Red Bull 5Gに代わる新たなイベント
まずは、Red Bull Tower of Prideの企画がスタートした経緯についてお聞かせください。
松井 レッドブル・ジャパンがゲームに対して携わってきたのは今から6年前、Red Bull 5G (※1) というイベントからでした。レッドブル・ジャパンは、新たなイベントを創造し続けるという理念を持っており、Red Bull 5Gは5つのジャンルから選ばれた5つのゲームで東西対抗のチーム戦を行う、他では類を見ないフォーマットを採用しました。そのRed Bull 5Gが2016年でひと区切りついてお休みすることになり、2017年は何か別のイベントを、という話から始まったのが今回のRed Bull Tower of Prideの企画です。
※1 Red Bull 5G……レッドブル・ジャパン主催のゲームイベント。ゲームジャンルを超えたチームで5対5の東西対抗戦が行われるユニークな形式が特徴で、2011年から2016年にかけ、5年間続けて開催された。
Red Bull 5Gに代わる、新たなイベントとして企画されたのですね。
松井 Red Bull 5Gがお休みする前から、実はいろいろと企画を出していて、2016年の6、7月頃には2017年の話が進行していました。例えばRed Bull 5G は、東西対抗戦で5ジャンル、5ゲームのイベントだと草案の時点で決まっていて、そこからイベントとしてどうするかは、私たちが企画しています。今回のRed Bull Tower of Prideの草案は、大雑把に言うとレイヤー構造になった1Dayトーナメントです。
レイヤー構造というと、階層が分かれているトーナメントということでしょうか?
松井 階層ごとにボスがいて、ボスを倒すことで上に上がっていくイメージだと、最初にレッドブル側から提案されました。『ストリートファイターV』(以下、『ストV』)の大会であることも決まっていたのですが、同タイトルではCAPCOM Pro Tour(※2)が全世界で行われており、高額の賞金大会なども開催されています。そういった現在のゲームシーンに対して、私たちは一体何をするべきなのか考えました。
※2 CAPCOM Pro Tour……カプコンが主催する『ストV』の世界ランキング戦。カプコン公認の世界大会で入賞するとポイントを獲得でき、年間の上位選手には、年間チャンピオンを決定する12月のCapcom Cup 2017への出場権が与えられる。
Red Bull 5Gの例がありますからね。ファンの方からは、今回もひと味違う大会形式だろう、と期待を受けていると思います。
松井 これから説明していくルールにもつながっていくのですが、Red Bull Tower of Prideの響きからイメージを膨らませて、大会のルールはちょっとひねっています。
Red Bull Tower of Pride。直訳するとプライドの塔という意味ですね。
松井 私も、かつては『鉄拳』で大会に出るなど格闘ゲームをやり込んでいたので、「ゲーマーは何のためにゲームをやるのか」と原点回帰しました。おそらくですが、賞金の有無はさておき、格闘ゲームの大会に出る人には「俺はお前より強い」という負けん気、プライドが根底にあるんですよ。もちろん、賞金は貰えたら嬉しいに決まっています。でも、ゲームをやり込むモチベーションは意外とそこにはなくて、自分のプライドのために大会に出るんじゃないかと。
確かに。賞金は後から付いてくるものかもしれません。
松井 今、日本には自分の時間や収入をゲームに懸けているプロのゲーマーが存在します。ですが、それができないけど強い、いわゆる在野のグッドゲーマーたちも日本には多いんです。ただ、彼らは世界大会に行けるような休みを取れない。彼らは「本当はプロよりも俺のほうが強いんじゃないか」と非プロとしてのプライドを持っています。逆にプロには「非プロのゲーマーには負けない」というプライドがあるはず。そこに意味を持たせて、お互いのプライドをかけて戦ってもらいたいと思っています。
プロと非プロのプライドをかけた戦い
具体的に、本大会はどういったルールになるのでしょうか?
松井 Red Bull Tower of Prideは、3階層の大会を想定しています。ひとつ目の階層が、一般参加者による予選となるコイン争奪戦。ふたつ目の階層が、ゲートキーパーと予選を通過した参加者(挑戦者)による入れ替え戦。3つ目の階層が決勝トーナメントという形です。詳細については、今後順次発表して行きます
コイン争奪戦やゲートキーパーなど、従来の大会では聞き慣れない単語が並びますね。
松井 順番に説明すると、ゲートキーパーは8名のトッププレイヤーです。その内訳は、日本と海外から招待した7名のプロゲーマーと、コミュニティイベントの優勝者の1名で、その8名が今回のイベントでゲートキーパーとして君臨します。そして、一般参加者の方たちが、各ゲートキーパーに挑戦する権利を得るために試合を行うのが1階層目の予選です。ここを突破して挑戦者となった参加者が、次の2階層目でゲートキーパーと1対1で戦います。ゲートキーパーを倒すことができれば挑戦者が3階層目に進出、ゲートキーパーを倒せなかったらゲートキーパーが3階層目に進出します。3階層目は8名によるシングルエリミネーション(※3)のトーナメントです。
※3 シングルエリミネーション……トーナメントの形式のひとつで、1回敗北すると敗退となる一般的なルール。
単純なトーナメントやリーグ戦とは違い、コインを賭けるというのはユニークですね。ベット枚数によって試合へのプレッシャーも変わりそうです。
松井 このコインはアーケードのインサートコインのつもりです。当然、換金はできないですが『ストV』はアーケードで展開していないので、アーケードリスペクトの意味を込めまして。あと、誰が勝っているのかを、積み上げたコインタワーでわかるようにしたいと考えています。
パッと見で誰が勝っているのかわかりやすく、見ているだけでおもしろそうですね。
松井 さらに、ゲートキーパーとなる8名のトッププレイヤーが立ちはだかるので、一般参加者はそのなかの誰のゲートに挑戦するのかを明示することができます。だから例えば「俺はボンちゃんを倒してトーナメントを勝ち上がる」という意思表示ができる。
どのゲートに入るか、参加者自身が選ぶことができる、ということでしょうか?
松井 そうです。こちらで割り振るわけではないので、人気の高いゲートキーパーは速攻で埋まってしまう可能性もありますが、そこは早いもの勝ちです。各ゲートキーパーから「俺があいつを倒したい」と思う相手を参加者側が指名できます。予選を勝ち抜けば絶対に指名したトッププレイヤーと戦える、その権利を得るための予選なのです。
予選から相当熱い展開が予想されますね。
松井 この大会のコンセプトをわかりやすく言うと、少年マンガです。予選を勝ち上がった挑戦者がゲートキーパーに挑む、この時点で同じゲートを戦った相手は仲間なんです。予選で敗退して挑戦者になれなかった参加者も、自分たちの気持ちを背負ってゲートキーパーと戦う挑戦者に頑張ってほしい、という思い入れが芽生えると思うんですね。
予選でライバルだった相手のプライドを背負って強敵に挑む、確かに少年マンガのトーナメントもののような熱量を感じます。
松井 人によって思い浮かべるマンガは違うと思いますが、日本人のカルチャーとして友情トーナメントものは、ある程度浸透しています。有名人が出てきて『ストV』大会を行うような形式のエンタメではなく、参加者全員が本大会でプライドをかけて戦い、それがエンタメになる。それを、この大会を通じて描ければと。
燃える大会を期待しています。ちなみに、一般参加者32×8名は具体的にはどのようにエントリーするのでしょうか?
松井 Red Bullの公式ページからリンクされる参加フォームからエントリーします。あなたはどのトッププレイヤーと戦いたいですか、という形でゲートごとにエントリー可能です。
人数がいっぱいになった場合は、即時締め切りでしょうか?
松井 一旦開けておいて抽選をかけますが、あまりにも溢れるようならばクローズしようと考えています。いきなり32人の枠に100もエントリーが舞い込むようなら、その時点で締め切りですね。
すぐに埋まってしまいそうなので、挑戦者の方には早めにエントリーしないと、ですね。
松井 エントリー数には偏りが出ると思われるので、そこは難しい部分ですね。逆におもしろくなる部分もあると思います。例えばネモがゲートキーパーとして参戦した場合ですけど、ネモはザンギエフ嫌いで有名なんです。だから世のザンギエフ使いは、ネモをザンギエフで倒すことに圧倒的な喜びを感じる。そうすると、多分ネモの予選ゲートはザンギエフ祭りになる。でも、それを読んだ人がザンギエフに強いキャラをかぶせてくるかもしれない。ネモのもとにザンギエフプールを泳ぎきったザンギエフが来るのか、ザンギエフに強いキャラがくるのか……。
エントリーの時点でそんな駆け引きが(笑)
松井 今まで、一般参加者が予選プールを指定できる大会はごく僅かでした。そこもキャラ読みの要素が入るとおもしろいですし、結果、読みすぎて何も起こらないかもしれない。
本大会だからこその楽しみですね。観客席も用意されているのでしょうか?
松井 もちろん、用意しています。立ち見を合わせれば200人くらいは入れる予定です。イベント会場とは別に100人以上が入れるフリーの対戦エリアも作るので、待機中の参加者や来場者同士での試合も可能です。
最後に、本大会に期待してくれている人にメッセージをお願いします。
松井 参加者の方にまずひとつ。Red Bull 5Gも変則的なルールで、最初はわからないと言われたのですが、やったらわかります。多分、今回もおもしろいです(笑)。だから、ぜひ楽しんで、みんな打倒ゲートキーパーに燃えてください。観客の方たちは気軽に来ていただければ、この日1日みんなで『ストV』を遊んで楽しかったと思えるはずです。プロの方たちは、あなたたちのプライドを見せてください。プロも非プロもプライドがバチバチするようなアツい試合ができたらいいですね。