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乳がん患った樹木希林 「がんで死亡が一番いい。用意できる」

 メスも麻酔も使わない、痛みや熱さなどの苦痛もない、ただ横になっているだけで済んでしまう治療——。その病院では、日本で唯一、そんな最先端のがん治療を行っている。樹木希林(69才)がその治療と出合ったのは、2007年ごろに乳がんが再発したときのこと。その後、放射線のピンポイント照射で、見事がんが消失したというのだ。

 2004年の夏の終わりに乳がんが発覚した樹木は、2005年1月に右乳房の全摘出手術を受けた。医師と手術方法について相談した際、部分切除する温存療法にするか、全摘にするか問われ、「先生のやりやすいほうで」と、全摘を選んでいる。

 それから2年ほど経った2007年ごろ、同じ場所でがんが再発。全摘後も一部残った乳腺にがんが発生したり、関連部位にがんが転移することもあり、この場合も、乳がんと呼ばれる。

 そのため、樹木は、鹿児島県にある『UASオンコロジーセンター』に転医した。鹿児島空港から車で約40分。県内一の繁華街にほど近い場所に立つ6階建てのこぢんまりした建物にある、2006年10月開院の比較的新しい病院だ。

「この病院で行っているのは従来X線による放射線の『四次元ピンポイント照射療法』というものです」

 と話すのは医療ジャーナリストの田辺功さん。これまでは、病巣に対して四方八方から放射線を立体的にあてる『三次元照射』だった。

 その第一人者で、『UAS』のセンター長・植松稔氏が、呼吸によるがんの位置変化を追跡するという時間軸を加えた『四次元ピンポイント照射』の理論を構築した。その植松氏はこんな信念を表明している。

「現在、放射線治療は“手術せずにがんを治す”という本来の目的に向かって、大きく変貌を遂げている真っ最中。まだまだ前進の余地があるなか、昨日の標準を明日の理想に掲げている場合ではありません。そして、そのためにも、忘れてならないのは、“医療の真実は、学会場でなく臨床現場にある”ということです。何をしたらどうなったのか、現場での判断が最重要です」

 樹木は自分が体験した治療法を周囲に紹介はするものの、決して無理強いはしない。樹木が言う。

「それは責任が持てない。要するに個々のがんの質が違うからね。人はがんと向き合って自分を知るということじゃないかと思うんです。それがわからなくては、いっくら良い治療法があっても、それはただただ一過性のものになるだろうと」

 現在も『UAS』に定期検診に通っているという樹木。再発した乳がんを四次元ピンポイント照射で消したものの、その2年後、今度は副腎や脊椎に転移が見つかったという。

「とりあえずそこ(乳がん)は治療できたけど、私はがんができる体質になっちゃってる。(がんとは)つきあいたくないけど、出てくるものはしょうがないですよね。私の場合、日々の生活の仕方は、がんを受け入れているという形なんですよ。

 私の考えでは、がんで死ぬっていちばんいいと思うんです。用意ができるじゃないですか。それぐらいの感じで生きています」(樹木)

※女性セブン2012年9月27日号

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