6月9日に発表された国会事故調の論点整理において、官邸の「過剰介入」という指摘がなされ、注目が集まっている。たしかに、本来、原災法が想定していた仕組みでは、原子力発電所の敷地外(オフサイト)に関しては「オフサイトセンター」を中心に対応し、敷地内(オンサイト)での原子炉に対する事故対応は事業者である東電が中心に対応する仕組みになっていた。その意味では、事故発生から3月15日に政府・東電統合対策本部が東電本店内に設けられるまで、官邸が中心になって事故収拾に直接関与したのは異例と言えるだろう。

  

  しかし、異例ではあるが、今回のような、東電も保安院も想定していなかったシビアアクシデント(過酷事故)が起きた状況においては、官邸として、そうせざるを得なかったのが現実であった。その事が、国会事故調に理解されていないとしたら残念である。


 事故発生直後から、東電からは官邸や本部長である総理に、電源車の搬送への協力要請や、住民避難を必要とするベントの了解を求めてきた。さらに、今回のシビアアクシデントでは原子炉や使用済み燃料プールへの注水においても東電単独では実行できず、自衛隊、消防、警察など各方面に官邸から出動を要請するなど、オンサイトに関することも含めて事故対応に当たらざるを得なかった。本来、事故対応の中心となるべき原子力安全・保安院が、事故発生当初、組織として機能しない中で、もし官邸が動かなかったならば、結果はどうなったか。私は、他の政府機関が十分に動かない以上、官邸として、また原災本部長として、直接対応せざるを得なかったと、今でも考えている。


 「撤退問題」では、発電所長をはじめ現場の皆さんは最後まで頑張る覚悟であったことは、その通りだと私も思っている。しかし、清水社長が経産大臣と官房長官に電話をし、両大臣が「会社としての撤退の意思表示」と受け止めたという事実は大きい。これを官邸の誤解と一蹴するのは、やはり一方的な解釈と言わざるを得ない。


 こうした解釈の背景には、国会事故調が入手したいかなる情報があるのだろうか。例えば、国会事故調の担当委員は東電本店と福島第一サイトのテレビ会議の記録を見て調査したと述べている。そうであるなら、原発事故発生から今日までの記録を、私が東電本店で社長や会長など約200人の東電幹部を前に話した場面も含めて、国会事故調の責任において全て公開していただきたい。そのことによって、真実と真相が、より公正かつ正確の明らかになるのではないだろうか。