3月、インターネットで探したベビーシッターに8か月と2才の子供を預けたところ、2才の子供が亡くなるという事件が起きた。発覚後、大きな波紋が広がっている。預けた女性は、夜の仕事をして生計を立てていた22才のシングルマザー。素性のわからないシッターに子供を託した女性が非常識だという声も多いが、保育ジャーナリストの猪熊弘子さんはこう指摘する。
「女性が子供を育て、生活をしていくために、子供をベビーシッターに預けて仕事に行っていたことを非難するのはおかしな話です」
事件が起きたのは神奈川県横浜市。昨年5月、待機児童ゼロを宣言し、大きな話題を呼んだ“保育の先進地区”だったはず。猪熊さんが続ける。
「横浜市の責任は重いですよ。待機児童ゼロを高らかに謳いましたが、そこには、認可外の保育園に通う子供や、育児休暇を延長した親が家で面倒を見ている子供はカウントされていません。おまけに、事件に遭ったお母さんのように、夜間働く女性のための施設も、市内に2つしかありませんでした」
政府は、2015年10月から引き上げられる10%への消費増税分のうち7000億円を保育の拡充に使うことに決めている。
しかし、この金額は充分ではない。当初は1兆1000億円が必要とされていたのに、3割近くにあたる4000億円も減ってしまった。
「これでは、本当に少子化対策をしたいのか、理解に苦しみます。保育園の数だけ増やしても、質を上げる政策を取らなければ、結局、今回のような事件を再び生むことにもつながりかねません」(猪熊さん)
※女性セブン2014年4月17日号