■G大阪に勝利し、勝点3差で広島を追う仙台

前半戦を首位で折り返し、後半戦は広島と激しい首位争いを繰り広げてきた仙台。仙台の手倉森誠監督は「9月を制するチームがリーグを制する」と発言し、9月の戦いに臨んだが、首位攻防の第25節広島戦は1-2で敗れ首位の座を広島に明け渡し、9月29日の第27節清水戦は、一度も勝利を挙げたことの無い鬼門のアウトソーシングスタジアム日本平で1-3と退場者を出す逆転負けを喫し、勝点差は5に開いた。「9月を制することはできなかった。『もうダメだ』ではなく、『まだダメだ、今のままじゃ』という気持ちに切り替えて、苦しんだ分10月に力を出したい」と手倉森監督は清水戦後に、諦めずに広島に食らいつく決意を見せた。

負ければ優勝は厳しくなる状況で臨んだ第28節G大阪戦。G大阪の攻撃力の高さを考慮し、いつもよりDFラインの位置を下げて、自陣で守備ブロックを作ってボールを奪取し、ロングボールでG大阪DFラインの背後を突いてチャンスを作った。そして76分仙台は攻勢に出た中、富田晋伍がゴール前に出したボールをG大阪GK藤ヶ谷陽介がファンブル。こぼれ球を拾った赤嶺真吾がゴール前に入ってきた梁勇基にパス。梁は無人のゴールにシュートを決めて先制した。

さらに82分DFラインの背後を取った左サイドバック朴柱成がゴール前にクロス。ゴール前ニアサイドで赤嶺がDFを引き付けて、実際クロスに合わせたのは途中出場の長身FW中原貴之。低い姿勢でのヘディングシュートがゴールネットを揺らし、勝負を決めた。終了間際に1点を返されたが、J1残留争いの中背水の陣で臨んだG大阪に2-1で勝利。首位広島が引き分けたため、勝点差を3に縮めることに成功した。

手倉森監督は試合前「10月を逆転の月にしよう」と選手に話したという。「今日は前節の悔しさ半分と何が何でも優勝したいんだという気持ち、我々は諦めていない、タフに戦ってみせるんだという気持ちが、今日戦い抜いて見せたことに繋がった」と手倉森監督は語った。選手たちは前節の反省から、前半得点が取れなくても焦れずに戦い続け、優勝を諦めない姿勢を見せることができた。18,003人と満員に近い観客を集めた試合だったが、仙台サポーターも優勝したいという気持ちを前面に出し、選手を強力に後押しする雰囲気をつくっている。仙台は首位広島にチーム一体となって必死に食らいついている。

■ゲームコントロールのレベルを上げることが一番の課題

ただ、9月の2つの敗戦はいずれも反省すべき内容で、優勝に向けての課題も見えた。

仙台は試合運び、手倉森監督のよく使う言葉を使うならば「ゲームコントロール」を大事にするチームだ。最も反省すべきは、敗れた試合でそのゲームコントロールを失ってしまったことだ。広島戦は攻撃がうまく回り始めていた時間帯に、守備で隙を見せてしまい失点し、ゲームの流れを失った。清水戦は相手の激しいボディコンタクトに焦れて、退場者を出して自滅した。仙台の強みは、刻々と変わるピッチ上での状況に応じて、前からプレスに行くのか自陣で守備ブロックを築くのか、攻撃に人数を割くのか割かないのか、的確な選択をして戦えることであるが、その強みを出せなかった。

J1優勝争いに生き残るためには、ゲームコントロールのレベルを、もっと上げていかなければいけない。今後J1優勝争いが進むにつれて、予想もし得ないアクシデントが起きるのは間違いない。清水戦のように退場者を出すこともあるかもしれないし、現在累積警告3もしくは7の選手も多いことから、主力選手を複数人欠く試合があるかもしれない。審判の判定に泣くこともあるかもしれない。いつ何時、どんなことが起きたとしても、ゲームコントロールを失わず、チーム内での意思統一を図らねばならない。