中2男子生徒の自殺について、滋賀県大津市教委の沢村憲次教育長が、「家庭の問題もある」と何度も強調したことが物議を醸している。個人情報保護の絡みもあるとして、その具体的な内容を明かさないため、様々な憶測を呼んでいるのだ。

男子生徒の父親が市教委などに損害賠償を求めた訴訟では、越直美市長の考えをくんだ市側は、2012年7月17日の第2回口頭弁論で和解する方針を示した。つまり、いじめと自殺との因果関係を認めるということだ。

自殺生徒が家などのお金を勝手に引き出したことに関連?

ところが、沢村憲次教育長は、この日の会見で、因果関係は分からないと従来の主張を繰り返し、いじめ以外に「個人的、家庭的な要因もあったと、学校から聞いている」とさえ主張した。しかし、具体的な内容は「個人情報」だとして明かそうとしなかった。

これに対し、父親はマスコミの取材に怒りを露わにし、「責任の所在をすり替えようとしている」と批判した。ネット上でも、沢村教育長の発言を非難する声が相次いでいる。

「家庭の問題」について、1つ考えられることは、自殺した男子生徒が父親や親戚のお金数十万円を勝手に引き出していたとされることだ。報道によると、父親が叱ったところ、男子生徒は「ゲームに使った」などと泣いて謝るだけだったという。

金銭要求受けてなら、家庭問題でない

ところが、いじめたとされる加害生徒3人から、度々金銭要求があったとも報じられている。とすると、男子生徒がお金を引き出したことは、「家庭の問題」だと単純に言えないことになる。

ネット上では、ほかに憶測もいくつか流れているが、今のところ根拠が不明な情報ばかりのようだ。

今回の問題について、事情を知っていると思われる大津市議に取材すると、ある市議は、「いじめがまったく関係ないということもないが、もっといろいろな要因が重なったと思う」と教育長と近い考えを示した。そのうえで、「警察が捜査に入っているので、今はそれに任せたらいいのでは」と話した。

一方で、別の市議は、教育長の発言に疑問を呈した。「いじめが重要な要因になったことは間違いないはずです。『家庭の問題』を言っても、そのことは変わりませんよ。言うとむしろ、責任逃れに見えるだけだと思います」と言っている。