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「執拗」、「確執」の「執」は「シツ」と、
「執着」、「執念」、「妄執」の「執」は「シュウ」と、
それぞれ読みますよね。

ところで、「固執」の読みは、「コシツ」も「コシュウ」もアリだけど、本来の読み方はドッチですか?

ちなみに、
1.角川国語辞典で「こしゅう」の読みで「固執」を引くと「→こしつ」と載っています。
2.明解国語表記辞典では「こしつ」で「固執」が登場し、「こしゅう」では登場しません。
3.新明解国語辞典では『「こしゅう」は「こしつ」の老人語』となっています。びっくり!
これらを纏めると(?)、本来は「コシュウ」だったが現代では(若者は?)「コシツ」と読むと?

A 回答 (7件)

#3です。



>「コシュウ」が「明治中期から」出ている「コシツ」よりも先に「老人語」になっちゃったと。
>新明解国語の誤謬でしょうか?

もちろん明解に言えば「誤謬」です。←オイオイ。

「放送用語ハンドブック」では「「こしつ」を採り、「こしゅう」は原則として使わない」とした当のNHK自身がこの「老人語」説明をわざわざとりあげているほどです。
NHK「ことばの研究 『美男子(びだんし)』が多いのはどの地域?」
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/kot …
その本文(adobe)の「1.3.1固執」の項参照
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/rep …

この主張の根拠と思わしきものでは、彼の文化庁国語課の担当官や審議会委員たちの議事録での「漢語・漢字に関する問題」の「「固執」は「コシツ」か「コシュウ」か」において、「「こしつ」・「こしゅう」のどちらが正しく、どちらが誤りとは言うことはできないが、「こしゅう」は伝統的ではあっても多少古めかしい感じがあり、現代の口言葉としては、「こしつ」であると言ってよいであろう。」とまとめています。

>「本来の読み方」が「古くから存在する読み方」とするならば、「コシツ」が固執の本来の読み方なのでしょうか?

1.「執」の読みの多様性と、持たせた意味の違い
#2さんの回答のように、本来は呉音・漢音とも「シフ(シュウ)」です。
ただし、「礼記」や「中庸」での「擇善而固執之者也」のように、「善を擇(えら)んで固(かた)くこれを執(と)る者なり」として、「固」は修飾語で「執」が動詞として、今日的意味での熟語ではありません。

まず、平安中期の「延喜式・式部上」では「執政(しっせい)」という呼称が現れています。
「執(シフ)」のサ変動詞化した「執す」が、果たして促音便化した「しっす」なのか、促音便化しない「しふす」のままなのか、「しゅす」と記された例においても両者の判別は難しいとされています。
(参考:「古語大辞典」小学館)

これが「執心・執着」の意味をもった「執(シフ(しゅう))」のまま、名詞として平安期には使われています。
「何事にも執(シフ)は留めじ思ふ世なれ」(「源氏物語・横笛」)
形容動詞としても使われています。
「執なるものの師どもを、ここかしこに尋ねて侍りしなり」(「源氏物語・花宴」)

また同時期に「しゅす」に関わる「執筆(しゅひつ)」という言い方もあります。
「左大弁在衡朝臣執筆(しゅひつ)のため、…」(「九歴・天慶七年九月」)

この間の事情については次の記載を採ります。
「取りもつ義より轉じ我國にては單にシフといひて、深く心に留めて守り忘れぬ義に用ふ。執着心。執念の「執」なり」(「大字典」講談社)
つまり、執政など、取り持つ意味ではない場合、そのまま「執(しゅう)」と読むのだと、執着心のように。

2.漢熟語「固執」の発生時期
明治22年5月刊行の「言海」には載っていません。「日本大辞書」「ことばの泉」にもなく、明治41年の「ことばの泉 補遺」での採録(読みは「コシツ」のみ)が早い方だと目されています。
ここから唯一1888(明治21)年に現れているという「漢英対照いろは辞典」が問題となりますが、その内容は未見の為不明です。
一つの推測で英語の"insistence"の訳語に「執拗(しつよう)」とともに「固執(こしつ)」という、「執(シツ)」を揃えた表現を行っているのではないか、これはまた、その後、心理学用語などとしても「こしつ」として訳されたものではないか。そしてこれで学んだ学生たちの成長し社会で活躍する10~20年後といった形で、その後の新聞・雑誌などを通して読み・言い方に影響を及ぼしたのではないか知らん、と。
そう考えると、漱石が「コシフ」と遣いながら、同時期の新聞小説では「コシツ」となっている背景も何となく忍ばれるものと。

このためにも、まずは「漢英対照いろは辞典」での扱い方を実際に確認したいものです。

3.老人説
以上からして、平安の昔から2乃至3種の読み方が存在したと言えども、音便を入れない「しゅう」と読むのが呉音・漢音に適合し、かつ「深く心に留めて守り忘れぬ義に用ふ」に叶うのではないかと思われます。
ただし、この意味では既に、「固持・固守・堅持・護持」といった十分に熟した語彙があったにもかかわらず、英語の和訳において「執拗」と共に「固執」が改めて「こしつ」読みで創作された可能性もあり得ます。

明治後期から普及をみたこの「こしつ」が、戦後、その本来の読みとしての「こしゅう」とも読み直す動きがあったのではないでしょうか。しかしその後、改めて英語辞書などでの「口言葉」としての「こしつ」を良しとする世代が育つにつれ、先の戦後期世代を指して「老人語/多少古めかしい感じ」としているのではないでしょうか。

この回答への補足

本日(2012/09/21)、図書館で他の辞書における記載状況を調べたので、私自身の備忘録として記しておきます。
日本国語辞典[第二版](小学館)
 →【固執(こしつ)】の補注:かつては「こしゅう」が一般的であった。
明鏡国語辞典[第二版](大修館書店)
 →【固執(こしつ)】:「こしゅう」の慣用読みだが、今日では「こしつ」が一般的。

補足日時:2012/09/22 00:59
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この回答へのお礼

》 その本文(adobe)の「1.3.1固執」の項参照
の箇処でご紹介いただいた資料には感激いたしました!
ちなみに、同資料の 37頁に、私がたまたま目にした“新明解の老人語”のことも記載されていますね。
同ページの説明文「国が示す基準としても、どちらが標準的であるかを明示するのは困難」を念頭におくことにします。

この度は誠にありがとうございました。

お礼日時:2012/09/21 12:19

#3・6です。



高橋五郎 著「いろは辞典 : 漢英対照」(明21.5)を確認しました。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/902745
本書の768頁に次のように載っています。
「こしつ[する] 固執、かたくとる、いぢはる To fold fast, to insist on.」
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この回答へのお礼

ありがとうございました。

お礼日時:2012/09/21 12:37

    #2です。

やり直しです。

>> 1。  私には貴方のご説明が難解に過ぎました

    申し訳ありません。やり直します。次は、下記にこの問題が要約されている部分です。

「唇内入声」は唇を使った発音で、「ジフ」「キフ」「シフ」 「エフ」「タフ」と書きましたが、これは旧 仮名遣いで「現代仮名遣い」なら「ジュウ」 「キュウ」「シュウ」「ヨウ」「トウ」となります。

 「舌内入声」は舌を歯茎のあたりに付けて発音しますが、「-チ」となる場合と「-ツ」 となる場合がありますが、両方あるものもあります。「一」は「イチ」と「イツ」、「質」 は「シチ」と「シツ」、「別」は「ベチ」と「ベツ」などです。
 「喉内入声」は喉の前の方で発音し、「-ク」 の場合と「-キ」の両方があります。

