マネーと制度
連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年5月28日 (水)

DIY型で空き家を解消。国土交通省が「空き家を活用するための知恵袋」発行

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【今週の住活トピック】
「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の最終報告を受けて「個人住宅の賃貸活用ガイドブック」(「空き家」を活用するための知恵袋)を作成/国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000022.html
http://www.mlit.go.jp/common/001039342.pdf

深刻化する空き家問題。国土交通省の有識者による検討会が最終報告書を公表したが、それを受けた「個人住宅の賃貸活用ガイドブック」(「空き家」を活用するための知恵袋)が作成された。空き家を解消するための具体的な指針を分かりやすく解説したものだが、どんな解決法を提案しているのだろうか。

個人住宅の空き家を賃貸活用する知恵とは?

空き家が年々増加しているが、なかでも、賃貸用でも売却予定でもない一戸建ての空き家が課題になっている。つまり、個人で所有しているが賃貸も売却もしていない一戸建ては、誰も住んでいないので防犯や防災、衛生、景観上で問題になりがちなのだ。

そこで、有識者による検討会の提言を受けて、国土交通省が「個人住宅の賃貸活用ガイドブック」を発行した。本来は、全国の宅地建物取引業者や地方自治体に向けて制作されたもの。しかし、空き家を抱えている個人所有者にも、ぜひ知っておいてほしい内容なので、詳しく紹介しよう。

まず、ガイドブックでは、空き家の所有者の不安を取り除く知恵を提示している。
「人に貸すことなんて考えたことがない…」→賃貸にすれば家賃収入が得られる
「一度貸したら戻ってこないのではないか心配」→定期借家契約という契約方法が有効
「入居者のマナーや家賃の滞納が心配」→管理会社などプロを活用する
「古いので大掛かりなリフォームが必要だと思う…」→借主にリフォームしてもらう契約方法もある

空き家所有者が知っておきたいポイントとしては、プロの活用、定期借家、新しい賃貸契約の3つになるだろう。
借主の募集や管理については、仲介会社や管理会社などのプロに委託したり、行政などの公的機関のサービスを利用したりする方法もある。特に人口が減っている自治体では、新しい住民を呼び込もうと、積極的に空き家の活用に取り組んでいる事例が多い。地域の空き家の情報をデータベース化し、自治体のサポート体制などの情報も盛り込んだ「空き家バンク」で情報を発信し、借主を広く集めようとしている。

再び住む可能性があるなら、「定期借家契約」を活用する方法もある。定期借家契約とは、あらかじめ賃貸借契約の期間を定めておき、期限になったら契約を終了させることができる契約形態だ。(定期借家については、筆者の記事「『定期借家』ってどんなもの?誰にどういったメリットがある?(https://suumo.jp/journal/2014/04/30/61848/)」で詳しく説明している。)

一番問題になるのが、リフォームの費用負担だろう。
空き家になる一戸建ては、老朽化している場合が多い。賃貸化するには、大掛かりなリフォームが必要な場合も。「そのリフォーム費用が捻出できない」、「リフォーム費用を支出して賃貸化しても、その費用を回収できるか不安」という所有者も多いと考えられる。

そこで、検討会が提言したのが、新しい契約形態だ。

新しい賃貸借の契約形態とは?

従来の契約形態では、貸主となる個人住宅の所有者が、費用を負担してリフォームを行うことになっている。一方で、従来の契約形態では、借主は住む家を改装できない、改装が許されたとしても退去時に元に戻す義務があるといったことから、自分の好みに室内を改装したくてもできないという課題があった。

そこで登場したのが、「借主負担DIY型」と呼ばれている新しい契約形態。基本的な考え方は、家賃を相場より低く設定し、その浮いた分の費用で借主がリフォームやDIYによる改装をできるようにし、改装した部分は元に戻す必要がない(手を加えた状態のままで退去)というもの。

ガイドブックには、貸主と借主の双方のメリットして、次のようなものを挙げている。
●貸主のメリット
・現状のままの状態で貸すことが可能となる
・借主が自費でDIY等を行うことから、長期間住んでくれる可能性がある
・退去時には、貸出時よりも設備等の価値が上がっている可能性がある
●借主のメリット
・持ち家のように自分の好みにできる
・自費でDIYするから賃料を安くできる
・退去時に原状回復費用を取られない

「借主負担DIY型」には、不具合なく住める状態のものを賃貸する「現状有姿型」と、故障や不具合など修繕を要する箇所がある「一部要修繕型」がある。一部要修繕型の場合は、貸主が修繕をしない代わりに、家賃はさらに引き下げて設定し、借主が自身で修繕をしてから住むか、不具合を承知でそのまま住むかを選べるというスタイルになっている。
(新しい契約形態については、国土交通省に取材した筆者の記事「国が新しい契約形態を提示。今後はカスタマイズ、DIY賃貸が増える!?(https://suumo.jp/journal/2014/04/02/60278/)」で詳しく説明している)

空き家に関する取り組みは、徐々に増えてきている。特に人口が減っている地方自治体は、住民を呼び込むきっかけにしたいとあの手この手を検討している。ガイドブックで紹介されているような賃貸化による定住者の呼び込みのほかにも、定住前の体験滞在施設を用意したり、貸別荘のように短期間だけ貸したりと知恵を絞っている。今現在、特に何もしていないままの空き家を所有している人がいるならば、この機会にパンフレットで学んでみよう。

(空き家の現状については、筆者の記事「地方でも都市部でも空き家が増加。なぜ増える?どんな問題が生じる?(https://suumo.jp/journal/2013/12/11/56107/)」で詳しく説明している)

https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
連載 今週の住活トピック 住宅ジャーナリストが住まいの最新ニュースを紹介&解説する連載。毎週水曜更新の「今週の住活トピック」。
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