EU首脳会議で外交デビューしたオランド仏大統領、「メルコジ」と決別し欧州全体に視線

 [ブリュッセル 24日 ロイター] 就任後初の欧州連合(EU)首脳会議に臨んだオランド仏大統領は、ユーロ圏債務危機解決の切り札として共同債の発行を提案し、財政規律を重視する姿勢を崩さないドイツ政府に対峙していく姿勢を示した。
 オランド大統領は首脳会議出席のためブリュッセルに到着した際、ユーロ圏共同債が会合で議論されるとの見通しを記者団に表明。それに対し、メルケル独首相はそうしたアイデアは望ましくなく、成長にも寄与しないと冷淡な姿勢を示し、会合の前から両者が火花を散らした。
 首脳会議終了後、イタリアのモンティ首相は大半のメンバーがオランド大統領の提案を支持したと明らかにした。
 オランド大統領が就任したばかりにもかかわらず重大な提案を携えて外交デビューを飾ったのは、ドイツだけの意向に従っていても欧州の債務危機は解決できないと考えているためだ。
 オランド大統領は、財政規律を重視するドイツに対抗しようとするスタンスに対する有権者の支持が高まっていることを受け、首脳会議前にスペインのラホイ首相と会談。サルコジ前大統領がそれまでメルケル独首相と会談し、独仏の意見をすり合わせていたやり方とは決別した。
 オランド大統領は首脳会議に向かう途中、「ドイツとの関係は非常に大切だが、他の国と距離を置くことはしない。フランスの主張に耳を傾けてもらい、他の国の支持を得たい」と記者団に語った。
 オランド大統領はパリからブリュッセルへの移動に列車を使用し、ここでも大統領専用機を使用していたサルコジ前大統領との違いを印象付けた。
 非公式な会合が開かれた夕食会でも、オランド大統領はメルケル独首相に対し、他のEU首脳への対応と同じように、握手と軽い会話を交わしながら入室。会場内では、他の首脳との会話を重視し、メルケル首相とは離れた場所にいる時間が多かった。
 オランダ大統領の同行筋は「大統領は2カ国による独占を好まない。『メルコジ』に代わって『フランジェラ(フランソワ・オランド大統領とアンジェラ・メルケル首相のファーストネームの組み合わせ)』あるいは『メルコランド』を作ろうとは考えていない。彼は独仏のパートナーシップを、他の欧州の利益になるものにしたいと思っている」と説明した。
 <成長求める叫び>
 5月のフランス大統領選挙でオランド氏が勝利を収めたことは、欧州における議論の流れを変えることにもなった。オランド大統領が債務削減ばかりでなく成長を求める声を上げたことで、ひたすら財政規律を求めるドイツにいら立っていた他の欧州諸国からもそれを支持する声が高まっている。
 オランド大統領は、フランス国内でもサルコジ前大統領がドイツに譲歩し過ぎ、フランスの主権が損なわれているとの不満が蓄積していたことを認識している。
 23日の首脳会合では、そうした雰囲気が一変した。
 フランスのエロー首相は「私は感動している。オランド大統領の誕生はゲームを大きく変えた。すべてが変わるとは言わないが、ムードが変化しつつある」と語った。
 もっとも、新首相にドイツと密接な関係があるエロー氏を指名したことは、オランド大統領がドイツと平等な関係で協力していくことが重要だと認識していることを裏づけている。
 しかし、オランド大統領は欧州全体との関係を重視しており、特にスペインのラホイ首相とは密接な関係にある。

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