 この「入声」が日本語の中で、もっとも問題があり、特に「唇内入声」の「十」「塔」「執」「合」「雑」など一部のものは二つの形「ジュウ」と「ジッ」、「トウ」と「タッ」、「シュウ」と「シッ」、「ゴウ」と「ガッ」、「ゾウ」と「ザッ」のように両様のの形で現れることがあります。

 たとえば、普通「ジュウ」と読むのに「十本」「十手」は「ジッポン」「ジッテ」となります。同様に「塔頭」は「タッチュウ」となり、「執念」は(シュウネン)となるのに「執行」「執筆」は「シッコウ」「シッピツ」 となります。「合」は「合併」(ガッペイ) となるが、順序を変えると「併合」(ヘイゴウ)です。   
    http://cocologjun.cocolog-nifty.com/blog/2011/09 …

(以下は僕の解説です)    
    中国では終わりに p、t、k がつく文字があり、これらは入声(ニッショウ)と呼ばれます。北京などの北方方言では無くなりましたが、広東語、客家語、など中国南部では残っています。

     p で終わるのを「唇内入声」、t で終わるのを「舌内入声」、k で終わるのを「喉内入声」と言います。ご質問は、唇内入声の「執」に、なぜ「舌内入声」の読み(すなわち「シツ」があるのか,と言うことです。

    簡単に架空の例でご説明申し上げますと、 tep、 tet、 tek のような音が日本に入ってきた、「さあどうする?」となり、一つの解決法は「てう」「てつ」「てく」ともう一字くっつける、方法、もう一つは「で」で三つを表しちまえ,と言う方法です。

     この後者だと唇内と舌内の区別が無くなります。このため本来「しう」>「しゅう」と進むべきものが、「しつ」の方にも紛れ込んだ、と言うことです。


>>2。  「シュウ」を「本来の読み方」とする根拠を示していただいた、と理解しておきます。

    おっしゃる通りです。
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この回答へのお礼

ありがとうございました。

お礼日時:2012/09/21 12:38

    #2です。

補足です。

>>「出生届」における「シュッセイ届」「シュッショウ届」と同類問題かな、とも思っています。

    「執」の二つの読み方は日本に入ってからできたのですが、「生」を「セイ」と読んだり「「ショウ」と読んだりするのは、日本に入る前からです。

    「ショウ」は、呉音で、中国南部から仏教の僧侶が伝えたもので古い発音です。
    「セイ」は、漢音で、中国北部から、呉音よりも後から伝わった発音です。下記などをご覧ください。   
    http://www.geocities.co.jp/collegeLife-Labo/6084 …

     他にも「正」を「ショウ」(正月)と読む時は呉音、「セイ」(正義)と読む時は漢音です。
     明、星、京、丁、平、霊、兵、をみょう、じょう、きょう、ちょう、ひょう、りょう、ひょう、と読めば呉音。
     めい、せい、けい、てい、へい、れい、へい、と読めば漢音です。
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わが国の辞典類での読みの経緯を纏めてみました。


明治中期から昭和初期を通して、「こしつ」読みが主で、「こしゅう」が主見出しとして現れるのは昭和期に入ってからと見れます。
漱石でさえ論説文と新聞小説で読みが変わっているのは、結局音読みでは「こしゅう」だが、世間的に「こしつ」であることにもあえて固執しないということでしょうか。

1.1888(明治21)年 
コシツ…主見出し(「漢英対照いろは辞典」)
2.1908(明治41)年
コシツ…主見出し(「ことばの泉 補遣」)
3.1922(大正11)年
コシツ…主見出し(「言泉 改修版」)
コシフ…空見出し
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/969160
(1495頁と1497頁)
4.1919(大正8)年
コシフ…空見出し(「大日本国語辞典」)
5.1935(昭和10)年
コシュー…主見出し(「大辭典」)
コシツ…空見出し

一方、作家の方から見ると、
1.こしゅう
「融通のきかぬ一本調子の趣味に固執(こしゅう)して、」(夏目漱石「作物の批評」1907(明治40)年)
「彼らはいずれも自己の性向、世界観に絶対に固執(こしゅう)していて、」(中島敦「悟浄出世」1942(昭和17)年)
2.こしつ
「たしかに頭の上で大きな音がしたのだと固執(こしつ)した。」(夏目漱石「門」1910(明治43)年)

この回答への補足

》 明治中期から昭和初期を通して、「こしつ」読みが主で、「こしゅう」
》 が主見出しとして現れるのは昭和期に入ってからと見れます

このことだけを見ると、私の質問文の「3.」と矛盾しているようですね。
つまり、「昭和期に入ってから」現れる「コシュウ」が「明治中期から」出ている「コシツ」よりも先に「老人語」になっちゃったと。新明解国語の誤謬でしょうか?

それから、…
「本来の読み方」が「古くから存在する読み方」とするならば、「コシツ」が固執の本来の読み方なのでしょうか?

補足日時:2012/09/20 15:30
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ところで、「固執」の読みは、「コシツ」も「コシュウ」もアリだけど、本来の読み方はドッチですか?



    コシュウです。

    もともと中国の上古音や中古音では *tiep のように再構成されています。このおしまいの [p] は、日本に入ってきた時は「う」の仮名で書き表されました。

    「しう」と書かれたものは「しゅう」と発音され、「執着」、「執念」、「妄執」は、その正当な流れを示しています。

   ただおしまいの p がゼロ表記の場合もあり「し」だけが書かれる場合がありました。そのため同じくゼロ表記だった t を書かない「し」と混同された時があります。

    このため本来 iet で終わる漢字と一時的な混流が起こります。「執拗」、「確執」、「執事」などが産まれたのは、このためです。

    同じ iep に終わる文字には「入」「十」などがああり、 入学「にゅうがく」、と入声「にっしょう」、十分「じゅうぶん」と、十手「じって」の2種の読みが見られるのはそのためです。

    他の p に終わる例には「立」があり、設立「せつりつ」、建立「こんりゅう」の2種があります。

    僕は多くの場合、現代の日本語では、若者語、老人語 の区別ではなく、語彙で(例えば設立は「せつりつ」と読み、建立は「こんりゅう」と読むと言う風に)決まっていると思います。
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この回答へのお礼

私には貴方のご説明が難解に過ぎましたが、「シュウ」を「本来の読み方」とする根拠を示していただいた、と理解しておきます。何だか気分がスッキリしています(^_^)

》 多くの場合、・・・語彙で(例えば設立は「せつりつ」と読み、建立は
》 「こんりゅう」と読むと言う風に)決まっていると思います
私もそのように理解しておりましたが、「固執」の読み方の元祖と使い分け(があれば、それ)を知りたくて質問しました。

「出生届」における「シュッセイ届」「シュッショウ届」と同類問題かな、とも思っています。

コメント、誠にありがとうございました。

お礼日時:2012/09/19 09:45

ご明察!


本来は「こしゅう」です。
これが長い間使われるうちに「こしつ」の方が一般に定着しました。
まあ、「執」の字自体が「しつ」と「しゅう」のふたとおりの読みがありますからねぇ・・・

よく似た例では、遺言があります。
法令用語では「いごん」ですが、一般的には「ゆいごん」ですね。

シチュエーションによって使い分けるものとそうでないものもあります。
時と場合を考えて使うとよいでしょう。
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この回答へのお礼

》 まあ、「執」の字自体が「しつ」と「しゅう」のふたとおりの読みがありますからねぇ
そのために質問した次第です。
改めて現代漢語例解辞典(小学館)を引いてみると、「シュウ」は呉音/漢音だけど、「シツ」は慣用音と載っていました。
今やダントツに慣用音が多く、“本来読み”を含む言葉は次のものしか思い浮かびません。
  愛執、異執、意執、我執、偏執、妄執
  執心、執着、執念

コメント、誠にありがとうございました。

お礼日時:2012/09/19 09:27

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