住まいの雑学
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SUUMOジャーナル ピックアップ
2013年4月17日 (水)

ご近所づきあいのかたちを模索する「いえつく5」の活動とは?

東京理科大学建築学科の卒業生らで結成されたチームは、これまで国内外で7つのプロジェクトを成功。各方面からも高評価

〝ご近所づきあいをデザインする〟をテーマに家づくりを実践した集団がいる。「いえつく」と呼ばれる集団だ。東京理科大学建築学科の卒業生らで結成されたこのチームは、これまで国内外で7つのプロジェクトを成功させ、各方面からも高い評価を得ている。

では、このチームがご近所づきあいをテーマに家づくりをスタートするに至った経緯は何だったのだろうか? メンバーの一人であり、「いえつく5」というプロジェクトを自らの家で実践した角田大輔さんに話を伺った。

「以前、私はマンションに住んでいたのですが、住人同士がなるべく顔を合わさないという暗黙のルールのようなものがあり、なんだか気持ち悪いと感じていました。そんな折、持ち家を購入することになり、改めてご近所づきあいについて考えてみたのです。土地を購入して家を建てるということは、その土地に根を張って暮らすということ。そうするとやはり重要になってくるのは、地域の人との関係性ですよね。〝ご近所づきあいをデザインする〟というコンセプトは、地域の人との関係性を良くするために、自然と行き着いた答えなのです」

こうして、いえつくの5番目のプロジェクト「いえつく5―西荻の住宅―」がスタート。角田さんはご近所づきあいをデザインするためにさまざまな仕掛けを検討したという。

「初めは漠然と、自分たちの住む地域を盛り上げようということを考えていました。しかし、具体的にアイデアなどを出していくうちに、まだ住み始めてもいない自分たちが地域の実情を把握することは難しく、地域を活性化するようなことは困難なことでした。それどころか、普通に家を建てて住んでも、近所の方と関係を築くことは容易ではないことが想像できました。そこで建築中だからこそできるご近所づきあいを行い、建物ができあがったころには、ご近所の方と、そこに既に住んでいたかのような関係を築けていればという考えに至ったんです」

こうした角田さんの考えのもとに、建物が建つ前の土地購入から工事中の期間に、ご近所づきあいのきっかけとなる9つのしかけを行ったという。

最終的なゴールとして設定した「ご近所祭」は、ご近所さんを新居に招いてのホームパーティー。地鎮祭、上棟式などといった昔からある祭事をイメージして行ったパーティーなのだとか。当初、誰も参加してくれないのではと不安もあったが、予想以上の大盛況だったそうだ。

「引越してきて間もない住人がご近所の人を招いても、普通は来てくれません。ですのでこれは、引越す前からさまざまな活動を行い、近所の方々とコミュニケーションを取っていた成果だと思います」

こうしたまったく新しいかたちでご近所との関係を築いた角田さん。実際に引越してからはいかがだろうか?

「地域のさまざまな人と知り合うきっかけも作ることができました。近所を散歩していて知人と会う機会も多く、そこでちょっとした世間話をするといった関係を地域の中でつくれたのは、その場所に根を張って暮らすことへの第一歩。多くの知り合いがいることで、その人たちとの関係を大切に考え、その場所についてより深く理解するようになるのだと思います。まだまだ苗木の根のように細く浅いものですが、少しずつその根は成長していっています」

さらに角田さんは「都会の狭い家は単体で暮らしを考えるのではなく、その一回り外側を含めた暮らしを創造することで、豊かな生活が可能になると思う。『家に住む』ではなく『通りに住まう』ことを目指したい」と語ってくれた。

ご近所づきあいが希薄になりつつある都会での暮らし。「いえつく」のような活動が広く認知されることで、ご近所づきあいの新たな形が定着することに期待したい。

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