【5月18日 AFP】米SNSフェイスブック(Facebook)の新規上場が間近に迫る中、ソーシャルメディアが子どもたちに与える多大な影響についても真剣な議論が行われるべきだと、ある専門家がAFPとのインタビューで指摘した。

 メディアと家族との関係に焦点を当てる米サンフランシスコ(San Francisco)のシンクタンク「コモン・センス・メディア(Common Sense Media)」の創設者、ジム・ステイヤー(Jim Steyer)氏はAFPとのインタビューで、フェイスブックに代表されるテクノロジーは世界中の若者や家族、学校に「計り知れない影響」を与えていると述べる。

「その良い点、悪い点についての議論を、全米、さらには全世界規模で行う必要がある」と呼びかけるステイヤー氏。公民権を専門とする弁護士であり、米スタンフォード大学(Stanford University)で教鞭も取る、4人の子どもの父親だ。

 ステイヤー氏は、フェイスブックやグーグルプラス(Google+)、ツイッター(Twitter)といったソーシャルメディアが、教育などの分野で「大きな可能性」を秘めていることを認めつつも、「社会性、感情、認知能力といった発達の過程においては、悪影響をもたらすこともある」とした。

「フェイスブックの新規株式公開(IPO)をめぐる一大騒動と企業に対する評価が一段落した後、これ(SNS)がどのような意味を持つのかについて真剣な議論が進められることを望む」(ステイヤー氏)

■1日8時間を「IT」と過ごす子どもたち

 ステイヤー氏はつい先日発売された著書「Talking Back to Facebook: The Common Sense Guide to Raising Kids in the Digital Age(フェイスブックに口答えする:デジタル時代の子育て常識ガイド)」で、子どもたちのインターネット利用に関して親がもっとかかわるべきと論じている。

 同書によれば、「われわれの思いとは関係なく、現代の子どもたちは、家族や学校よりもメディアやテクノロジーと接することにより多くの時間を費やして」おり、米国では1日平均で8時間に及ぶという。

 ステイヤー氏によると、子どもたちは3つの危険に直面しているという。人間関係(Relationships)、注意力と依存(Attention and Addiction)、そしてプライバシー(Privacy)で、同氏はこれらの問題をその頭文字から「RAP」と呼んでいる。このほかにもステイヤー氏は、過剰に体型を意識する少女たちの問題についても指摘している。

■ないがしろにされるプライバシー

 ステイヤー氏は、シリコンバレー(Silicon Valley)の大手IT企業経営者たちに対しては特に批判的だ。ユーザー間での相互的な接続が進むデジタル世界においては、プライバシーはないがしろにされ、政府も規制しきれていないのが現状であるという。

「この驚異的なデジタルメディア革命は、若い(ソフトウェア)エンジニアによって生み出されてきたが、その多くは自分の子どもを持たず、また人間関係が少し苦手。さらには(自分たちの手掛ける製品が)社会的、精神的にどのような影響を与えるのかをしっかりと考えていない」とステイヤー氏は指摘する。

「情報の入手、そして新商品の投入で(常に)激しい競争が繰り広げられているが、子どもについて考えるとき、これは素晴らしい戦略とは言えない」とステイヤー氏。プライバシーという観点が尊重されていないと厳しく批判した。

■まずは親がITを学び、ロールモデルに

 保護者に対するアドバイスとして、子どもにテクノロジー機器を触らせない時間を設けたり、食卓でのスマートフォン(多機能携帯電話)の使用を禁止したりすることをステイヤー氏は提案している。

 また、後で後悔する可能性がある書き込みについては、「投稿」ボタンを押す前にもう一度考え直す。匿名での投稿を行わない、ネット上で見聞きすることを全て鵜呑み(うのみ)にしないという教育を行うべきだともした。

 政府レベルでも、米国政府は欧州のプライバシー規制に習い、ユーザーが過去のどんな投稿も撤回できる「取り消しボタン」を導入するべきだと提案している。

 だが、最終的な責任はやはり保護者にあるとステイヤー氏は述べる。

「まずは(ネット上の)ルールを実際に学び、それから子どもたちと明快で簡単な決まりごとを作る。親が手本を示さなければいけない。これからの子育てには必要なことで、これは親に課せられた宿題だ」

「親が携帯を常に手放せないようでは、子どもたちに正しいメッセージは発信できません」

(c)AFP/Robert MacPherson