電子書籍版『戦争と平和』が「Kindle」を検閲

Barns & Noble社の電子書籍リーダー『Nook』向けに提供されていたレフ・トルストイの小説『戦争と平和』の英語版において、kindleという単語がすべてnookに置き換わっていることが発見された。
電子書籍版『戦争と平和』が「Kindle」を検閲

われわれがダウンロードしてみたところ、「nook」は8カ所に登場しているようだ。

これまでの電子書籍の歴史でも、最も奇妙な事件が起こった。Barns & Noble社の電子書籍リーダー『Nook』向けに提供されていたレフ・トルストイの小説『戦争と平和』の英語版において、kindleという単語がすべてnookに置き換わっていることが発見されたのだ。

フィリップという鋭い読者がブログですっぱ抜いたところによると、まず彼は、次の一文につまずいたのだという。

「それはあたかも、彫刻がほどこされ彩色されたランタンがヌークされた(nookd)ようだった…」(It was as if a light had been nookd in a carved and painted lantern…)。「Nookd」という単語が繰り返し使われていることに気がついたフィリップ氏が、より正確な翻訳を確かめようとして紙の書籍を調べてみると、そこでは「kindled」という単語が使われていた。

何が起こっていたかについては、同ブログのコメント欄にある次の推測に説得力があるだろう。「Barnes & Noble社がやったのではなく、Barnes & Noble社に書籍を提出した出版社の失敗であることは明らかだ。出版社はまず、パブリックドメインであるこの本の『Kindle』[Amazon社の電子書籍リーダー]版を最初に作った。そのとき提出したものに「Kindle」という単語を使っていたことを知っていたので、Nook版を作ったときに、「Kindle」を「Nook」に置換したが、その際に全置換してしまった。自分たちがタイトルページに挿入したものだけでなく、本文にも影響するとはまったく考えなかったのだ」

「Nookd」版の『戦争と平和』は、Superior Formatting Publishingという会社が制作したものだと指摘する、ジョナサン・ジトレインによるブログ投稿もある。

トルストイのような偉大な作家のテキストがこんな馬鹿げたことで汚されるのは困ったことだが、少なくとも今回は意図的ではなかった。Kindle上で起こった、ジョージ・オーウェルの『1984年』にまつわる騒動とは違う点だ。

[Amazon社は2009年7月、再版権を持たない出版社が販売していた電子書籍『1984年』と『動物農場』の販売を停止し、ユーザーがすでに買った本についてもKindleから無断で削除した。料金は払い戻したが、ユーザーからは作中の「ビッグ・ブラザー」を体現するような行為だと批判が起こった]

TEXT BY JON BRODKIN
TRANSLATION BY ガリレオ -緒方 亮

原文(English)