LNT 仮説に基づく死者数の計算について

LNT 仮説に基づくと死者数がこれこれになる……という推論の妥当性について。早川・安富氏の推論の是非を示す。
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LNT 仮説に基づく死者数の計算

 LNT 仮説に基づく死者数の計算というものがネット上で話題になっています。早川由紀夫氏と安富歩氏が「LNT仮説に基づくと**人死ぬ」というふうに唱えたのが発端です。

 これについては、すでに次の togetter で論議がなされました。
  http://togetter.com/li/227633
  http://togetter.com/li/247123

 後者のうちの、特に結論となる部分をまとめたのが、本ページです。
 いろいろな議論のうち、結論だけを手早く理解するために、このページをお役立てください。


e8o @e8o

LNT仮説と死者数についての連続ツイートです 】

2012-02-02 20:08:51
e8o @e8o

LNT仮説の計算をリスク計算に適用することは不適切です。それがICRPの勧告。ではどうして不適切かというと、LNT仮説の計算は疫学的なもの(集団における数の増減)であり、リスク計算は「何人に一人」という形だからです。両者は全く別のことです。援用不可能。

2012-02-02 20:08:58
e8o @e8o

具体的には、「5mSvの放射線によって癌死数が毎年 330000 から 330001 に増える」という結論が出たとしても、それによって「増えた1の死者は、死の宝くじに当たった」と言うようなことはできない。なぜなら、330000 の癌死者は、放射線以外の影響がものすごくあるからです

2012-02-02 20:09:23
e8o @e8o

副流煙とか、化学物質とか、ストレスとか、不眠とか、それらの影響は癌死者数を数百ないし数千も変動させる効果があります。そのなかで「放射線は死者を1だけ増やす効果がある」という結論が得られても、まったく無意味です。誤差に埋没してしまうからです。

2012-02-02 20:09:31
e8o @e8o

結局、放射線による死が現れているかどうかを考えるには、年間で数十人の死者が出るぐらいでないと、判定不能です。年間で1人(30年間で30人)ぐらいの死者が出ても、毎年 33万人の癌死者の中では無意味だ、というのが、疫学的な立場です。

2012-02-02 20:09:40
e8o @e8o

LNT仮説の計算は、「毎年 33万人の癌死者が出る」という数字を前提とした上での数の増減です。これが疫学的な認識です。それを「何人に一人」というような形でリスク計算するのは、まったく不適切なことです。それがICRPの勧告の意味です。

2012-02-02 20:09:47
e8o @e8o

各人としては「放射線のせいで33万分の1に含まれそうだ」なんて心配するよりは、「副流煙のせいで33万分の 1000に含まれそうだ」という心配をする方がよほどマシだ。逆に言えば、「放射線のせいで33万分の1に含まれるぞ、大変だぞ」なんて脅迫するのは、とんでもないことだ。

2012-02-02 20:09:54
e8o @e8o

《 注 》 LNT仮説は、(老年期の)発癌率の数値であり、(急性障害の)死者数ではない。急性障害の死者数はすべてゼロ。また、晩年期の老人は全員が死亡。違いは発癌率(寿命短縮)のみ。生死は無関係。

2012-02-02 20:10:06
e8o @e8o

《 注 》 LNT仮説は発癌率であり、死亡率ではない。ゴフマンの「癌死」は「死」ではなく「死因が癌」ということを示す。「放射線で寿命が短縮」ならば正しいが、「放射線で死ぬ」は正しくない。今すぐ死ぬ人は一人もいない。長期的には全員が死ぬ。(死の宝くじに当たるのは全員である。)

2012-02-02 20:10:15
e8o @e8o

 【 次の三つの引用は、Wikipediahttp://t.co/2F9icKpIの転載です。

2012-02-02 20:10:25
e8o @e8o

《 引用1 》 直線しきい値なし仮説を敷衍すると、大集団が微小な放射線量に被曝した場合も、小人数が多めの放射線量に被曝した場合も、どちらも発生する健康被害は変わらないという結論になる。

2012-02-02 20:10:31
e8o @e8o

《 引用2 》 その為、例えば、100ミリシーベルト(一般公衆の年間線量限度の100倍)を200人が被曝する場合と、1マイクロシーベルトを2000万人が被曝する場合では、各個人の受ける被害が異なるが、全体では癌死する人数が同じになると評価される。

2012-02-02 20:10:39
e8o @e8o

《 引用3 》 ただし、上の推計によって死者数が推定されるということにはならない。ICRP の勧告では、集団積算線量は、放射線防護手段を比較するための道具であって、疫学的調査に用いるのは不適切であると明示された。特に、……ガン発生数を求めるために用いてはならないとされた。

2012-02-02 20:10:47
e8o @e8o

《 参考 》( Wikipedia http://t.co/E8cTo05g ) 半数致死量とは、物質の急性毒性の指標、致死量の一種としてしばしば使われる数値で、投与した動物の半数が死亡する用量をいう。"Lethal Dose, 50%"を略してLD50と書く。

2012-02-02 20:10:54
e8o @e8o

《 注記 》 致死量とは、「それ以上を摂取すると死ぬ」という閾値のことではなくて、半数致死量(確率的に半分が死ぬような量)である。「2人に1人が死ぬ」ならば LD50 であり、「10人に1人が死ぬ」ならば LD10 であり、「百人に1人が死ぬ」ならば LD1 である。

2012-02-02 20:11:02

 追記

e8o @e8o

 【 追記します。】

2012-02-03 12:47:21
e8o @e8o

誤差に埋もれる」ということは、「あるかないかわからない」ということではありません。「あったとしても、意味がない」ということです。

2012-02-03 12:47:28
e8o @e8o

33万人の癌死者のなかに、放射線による死者がいるかどうかがわからないということではなくて、「たとえ死者がいたとしても少なすぎて無意味だ」ということです。なぜなら副流煙やストレスなどの死では数百人以上の死者が出て、その変動が大きいからです。

2012-02-03 12:47:35
e8o @e8o

ここから得られる結論は、「一人ならば死んでもいい」ということではなくて、一人の死者を減らすことばかりに目を奪われてはならない、ということです。つまり、「どうせ気にするのならば33万人の死者の方を気にするべき」ということです。

2012-02-03 12:47:50
e8o @e8o

比喩で示します。/ 「ご飯の最後の一粒を残す」という一粒ダイエットに、効果はあるか? 計算すると、「30年間に1万粒」というふうになるので、早川・安富式に総数を考えて、「1万粒ならば効果がある」という結論も出そうです。

2012-02-03 12:47:53
e8o @e8o

しかしながら、ご飯を食べる量は気分しだいで、数百粒ぐらいの変動(誤差)があるので、一粒ぐらいを残しても意味がありません。ここでは「効果がわからない」のではなく、「効果があっても無意味」なのです。

2012-02-03 12:48:00
e8o @e8o

どうせダイエットするなら、「ご飯の最後の一粒を残す」という微小なことを気にするより、総カロリーを大幅に減らすとか、運動するとかいう、本質的な方法を取るべきです。それを見失って、「一粒だけ」なんて考えるのは、「効果があっても無意味」なのです。

2012-02-03 12:48:08