毎年3月下旬に公表され、ニュースで話題になる「地価公示」。制度の創設から40年以上が経過し、平成24年度の国土交通省行政事業レビューでも取り上げられたこともあって、有識者による検討会が設けられ、そのあり方について検討されてきた。今回、検討会による報告書がまとまり、公表された。
まず、地価公示について説明しておこう。
地価公示は、地価公示法に基づき、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を公示するもので、土地の取引価格に対する指標となったり、公共事業用地の取得価格の算定に活用されたりしている。
具体的には、平成25年の場合、全国の標準地(2万6000地点)の正常な価格を判定するために、
といった手順が取られている。
公示地価は、不動産鑑定士が土地の価格を鑑定評価する際の基準となるほか、相続税や固定資産税の評価額の指標(相続税評価は公示価格の8割、固定資産税評価は7割が目安)にもなっている。
行政刷新会議の国土交通省「行政事業レビュー」において、事業効率化に向けた抜本的な改善が求められた。
1地点当たり平均14.4万円、全国2万6000地点で37億円を超える費用が使われているからだ。そこで、
「地価公示のあり方に関する検討会」(座長:浅見泰司 東大院工学系研究科都市工学専攻教授)が、平成24年11月から6回にわたり検討し、今回の報告書をまとめるに至った。
報告書の内容を見ると、地価公示は、土地の取引価格の指標となるだけでなく、公的な土地評価として重要な社会の制度的な基盤(制度インフラ)になっていると、その意義を認めている。また、1年に1回の調査回数や分科会の設置、鑑定評価員2人による鑑定手法などは、現行の方法に有効性があると認めている。
標準地の設定についても、検討課題であった。まず、都道府県が毎年行う地価調査による「基準地価」との関係については、公示地価を補完する役割を担っているとし、都道府県と認識を共有したうえで、双方の共通地点について地域の実情やニーズに応じた配置が実現するような工夫を検討する必要があると指摘。また、土地取引の実態に応じて、マンションや大型商業施設に適した大規模な広さの土地も標準地に設定していくことの重要性や、標準地設定の際のユーザーニーズの反映、経済情勢分析の際の外部有識者の意見の取り込みなどの重要性も指摘している。
最後に、検討委員会で必要な標準地数を試算したところ、約3万1000地点となり、大都市圏では価格水準が類似した住宅地が広がる地域で、現在より大幅に減少し、地方では地域内の価格水準に幅が生じることから、現在より大幅に増加する傾向が見られた。標準地については、今後さらに検討を深めるべきとまとめた。
報告書の内容を見る限り、予算削減を可能にする業務効率化に向けた抜本的改善という観点よりは、本来地価公示はどうあるべきかという観点での検討がなされたという印象を受ける。中途半端な業務効率で使い勝手の悪いデータになるよりは、投資した費用に見合う利用価値のあるデータにすることのほうが、意味があるということだろう。
地価公示が、重要な制度インフラになっていることは確かだ。しかし、地価公示は遅行指標といわれている。今年の3月の公示地価で、都市部で底値と言われた土地の価格も、住宅の供給が増えるなか、既に2年前くらいから住宅に適した土地の価格は競争入札により上がり始めている。再開発等の地価への影響や経済の急激な変化などの機動性に弱いといった側面もある。また、上に建つ建物の影響を排除し、更地としての土地の価格を求めているため、実際の取引価格とは違いが発生する。
土地や住宅の売買の際に参考指標とする場合は、こうした地価公示の性質を理解したうえで、ほかの土地価格データも参考にしながら、価格の妥当性を検討することが大切だ。