こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

LAMA 『Modanica』



LAMA



[ interview ]

元スーパーカーのフルカワミキとiLLこと中村弘二、そして、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers/toddle)、agraphこと牛尾憲輔から成る話題の4人組グループ、LAMA。2011年にファースト・アルバム『New!』で処女航海をスタートさせた彼らが1年の歳月を経て、いよいよ未開の地を行く新作『Modanica』を完成させた。この作品では、ロックとダンス・ミュージックの橋渡しをしながら、そのどちらにも寄りかかることなく、エレクトロニックなノイズ、ドローンをポップ・ミュージックへと昇華。彼らが考える2012年のポップ・モダニズムが閉塞気味の日本の音楽シーンを鮮やかに切り拓く一枚となっている。



何が出来るかわからないスリル



――今回のアルバム『Modanica』はロックのようでいてロックではない、ダンス・ミュージックのようでいてダンス・ミュージックではない、LAMA固有のサウンドを確立した作品だと思います。このサウンドを生み出すために、今回は4人が出したフレーズのループを積み重ねて、螺旋を描いて昇っていくように曲を作り上げていくというユニークなレコーディングを行ったそうですね。

中村「そうですね。まず、LAMAはロックンロールとエレクトロニック・ミュージック、bloodthirsty butchersとagraphという極端な要素が共存しているバンドなんですね(笑)。だから、前作はロック的な楽曲はロックの作り方、エレクトロニック・ミュージック的な楽曲はエレクトロニック・ミュージックの作り方でレコーディングしたんですけど、そのやり方だと曲によってアプローチを変えることになるから、時間と労力がかかる。だから、今回のアルバムでは4人のうちの誰かが出した音をループさせて、それに対して別の誰かが出した音をループさせて、音を重ねていくというレコーディング方法を採用したんです。そうすることで、両極の要素をひとつにすることができるし、作り手としては何が出来るかわからないスリルを楽しむこともできるんじゃないかなって。

――普段、agraphとして牛尾君が作っている音楽はループが土台になっていると思うんですけど、作り方という点でagraphとLAMAはどう違うんでしょうか?

牛尾「ループが土台になっているという意味でagraphと今回のLAMAは共通しているんですけど、agraphの場合は自分ひとりで作り込んでいきながら、塩で酒を飲むような微妙な差異――例えば、ある瞬間にハイハットが入る入らないっていう違いを楽しむ作り方であるのに対して、LAMAの場合は自分以外の音が入ることも踏まえて、あえて余白を残すんですよね。しかも、その余白に3人の音が入ることでコミュニケーションが生じて、その後、自分が出す音も変化していくので、LAMAの音楽制作は自分にとってまったく新しい体験なんです」

――そして、もう一点。今回の作品は、楽曲の輪郭を形作るヴォーカルやメロディー、リズムだけでなく、音と音の間や音の背後を埋めるエレクトロニックなノイズやアンビエンスが徹底的に作り込まれています。例えばシングル“Parallel Sign”のイントロは、そのノイズやアンビエンスなくしては曲として成立しないでしょうし、今回のアルバムは、そういった微細なノイズやアンビエンスが曲のアレンジに組み込まれているという意味で重要な役割を果たしていますね。

中村「僕らは、それを(〈生地〉を意味する)テクスチャーと呼んでいるんです。前作では、そのテクスチャーをギターで作り出したりもしたんですけど、ギターだと音が厚すぎて、存在感が前に出てしまう。でもエレクトロニック・ミュージックの世界では、それをプログラミングで表現することができるので、今回はそのテクスチャーをちらつかせるようなタッチでやってみたかったんです」

――そのテクスチャーが活かされているアルバム、読者のヒントになりそうなアルバムを例に挙げてもらえますか?

中村「数作前のアニマル・コレクティヴとか、アンディ・ストットとか」

牛尾「個人的に、ベルリンのレーベル、ストロボスコピック・アーティファクツにはすごい影響を受けていて。ルーシーの『Wordplay For Working Bees』とか」

中村「あと、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとかアクトレス。それと僕らとやってることは全然違うけど、Borisの『New Album』はノイズ、インダストリアルを取り込んだポップ感という意味で、斜めの角度からポップに切り込んでいくアプローチには共感を覚えますね」

――つまり、エレクトロニックなノイズ、ドローン、アンビエントを新しい表現に昇華したアーティストにシンパシーを感じていると。ただ、LAMAの場合はそのテクスチャーをポップソングのフォーマットで、さらには生音とエレクトロニクスを交えながら用いているところが今回のアルバムをスリリングなものにしていると思います。

牛尾「一生懸命みんなで家具を作って、その写真を撮るんだけど、俺たちが凝ってるのはその後ろに写ってる壁紙だったりして(笑)。その壁紙が〈もうちょっとボケてるといいんだけどなー〉っていう作業を延々とやってる時期はありましたからね(笑)。まぁ、このアルバムをmp3で聴いたら音の細部は潰れちゃうんですけど、もっと高音質のCDだったり、WAVファイルで聴いた時に耐え得るものにはなっていますね」

中村「昔だったら、ドラマーの細かいハイハットだったり、ギターのリヴァーブだったり、アナログが持ってる揺らぎがそういうテクスチャーの役割を果たしていたと思うんですけど、いまはノイズのないコンピューターのデジタルな音で録っちゃうから、それなら、今回のアルバムではデジタルなりの表現を極めたいなって」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年12月12日 18:01

更新: 2012年12月12日 18:01

インタヴュー・文/小野田雄