ギリシャ問題よりも深刻!? 徐々に現実味を帯び始めた"スペイン危機"の可能性
最近、ロンドンのクレジットアナリスト連中の関心はギリシャからスペインに移っている。彼らの頭の中では、中・長期的に見てギリシャのユーロ離脱は避けられないものとの認識が高まっているようだ。多くの投資家や金融機関は、それに対して損失回避の行動をとっており、すでに準備はかなり進んでいる。
一方、ギリシャよりも大きな経済規模を持つスペインに関しては、国内の不動産バブルによる不良債権の額さえも不透明な状況が続いている。同国第4位の金融機関であるバンキアには、既に実質的な公的資金注入が行われているものの、金融専門家の間では、「追加注入が必要であることは間違いない。問題は、スペイン政府がその負担に耐えられるか否かだ」との見方が有力だ。
"スペイン危機"の発生が現実味を帯びてくると、金融市場には不透明要因がまた一つ増えることになる。そうなった場合、ユーロ圏諸国が結束力を保って問題に対処できるのか、という疑問が残る。当面、株式や為替などの金融市場は不安定な展開が続くことだろう。
スペインの不動産バブルの後始末
スペインの不動産価格の推移をみると、ピークは2008年だったことが分る。米国の住宅市場のピークは2006年の半ばだった。その後、米国ではサブプライム問題等が顕在化し、本格的な不動産バブルの後始末が始まった。
欧州の多くの国でも、米国同様に大規模な不動産バブルが発生した。米国のバブル崩壊に伴って、欧州でもバブルの後始末が始まった。ところが、米国と欧州では、金融機関に関しては異なる状況にあった。それは、金融機関の情報開示義務が相対的に低く、不動産に関連する不良債権額の把握が遅れたことだ。
特にスペインでは、伝統的に"カハ"と呼ばれる中小の金融機関が多く、それらが不動産関連の有価証券に積極的だった。そのため、不動産価格が下落に転じた後、多額の不良債権が発生していることは明らかだったにもかかわらず、その金額を正確に把握することが難しかったのだ。