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ガスを使ってスペースデブリを掃除する手法を、
ボーイングが提唱

2012.12.10

現在、衛星軌道上を多数のデブリが周回しており、大きな危険となっている。
現在、衛星軌道上を多数のデブリが周回しており、大きな危険となっている。
Photo Credit: NASA debris site nasa.gov

宇宙空間をただようゴミ、スペースデブリは宇宙産業にとって深刻な問題だ。機能が停止した人工衛星や、ロケットの部品、その他もろもろの破片が、デブリになって地球の衛星軌道上を回っている。デブリの速度は秒速数キロメートルもあり、数ミリメートル程度のデブリでも大砲で撃たれるほどの衝撃になるという。実際に衝突すれば、宇宙飛行士の人命に関わるのはもちろん、人工衛星の損害も膨大だ。
デブリを掃除するための手法は、以前からさまざまな研究機関が提案を行ってきた。代表的なところでは、伸縮性アームでデブリを除去する小型衛星や、レーザーを小さなデブリに照射する方法などがある。使用済みの人工衛星を別の軌道に移し、大気圏に突入させて燃やすなどの対策は取られるようになってきているが、すでに存在するデブリを効果的に除去、回収できる方法はまだ実用化されていない。
2012年9月にボーイング社が特許を申請したのは、ガスを使う方法だ。まず、キセノンやクリプトンといった不活性ガスのタンクを搭載したロケットを打ち上げる。打ち上げる高度の目安は、カーマン・ラインといわれる約100キロメートル。軌道の頂点でロケットのペイロードを開き、特殊なノズルで10トンほどのガスを噴射する。この高度で噴射すると、ガスは高度600キロメートルにまで達するという。ガスは数秒で霧散してしまうが、噴射直後には十分な密度があり、これによって秒速7.8キロメートルで軌道上を移動しているデブリを、秒速0.2キロメートルにまで減速できる。速度を落として衛星軌道にとどまれなくなったデブリは、上層の大気で燃え尽きると予測されている。通信衛星や測位衛星など人工衛星の打ち上げはますます増えているが、今後はこういったデブリ除去、回収のビジネスも大きな市場となっていきそうだ。

(文/山路達也)

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