政府は、2014年度の「税制改正大綱」に続き、2014年度の予算案を閣議決定した。予算案の中でも、国土交通省の予算案から、今後の住宅行政がどうなっていくのかについて、見ていくことにしよう。
2014年度の国土交通省関連の予算案(昨年12月24日閣議決定)では、「東日本大震災からの復興加速」、「国民の安全・安心の確保」、「経済・地域の活性化」の3分野を重点課題としている。
なお、2013年度補正予算案(12月12日閣議決定)は「競争力強化策」、「復興、防災・安全対策の加速」、「低所得層・子育て世帯への影響緩和、駆け込み需要及び反動減の緩和」を重点課題としている。前年度の補正予算と今年度の予算を一体的に編成することで、経済再生や財政健全化を目指すという点も、ポイントになっている。
いずれについても公共事業関連では、防災や減災、老朽化対策などの国土強靭化の推進や道路などの物流ネットワークの整備などで国際競争力を強化していく予算編成となっている。また、コンパクトシティ(都市の中心部に生活に必要な機能を集約し、公共交通機関や徒歩で暮らせる街)に向けた取り組みへの支援などの予算も盛り込まれている。
では、住宅関連についてはどうだろう。
(1)住宅や建築物の耐震化対策
まず、住宅や建築物の耐震化対策の強化に、前年度比2.28倍の232億円の予算を確保している。住宅の耐震診断・改修や老朽化マンションの建て替えへの支援を充実させるほか、新たに「長周期地震動対策緊急促進事業」を創設した。これは、既存の超高層マンションの長周期地震動対策に関する診断や改修を支援する事業。長周期地震動は、東日本大震災で都心部の超高層ビルがゆっくり大きく揺れたことで注目されたが、いち早く安全性の確保に乗り出したということだ。
(2)スマートウェルネス住宅・シティの推進
次に、高齢者や障害者子育て世帯等の多様な世代が交流し、安心して健康に暮らすことができる「スマートウェルネス住宅・シティ」の推進。その内容は、サービス付き高齢者向け住宅の供給に対する支援を継続するほか、スマートウェルネス計画に基づく住宅団地等における併設施設(高齢者生活支援施設、障害者福祉施設、子育て支援施設)の整備や先導的な事業などに対して補助を行うもの。
(3)中古住宅流通・リフォーム推進等
さらに、中古住宅流通・リフォーム推進等の住宅市場活性化に対しては、前年度比4.18倍の42億円の予算を確保している。政府は、2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場を20兆円まで倍増させることを目指し、さまざまな政策を取っているところだ。
今年度の予算では、消費者に対する相談体制の整備、空き家の流通・活用に向けた取り組みの支援、適切な建物評価手法の定着などを強化するほか、「長期優良化リフォーム推進事業」を行う。これは、所定のインスペクションを実施し、一定以上の性能を満たすリフォームを行うなど、住宅の長寿命化を図る取り組みに対して、リフォーム工事の1/3まで、1戸当たり最大で200万円の補助を行うなどの事業だ。
最後に、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携する、長期固定型の住宅ローン「フラット35」についてまとめておこう。2013年度補正予算で、フラット35の融資限度額を現行の物件価格の9割までから10割までに引き上げる(ただし、金利は高く設定される予定)とし、2014年度予算では、フラット35S(=所定の優良な住宅については、当初5年間、長期優良住宅等の特に優れた住宅は10年間金利を0.3%引き下げる制度)を継続することにしている。
2014年度の予算案を見ると、予想される巨大地震に備えるために、公共施設や住宅・建築物の耐震化を強化する一方で、経済成長のために国際競争力強化のためのインフラ等の整備や地域活性化のための街づくりなどに重きが置かれているようだ。
注目したいのは、中古住宅流通市場の活性化への予算が大きく伸びたこと。特に、長期優良化住宅リフォームの補助金は、金額も大きいので、利用者が増えることが期待される。