f_zebraさんの国会事故調報告書検証…甲状腺スクリーニング編

勿体ないのでまとめましたw
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甲状腺に沈着した放射性ヨウ素の測定等…

Hal Tasaki @Hal_Tasaki

book lover, music lover, mathematical physicist / icon by Mari Okazaki 田崎晴明【教員/数理物理学者】メンションは読まないので、ご用のある方はメールをください。アイコンはなんとおかざき真里さんに描いてもらいました!

gakushuin.ac.jp/~881791/halJ.h…

・本編

Flying Zebra @f_zebra

An Engineer living in Osaka, Japan Specialized in civil engineering and long time operation of nuclear power plants Computer and gadget freak

Flying Zebra @f_zebra

国会事故調報告書の間違いをまた見つけてしまいました。安定ヨウ素剤の服用についてです。今回の事故で、服用についての指示が行き届かず、現場が混乱していたのは事実です。もし服用が必要な被曝が起こっていれば、直接的な健康被害に繋がった可能性は十分にあります。

2012-07-10 20:15:40
Flying Zebra @f_zebra

そのため、緊急被曝におけるヨウ素剤服用の基準がしっかりと周知され、訓練を含めた今後の対策を確実にすべきであることには異論ありません。ただし、今回の事故でヨウ素剤を服用すべきであったか否かについては別問題です。報告書では、そこを検証した形跡がありません。

2012-07-10 20:16:08
Flying Zebra @f_zebra

p440から始まる安定ヨウ素剤についての記述では、スクリーニングレベルとして1万cpm、13000cpmという値が紹介され、これがヨウ素剤服用の基準であると理解しているようです。これは、明確に間違いです。衣類などの汚染を調べるスクリーニングと甲状腺被曝は何の関係もありません。

2012-07-10 20:16:42
Flying Zebra @f_zebra

私は自身が応援派遣で初期の県民スクリーニングに従事していますので、実態はよく知っています。スクリーニングはGM計数管を使って表面の「汚染」を調べるもので、人の場合、高いカウントが出やすいのは靴底や掌です。

2012-07-10 20:17:23
Flying Zebra @f_zebra

13kcpmを超えると部分除染(手を洗うなど)、100kcpmで自衛隊による全身除染という運用でした。あくまでも衣類及び体表面に付着した汚染を調べ、不用意に移動させないことを目的としたもので、内部被曝を調べるものではありません。

2012-07-10 20:18:12
Flying Zebra @f_zebra

では、放射性ヨウ素による甲状腺被曝についてはどういう管理かというと、原子力安全研究協会による「緊急被ばく医療ポケットブック」に従うことになります。現在の版は2005年に発行され、医療機関に配布されているものです。 http://t.co/5a6RUHsx

2012-07-10 20:18:57
Flying Zebra @f_zebra

甲状腺についてはGM管ではなく、NaIシンチレーション式サーベイメーターを使って頸部に20秒以上押し当て、計測値をcpmではなくμSv/hで読み取ります。精密検査の要否を判断するスクリーニングレベルは、甲状腺沈着量が「測定時で」3kBqとなっています。

2012-07-10 20:19:56
Flying Zebra @f_zebra

これは、被曝から検査までに半減期の短いヨウ素131が減衰する事を考慮し、その期間を4週間程度として、乳児の甲状腺等価線量で100mSvの被曝に相当します。今回の事故では3月下旬から4月上旬にかけてリスクの高い子供を中心に検査が行われ、最大で35mSvと評価された子供がいました。

2012-07-10 20:20:40
Flying Zebra @f_zebra

甲状腺等価線量100mSvというのは、これを超えると予想される場合は安定ヨウ素剤服用を予防服用するという基準でもあります。ヨウ素剤には副作用があるため、それを上回るリスクがあるときにのみ服用する事が推奨されます。

2012-07-10 20:21:22
Flying Zebra @f_zebra

なお、この基準は国際的には50mSvが一般的です。日本人は海草類を常食する食生活から日常的にヨウ素摂取が多く、甲状腺への放射性ヨウ素の沈着がその分少なくなるため、副作用リスクとのバランスが高い方にシフトするのです。

2012-07-10 20:25:01
Flying Zebra @f_zebra

今回の事故対応には多くの問題があり、数日後には線量が高いことが実測値からも確認されていた飯舘村の避難指定が遅れたことなどは大きな問題です。しかし、結果的にはヨウ素剤服用基準を超える被曝は確認されず、調査の不確実性を考慮してもほとんどいなかったのは事実でしょう。

2012-07-10 20:25:55
Flying Zebra @f_zebra

決定のプロセスはともかく、ヨウ素剤を服用すべきであったか否かという問いに対しては、いずれの地域においても服用すべきではなかったことになります。これをもって関係者を免責できるわけではありませんが、安心材料としてもっと周知されてもよいのではないでしょうか。

2012-07-10 20:26:38
Flying Zebra @f_zebra

(続き)むしろ、指示の混乱によって独自の判断でヨウ素剤の配布、服用指示を行ったいくつかの自治体では、リスクの観点からは結果的に住民により高いリスクを負わせてしまったことになります。今後の課題としては、これも見逃すべきではないでしょう。

2012-07-10 21:21:55
Flying Zebra @f_zebra

甲状腺被曝については、学習院大 田崎先生の「〜できるだけ短くてわかりやすくて正確な解説」でも詳しく解説されています。書籍には入らなかったようですが、未だに誤解の多い点ですので、もやもやしたままの人は是非一読して自分で整理してみて下さい。 http://t.co/zgXJqwPF

2012-07-10 21:28:19
Flying Zebra @f_zebra

事故調報告書では、明確には言及していませんが、ヨウ素剤を服用すべきであったという前提で関係者の対応を批判しています。ところがその前提に対する検証はなく、唯一根拠らしきものと言えば副作用の可能性は低いと「考えられ」、重篤な副作用の報告がなかった、という程度です。

2012-07-10 21:29:39
Flying Zebra @f_zebra

更に、甲状腺被曝を調べた検査に対し、「原災本部は調査の拡大を望まなかったと考えられる」と本来必要な調査を本部が拒んだと受け取られるような記述をしていながら、追加調査の必要性は検証していません。国会の名を冠した報告書にしては、随分恣意的で情緒的な記述が至る所で目に付きます。

2012-07-10 21:31:37
Flying Zebra @f_zebra

それなりに周辺知識があって検証が可能な部分を拾い読みしているだけですが、一事が万事この調子で、これ以上読み進めてもがっかり感が増すだけのような気がして、モチベーションが失われつつあります。技術論文とは違うにしても、この程度の検証で「調査」というのはやはり違和感があります。

2012-07-10 21:32:07