不景気のイメージばかり先行しているが、大手企業に関していえば、この冬のボーナスは増えている。
経団連が実施した大手103社の今冬ボーナス集計(11月9日時点)によれば、平均妥結額は前年比5.22%増となっている。
経済ジャーナリストの内田裕子氏が解説する。
「震災や円高の影響などで、今年度上期(4~9月期)の上場企業の連結経常利益は前年同期に比べて2割近く減っています。しかし、大企業の多くは、春の労使交渉時にボーナスの年間支給額を決めているため、震災や円高の影響が反映されていないのです。ですから昨年好調だった自動車メーカーなどは総じていい回答が出ている」
確かに、自動車業界のボーナスは堅調だ。
最大手・トヨタ自動車は昨冬の支給額90万円から91万円(組合員平均)に微増。マツダは68万円→69万円(組合員平均・平均年齢37.3歳)、スズキは基本給×2.4か月→2.5か月(組合員の平均年齢35.9歳)と、いずれも増えている。
ホンダは昨冬と同額ながら業界最高額となる109万1000円(組合員平均・平均年齢41.2歳)。自動車メーカーで100万円の“大台”を唯一突破している。
ただし、社員たちは楽観していない様子だ。
「震災後に部品不足による減産があったせいで、12年3月期の業績は悪化する見込み。ボーナスが前年並みだったのも単に労使交渉がうまくいったからで、来年の夏に下がらないという保証はない。この人件費ではやっていけないんじゃないかと、一部の社員からも声が上がっている。今回の賞与はできるだけ貯金に回すつもりです」(ホンダ社員)
その自動車業界でも、特に急上昇しているのが日産自動車だ。昨冬の81万円から実に12.59%アップの91万2000円である。
2011年3月期決算では、世界販売台数が過去最高の418万5000台、当期純利益は前期比7.5倍の3192億円と絶好調。エコカー補助金終了の影響などで4.7%減った国内販売を、世界シェア拡大で補った。「2009年は営業赤字となり厳しい状況だったが、リカバリープランの成果が出た」(広報部)という。
※週刊ポスト2011年12月16日号