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SUUMOジャーナル 編集部
2012年3月11日 (日)

震災後、湾岸・高層マンションのニーズはどう変わった?

東日本大震災以降、住宅市場ではさまざまな“憶測”が語られた。例えば「湾岸エリアから内陸部に需要がシフトする」「揺れの大きかった超高層マンションが敬遠される」といったものだ。果たしてそうした意識の変化は本当に起こったのか、首都圏を対象にした調査データで検証する。

■東京湾岸エリアの持ち家意向は全体とさほど変わらない

まず湾岸エリアの居住者の意識を、リクルートとカルチャーズスタディーズ研究所による昨年9月時点の調査からみていこう。一部被災のあった千葉湾岸(浦安市、船橋市、市川市、習志野市)エリアの賃貸住宅居住者に持ち家意向の変化を聞くと、「あまり変化はない」が55.3%(東京圏の全体平均は57.9%)を占めた。「持ち家を手に入れたい気持ちが強くなった」は5.1%(同4.8%)、「持ち家を手に入れたい気持ちが弱くなった」は10.2%(同10.9%)と、住宅購入意向は全体平均と変わらない。

また、同じく一部被災のあった東京の湾岸2区(江東区、江戸川区)エリアでは「持ち家を手に入れたい気持ちが強くなった」が3.2%とやや低いが、「持ち家を手に入れたい気持ちが弱くなった」も6.1%と全体平均よりも低く、「あまり変化はない」が59.4%を占めている。

■埋立地を避ける傾向は湾岸居住者は平均より低め

震災後の「住宅地」についての考え方や行動の変化(複数回答)については、「埋立地には住まない方がいいと思った」が45.8%いるが、その回答率を居住エリア別にみると、湾岸2区(43.5%)や千葉湾岸(44.0%)は全体平均よりむしろ低い結果に。逆に回答率が高いのは52.1%の中央線近郊(中野区、杉並区、武蔵野市、三鷹市)や、54.7%の西武線郊外(西東京市から所沢市まで)など、湾岸から離れたエリアの居住者だった。

なお、「都心や都心近くに住む方がいいと思った」の割合は全体では9.9%だが、都心3区(千代田区、中央区、港区)では37.7%と最も高くなるなど、都内23区内では軒並み2ケタの回答率だった。都心周辺は帰宅の困難度が比較的低かったことや、計画停電をおおむね免れたことなどが影響しているとみられる。

■高層階に住む人は高層階を敬遠しない傾向が強い

超高層マンション居住者の意識はどうか。まず震災後の「住宅」についての考え方や行動の変化(複数回答)について聞いたなかで、「マンションの高層階は揺れが激しいらしいから、住むなら低層階の方がいいと思った」という項目の回答率は全体では12.3%だった。持ち家マンションの居住者に限ると18.4%と高くなるが、居住階別では「11~14階」の人が12.0%、「15階以上」の人が7.1%と、高層階に住む人ほど回答率が低くなるという意外な結果が得られた。

また住宅購入希望者を対象に、家を買う場合に以前より重視したいと思うようになった項目(複数回答)を聞いたなかで、「階数があまり高くないこと」を選んだ人の割合は全体で19.5%だった。これを居住階別でみると、「1~2階」(29.4%)や「3~4階」(27.7%)など低層階の居住者は回答率が高いが、「15階以上」の居住者は3.0%と低くなる。今現在、高層階に住んでいる人は、高層階を敬遠する傾向がその他の人よりも弱いことが明らかだ。

■東京湾岸エリアや高層階の居住者は住み替え意向が高くない

最後に住み替え意向もみてみよう。現在の地域の住み替え意向を居住エリア別にみると、「今の地域を強く希望」と「できれば今の地域を希望」の合計が全体では50.7%なのに対し、湾岸2区は50.8%、千葉湾岸は52.6%とほぼ変わらない結果だった。

現在の住宅の住み替え意向を居住階別にみると、「一生住み続けると決めている」「ぜひずっと住み続けたい」「できればずっと住み続けたい」を合計した比率は「11~14階」の人が30.8%、「15階以上」の人が47.6%と、全体平均(23.6%)より高く、居住階が高いほど住み替え意向が弱まる傾向が読み取れる。

このように、湾岸エリアや高層階を敬遠する傾向は全体としては多少みられるが、実際に湾岸エリアや高層階に住んでいる人にはそのような意向は強くないことが分かる。住む場所や住宅を選ぶ際には、風評や思い込みなどにとらわれず、地震のリスクなどを客観的に判断することが大切だといえそうだ。

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