スポーツ

20歳で逝った巨人ドラ1位 地方出身高卒投手が陥るパターン

20歳で逝った巨人ドラ1位

 プロ野球界の長い歴史の中には、現役のままこの世を去った選手も少なくない。スポーツライターの永谷脩氏が、巨人からドラフト1位されながらもわずか20歳で急逝した湯口敏彦選手について綴る。

 * * *
 楽天に1位指名された松井裕樹の始動の写真を見ながら、少し太ったのかなと思った。甲子園を終えた高校生の場合、今までの反動で遊んでしまったりして、調整が遅れる例が多々ある。特に甲子園常連校でない選手の場合、それが多い。思い出したのは、1970年のドラフトで巨人が1位指名した、岐阜短大附の湯口敏彦のことだ。

 初めてのキャンプを控えた71年の正月。当時、湯口を加えて「高校ビッグ3」といわれた箕島の島本講平(南海)、広陵の佐伯和司(広島)に交換日記をしてもらうという少年誌の企画で、3人の実家を訪れた。湯口邸のある岐阜県の郡上白鳥を訪れたときは、雪が1メートルくらい積もっていた。家ではドテラを着た湯口が応対してくれた。話の最中、さかんに頭を気にしていたが、そこには5円玉ほどの円形脱毛があった。

「これで随分からかわれたんです。都会に行っても大丈夫かな」

 温暖な和歌山で育ち、快活だった島本に比べて、雪国生まれの湯口は、人見知りする繊細なタイプだった。

 制球に難はあったが、彼の速球は一級品だった。それを武器に甲子園でベスト4に入り、巨人に1位指名される。すると間もなく地元後援会なる組織ができ、“明日の大スター”とばかりに、蝶よ花よともて囃した。壮行会には同じ岐阜出身の巨人OBということで、森祇晶も招かれる大騒ぎ。私は森の担当をしていた関係で、同行した。

 しかし周囲の熱狂とは裏腹に、田舎から急に出てきた逸材は、都会でのプロとしての生活に戸惑った。自分が一番だと思っていたスピードも、同僚から「あの程度なら多摩川(二軍の意)にゴロゴロしているよ」といわれる始末。同期入団の連中とランニングをすれば、スタミナ不足でどんどん置いていかれる。

 首脳陣からは「今まで何をしていたんだ」と叱責を浴び、返す言葉もなかった。制球難から、キャンプ終盤にはフォーム改造の声まで上がるが、二軍投手コーチ(当時)の中村稔が川上哲治監督を説得し、なんとか1年間はそのままのフォームで通した。

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン