コラム:「政局秋の陣」カギ握る自民総裁選

コラム:「政局秋の陣」カギ握る自民総裁選
9月11日、自民党総裁選の結果次第では、永田町で多数意見となっている10月衆院解散が、来年に先送りされる可能性が高まるのではないか。写真は昨年6月、都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
田巻 一彦
[東京 11日 ロイター] 自民党総裁選の結果次第では、永田町で多数意見となっている10月衆院解散が、来年に先送りされる可能性が高まるのではないか。
谷垣禎一総裁の立候補断念によって、同党内の長老に支持されている石原伸晃幹事長が総裁選で有力候補に浮上。当選すれば来年度予算編成で自民党の意見を反映させることに重点を置き、早期解散要求の旗を降ろす可能性があるからだ。一方、石破茂前政調会長が当選すれば、民主党との対立が先鋭化し、内閣不信任案の動向が解散の行方を左右する展開になると予想する。
<党員票で優勢な石破氏、長老支持の石原氏は国会議員票ではリードか>
自民党総裁選(14日告示、26日投開票)は7日に町村信孝元外相、10日に石破氏が出馬表明し、11日午後に石原氏、12日に安倍晋三元首相が立候補を表明する予定。林芳正政調会長代理も立候補を検討している。
今回は国会議員票の200票を上回る300票が党員票として47都道府県連に配分され、計500票の過半数を得た候補者が当選する。政界関係者によると、マスコミへの露出度が高く地方で人気の石破氏が、党員票で優勢とみられている。ただ、候補者が乱立しているため、1回目の投票で過半数を占める候補者はいないとみられ、上位2人が国会議員票だけの決選投票に進む。
石原氏は同党内の派閥領袖クラスを中心に長老の支持が厚く、国会議員票の争いになった場合、石破氏を破って当選する可能性もある。石破氏は安倍氏と決選投票での連携を図っており、1回目の投票で2位に差を付けて1位になれば、決戦投票でも優位に立つという見方もある。いずれにしても石原氏、石破氏を軸にした選挙戦になると予想される。
<石原氏当選なら、民自公の連携重視か>
もし、石原氏が新総裁になれば、消費税増税法案の取り扱い時から民主、自民、公明による「3党合意」を重視してきた自民党長老の意見が影響力を持ち、来年度予算編成でも自民、公明の意見が反映されやすい仕組みを模索すると予想する。この枠組み作りが成功すれば、10月召集の臨時国会で2011年度補正予算編成を3党中心に手掛け、同時に赤字国債の発行を認める特例公債法案に自民、公明が賛成するパターンがありうる。
このケースでは、事実上、自民党が早期の衆院解散の要求を取り下げ、解散は来年度予算編成終了後の来年1月か、予算案成立後の来年4月以降に先送りされる可能性が高まる。自民党にとっては、早期解散よりも予算編成に関与することで実質的な利益を得る戦術と言える。
<石破氏周辺に強い民主への対決色>
一方、石破氏を支持する議員の中には、民主党との対決色を鮮明にし、とことん民主党政権を追い詰める戦術への支持者が多い。石破新総裁の登場となれば、いきなり野田佳彦首相との対決色が鮮明になり、特例公債法案の成立メドは当面、立たなくなる公算が大きくなると予想する。11月になっても赤字国債発行のメドが見えないケースも現実味を帯びてくるだろう。
自民党は同法案の成立と引き換えにした衆院解散を求めるだろうが、野田首相は話し合い解散に応じないと予測する。民主党内は早期解散反対の声で埋め尽くされており、野田首相が解散を強行しようとすれば、閣議で解散に同意する署名を拒否する閣僚が続出することも予想され、行き詰って総辞職に追い込まれるリスクも出てくる。
さらに特例公債法案を野党が人質にして、予算執行ができなくなって年金の支払いなどで混乱が生じそうになれば、世論の批判が野党に向くと見て、政府・民主党が話し合い解散に応じないという構図も出てくる。
<解散のカギ握る民主党内の反野田グループ>
ここで事態が急転するとすれば、民主党内で野田首相への離反が表面化し、内閣不信任案が民主造反派の賛成で可決されるケースだ。解散が秋の臨時国会であるとすれば、話し合い解散よりも民主造反派による内閣不信任案可決の方が可能性が高いとみる。
このように自民党総裁選の結果は、「政局秋の陣」の行方をガラリと変える要素になる。「政局はネタにならない」とたかをくくっていると、東京市場にも強い風雨が襲ってくるかもしれない。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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