住まいの雑学
37
西村 祥子
2011年7月1日 (金)

【エコチル調査】環境が子どもの健康に与える影響

近年、子どもを取り巻く環境は大きく変化し、子どもたちの健康に対する不安が広がっている。小児喘息や、ダウン症などの先天性疾患、肥満などの問題を抱える子どもたちが、増えているという報告もある。例えば小学生の喘息被患率は、ここ20年ほどの間に約4倍にまで増加。ほかにも、男児の出生率が低下傾向にあったり、精神神経発達障害の子どもが増加傾向にあったり。改めてデータを見てみると、「時代の変化」では片づけられない「何か」の存在を感じざるを得ない。


<わが国における児童等の喘息被患率の推移:エコチル調査ホームページより>

こうした現象を引き起こす原因については、はっきりとした答えが出されていないのが現状だが、その一方で、子どもたちの生活環境が何らかの影響を与えているのではないかと考えられている。そこで今、世界中の多くの国で、子どもたちを対象にした、大規模な疫学調査が行われているのだ。その大規模調査の日本版が、今年からスタートした「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査:「エコチル」とは「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせてつくられた愛称)」だ。

エコチル調査では、赤ちゃんがお母さんのお腹にいるときから13歳になるまでの長期にわたり、定期的に健康チェックを行い、特に環境中の化学物質が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを調査。子どもの成長や健康に影響を与える物質を探し出し、使用を規制するなどの対策を講じることで、子どもが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現をめざす。

実際に調査の対象となるのは、全国15の調査対象地域に住む、今年8月1日以降に出産予定のお母さん・お父さんと誕生するお子さんで、今年から3年をかけて、約10万組の親子に参加を呼び掛ける。具体的な調査内容は、定期的な質問票調査のほか、妊娠中の採血や採尿、生後1カ月での母乳採取など。

調査の流れ:エコチル調査ホームページより<調査の流れ:エコチル調査ホームページより>

調査に参加すると、定期健診で子どもの健康状態についていろいろと確認・相談できるほか、専用窓口で子育てに関する相談も受け付ける。必要に応じた専門家の紹介や、各種のお役立ち情報の提供も予定されているので、興味のある人は「エコチル調査」ホームページをのぞいてみて。「全国の拠点」ページから、全国15のユニットセンターのページにリンクし、調査地域の詳細情報をチェックできる。

子どものための環境といえば、私たちの「住まい」も重要な要素の一つ。1990年代に社会問題となった「シックハウス症候群」のように、住まいが人に与える影響は決して小さくない。シックハウスの原因として騒がれたホルムアルデヒドは、今でこそずいぶん規制が進んでいるが、もちろん、それ以外にも有害な化学物質は存在する。この調査が実を結べば、住まいはもっと安心で安全な、子どもたちの居場所になるはずだ。

今までに類を見ない規模となる「エコチル調査」。出産予定やエリアなど、条件が整う人はぜひ参加して、未来の子どもたちのために協力してほしい。
また、参加者はもちろんのこと、出産の予定のない人や男性は、「サポーター」として調査活動を応援する方法もある。メールマガジン配信で、環境や健康に関する情報もゲットできるので、気になる人は登録しておいて、調査の進捗をチェックしてみては?

■子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
HP:http://www.env.go.jp/chemi/ceh/
問い合わせ先:環境省環境保健部環境リスク評価室

前の記事 人とペットの豊かな暮らしを考える 日本初の国際フェア開催!
次の記事 会社員家庭にお手伝いさん!? 家事代行サービスが密かに人気!
SUUMOで住まいを探してみよう