え、その信号はHTCが独自開発したというチップで処理される。このチップはノイズを40~60%カットして、色の偏りを除くほか、焦点が合う速度の向上が図られている。

 こうしたモジュールの工夫によって、カメラ機能は起動時間が0.7秒、撮影終了から次の撮影ができるまで0.2秒と高速に動作し、特徴的な使い方ができるようになった。画面上のシャッターボタンを押し続ければ連続撮影することもできる。また、最大10人の顔を捉える「グループショット」は、一緒に写る人たちの顔のうち、笑顔の数が最大、まばたきの数が最小という写真を合成する。また太陽を背にした人の写真を撮影する際、風景の明るさを活かして顔が暗くなる写真と、顔を明るく撮影して周囲が白色に塗りつぶされてしまう写真を撮影して、2つを合成する「HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ」をサポート。フラッシュ撮影では、その場所の明るさにあわせ、5段階で調整される。

 HDサイズの動画撮影時には、手ブレ補正のほか、500万画素相当で静止画を撮影することもできる。撮影した後でも、動画再生中に静止画を切り出すことも可能。高速で撮影した動画を4倍のスローモーションにすることもできる。

動画再生画面。画面右にキャプチャボタン保存したところ
顔認識自動モードで、HDRなどが反映される
カメラ設定メニューフィルタ
連写画面連写した場合、「最高の一枚」を自動的に抽出して保存できる。連写時は最高解像度(800万画素クラス)でも撮影できる

 特徴の3つ目である「使いごこち」はユーザーインターフェイスの工夫のこと。HTCの独自ユーザーインターフェイス「HTC Sense 4.0」を搭載しつつ、日本向けに仕上げられた。たとえばロック解除画面では、メールのアイコンを長押しして画面下部の円に持っていくと、メールアプリが起動する。容量を気にしがちなデータフォルダ(ストレージ)については、au Cloudに加え、2年間、Webサービスの「DropBox」で25GB(2年経過後は2GB)を無料で利用できる。また、電話帳を検索する際、たとえば「田中さん」を探すには、テンキーの「4(タ行)」「5(ナ行)」「2(カ行)」を連続してタップするだけとなる。

 こうした細かなユーザーインターフェイスの工夫のほか、初期設定のホームアプリにおける待受画面も日本市場に向けた形に仕上げられている。HTC製スマートフォンでは、画面の半分を時計と天気情報が占める。しかし「HTC J」はそうしたウィジェットは設置されず、画面左と下部にアイコンが並び、ウィジェットの背景色は透明になっている。これは10年以上、カメラ付きケータイに慣れ親しんだ日本のユーザーにとって、待受画面のカスタマイズが行われることを見越して採用したものという。

ボディデザインも日本向けに

 グローバル市場で端末を提供するHTCだが、これまで日本市場では海外モデルをベースにした機種ばかり提供されてきた。グローバルモデルとあって、ユーザーインターフェイスや端末デザインは、日本でも先端的なユーザー層を中心に利用されてはきたが、スマートフォンの普及が一層進む中で、より幅広い層にとっても利用しやすい機種として「HTC J」が開発された。

 そのため、搭載する機能、初期設定でのホームアプリなど先述した要素に加え、外観デザインについても、日本限定モデルとして開発された。

 特にカラーバリエーションで3色展開となるのは、HTC製としては異例のことながら、日本市場には必要な取り組みとして、KDDI側が主導して取り入れられることになった。またベースとなった「HTC One S」ではディスプレイ上にHTCのロゴマークが入っているが、「HTC J」では取り払われている。

 ボディデザインも、ベースモデルの「HTC One S」とは全く異なるテイスト。フルタッチ型で、画面下部には静電式のボタンといった要素はスマートフォンとしてスタンダードなものだが、四つの角部分などが丸みを帯びた形状となっている。

HTC J

テレビと連携する周辺機器

 20日の発表会では、「HTC J」の周辺機器として、「Media Link HD」も展示された。これはテレビとHDMIで接続できる小型機器で、テレビと「HTC J」を仲介する役割を果たす。「HTC J」内のコンテンツをテレビ側で視聴する、といった用途が想定されており、「HTC J」の発売に向けて国内でも発売されるという。現時点で価格帯は未定。

 仕組みとしては、DLNAとHTC独自の技術を組み合わせたものとのこと。「HTC J」と「Media Link HD」はWi-Fi経由で繋がっており、最初のペアリングの際には、「HTC J」をアクセスポイントとして接続する。独自技術により独特の操作を実現しており、「HTC J」内の写真などのコンテンツをテレビに移す場合は、指3本で画面を上方向にフリックし、テレビでの表示をやめる場合は下方向にフリックする、といった使い方になる。「Media Link HD」ではなく、単なるDLNAクライアントから「HTC J」にアクセスして、コンテンツを見ることはできるが、その場合は独特の操作は利用できない。

 このほか会場では、TPVテクノロジーのタッチパネルディスプレイが展示されていた。これはHTC JとMHL経由で繋ぐことで、ディスプレイ側でも「HTC J」を操作できる、というもの。MHLは、モバイル機器向けのデータ転送インターフェイスで、ポートはmicro USBと共用できる。今回の展示品はあくまで参考出品で、価格などは未定ながら、店頭でスマートフォンの操作の様子を見せる、といった使い方などが想定されている。単なるMHL対応機種では表示のみで、操作まではできないとのことで、HTCと協力して開発されたディスプレイという。

参考出品されていた、TPVテクノロジーのタッチパネルディスプレイとHTC Jを接続。ディスプレイでHTC Jをタッチ操作できる。商品化や価格などは未定HTC製の周辺機器「Media Link HD」も参考出品
ペアリング時には、HTC端末をWi-Fiアクセスポイントとして登録。高品質映像もHDMIで伝送これがMedia Link HD

外観

待受画面メインメニュー
横スクロール下のタブで切り替え、これはau関連サービス
画面右下のボタンで過去に使ったアプリを切り替え。このサムネイルを上に払う(フリック)すると履歴から削除リニューアルした絵文字
入力したところ




(関口 聖)

2012/4/20 10:03