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大森 広司
2013年3月22日 (金)

公示地価発表、この1年で値上がりした街はどこ?

写真: iStockphoto / thinkstock
写真: iStockphoto / thinkstock

国土交通省から2013年の公示地価が発表され、各地で地価上昇の動きが芽生えつつある状況が明らかになった。この1年で地価が値上がりした街はどこなのか。SUUMOの検索データとも照らし合わせてみていこう。

■東京都で地価上昇地点が登場。愛知県は全体で住宅地が上昇

公示地価とは、全国2万6000地点の1月1日時点の地価を不動産鑑定士が“値付け”し、同省が取りまとめて発表しているもの。公共事業で土地を買うときの基準とされるとともに、一般の土地取引の指標とされる“公的な”地価だ。調査地点は毎年見直されるが、大部分は前年と同じ地点なので、この1年での変動率も発表される。地価の動向を知るうえでも目安となるデータだ。

今年の発表内容をみると、全国的には地価の下落傾向が続いているが、下落率は縮小しており、横ばいの地点や上昇に転じた地点も少なくない。東京圏は住宅地が▲0.7%(▲はマイナス。以下同)、商業地が▲0.5%といずれも下落幅が1%を切っており、ほぼ横ばいといえる。横浜市や川崎市を中心に上昇地点が増加し、昨年は上昇地点がなかった東京都でも上昇地点が現れた。大阪圏でも下落率は1%未満となり、各府県で上昇地点が増加。名古屋圏では名古屋市を中心に上昇地点が大幅に増え、愛知県全体で住宅地が0.1%上昇となった。

また東日本大震災被災地では地域により差はあるものの、復旧事業が進み、高台への住宅地移転の需要が高まっているエリアもあり、地価上昇の動きが各地でみられる。特に宮城県では全体で住宅地が1.4%の上昇と、全国で最も上昇率が高くなった。

大都市圏を中心に地価が下げ止まりから上昇に転じる地点が増えている要因について、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員中山登志朗さんは以下のように分析してくれた。「低金利と住宅ローン減税、住宅購入のための贈与税非課税枠の“3点セット”に後押しされて住宅需要が堅調なことが影響しているようです。また大規模再開発の効果で、周辺エリアの不動産需要が拡大して地価の上昇を牽引していることも挙げられます。特に名古屋圏が好調なのは、自動車産業の業績回復で西三河地区の地価が上昇したことが要因です」

■武蔵小杉、豊洲、東京スカイツリー周辺で大きく上昇

東京圏で地価上昇の目立った地点としては、まず川崎市中原区小杉町2丁目が9.1%上昇と、同圏の住宅地では最も高い上昇率となった。現地は武蔵小杉駅周辺の再開発地域に隣接しており、タワーマンションなどの活発な供給を背景に土地の需要が高まっている。同じく住宅地では江東区豊洲4丁目も2.8%上昇した。湾岸エリアではマンション販売がおおむね好調となっており、やはりタワーマンションの供給が続く豊洲駅に近い立地条件が地価上昇の要因となっているようだ。

商業地では台東区浅草1丁目が9.0%上昇と、前年の▲1.2%から一転して上昇した。浅草の中心商業地域にあり、スカイツリー開業による観光客増加で不動産需要が強まっているという。スカイツリー周辺ではほかにも地価が上昇に転じた地点が少なくなく、墨田区全体では0.4%と23区で最も高い上昇率となっている。ちなみに今年2月のSUUMOの検索数を調べてみると、とうきょうスカイツリー駅(旧業平橋駅)は1年前より32.8%増え、関東平均(19.3%増)を大きく超えた。家を探す人の注目度も高まっているということだ。

今後の地価動向について、中山さんは「アベノミクスの効果と消費税増税前の需要拡大で、業務性の高い都心や大規模事業集積地、人気住宅地などを中心に地価が下げ止まり、増税が完了する15年10月までは緩やかに上昇する可能性があります。また相続税の増税も予定されており、地価の高い都心を中心に課税対策で土地の売買が活発になることが予測され、地価の上昇圧力が高まるでしょう」と予測している。

アベノミクスによる景気回復はこれからが本番というところだが、地価動向は早くも熱を帯びてきつつあるようだ。今後の住宅価格やローン金利の動きにも注意しておきたい。

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