「食の安全」を揺るがす事件が発生した。昨年12月29日、マルハニチロホールディングスは、子会社・アクリフーズの群馬工場で製造された冷凍食品から、農薬のマラチオンが検出されたと公表した。最大で基準値の260万倍という高濃度だ。
手軽な食料品として愛されてきた冷凍食品に、激震が走ったのは2008年だ。中国産冷凍餃子に、農薬成分メタミドホスが混入された「中国毒餃子事件」が発生し、日本人10人が中毒症状を訴えたのだ。
この時、冷凍食品の消費がぐっと落ち込んだ経験から、食品メーカーや流通業、小売店などは、製造から販売までの衛生管理を徹底するようになった。
「今回の混入があった群馬工場でも、従業員に私物の持ち込みを禁止するなど工場内を厳しく管理していました。通常の業務による農薬混入は考えにくく、何者かによる意図的な犯行が疑われています」(全国紙記者)
今回のケースについて、消費者問題研究所代表・垣田達哉さんは「冷凍だったことが仇になった」と指摘する。
「一般の生鮮食料品や加工食品だと、農薬などの有害物質が混入しても、物質は空気に触れて少しずつ気化していきます。しかし、冷凍食品は有害物質も“フリーズ”してしまう。冷凍ゆえ、危険性がなかなか減少しないんです」(垣田さん)
冷凍食品の落とし穴はほかにもある。食の安全に詳しいジャーナリストの椎名玲さんは、「そもそも冷凍食品には、製造過程で菌などが付着するリスクがある」と指摘する。
「最終的に商品を加工する工場は清潔に管理されているとしても、最初にエビの殻を剥いたり魚をおろすなど、加工の下ごしらえをする工場の中には、自動手洗い機やエアシャワーがないなど、不衛生なところも多々あります。こうした工場で作業する途中、食材に菌類が付着することがあるんです」(椎名さん)
※女性セブン2014年1月30日号