「乗り遅れるな! ソーシャルおじさん増殖中!

最近、「仕事」とか「働き方」について話し合う機会が多い気がします。インターネットの普及で、ソーシャルメディアをはじめ多くの人に出会える機会を持ち、その結果、「生き方」について考える人が増えてきて、その波及として「仕事」や「働き方」を考えるのかもしれません。

2011年、公開された米国ドキュメンタリー映画『Jiro Dreams of Sushi』(邦題名『二郎は鮨の夢を見る』)は、東京の寿司屋「すきやばし次郎」の店主で寿司職人、小野二郎を追った作品です。彼の仕事に対する向き合い方は、海外でも評判となり、日本でも2月に公開される予定です。いわば逆輸入です。

彼の言葉に次のようなものがあります。「仕事というのは自分に合わせるんです。これが合う、これが合わないと言っていたら、合う仕事なんてありませんよ」。今の自分の仕事が面白くないと感じたり、苦痛を感じたりする場面で人は「この仕事は自分に合ってない」と決めることで、感情の折り合いをつけるものです。そして「自分に合う仕事はほかにある」とまだ見ぬ宝島を夢想してしまうものです。

そこで先ほどの名言です。今、目の前にある仕事を「そこにあるもの」として好きか嫌いか判断するのではなく、「したくなる仕事」に変えてしまえば、それは自分に合う仕事になります。仕事の種類や質ではなく、いま目の前にある仕事とどう向き合うのか、それこそが仕事を成功させる唯一の方法なんじゃないかとすら、僕は思っています。

「乗り遅れるな! ソーシャルおじさん増殖中! 」(ソフトバンク新書/徳本昌大、高木 芳紀)を読むと、そんな仕事の向き合い方を垣間見ることができます。80才を超える小野二郎さんのような輝きではありませんが(失礼!)、文字通りおじさんたちが、新しいことに面白がりながら向き合い、形にしていくプロセスが「今」の状態で読めます。

本書に登場する渋谷の文房具「つばめや」の高木芳紀さんは、当初雑貨の仕事ができると思って入社しましたが、Webサイトのリニューアルを担当することになります。やりたい仕事とはほど遠い。その上競合店の出店で店舗そのものの撤退話まででてきたそうです。そんな時も高木氏は「状況を悲観しても何も生まれない。どうせやるなら楽しまなきゃソンだ」と仕事に取り組み、成功を果たします。

IT企業から一転、レストランを営むことになった飯島邦夫さんは、ソーシャルメディアを活用して集客に成功していきますが、当初は用語がわからず苦労したそうです。完全には理解できなくても、とにかくやってみようと動きながら用語を把握していきます。

7人のおじさんたちの奮闘ぶりを読んで、僕が感じたのは仕事を「したくなる仕事」にしていく姿。ソーシャルメディアの使いこなしよりも、その向き合い方に心から共感できます。

nkmr編集長 中村祐介


乗り遅れるな! ソーシャルおじさん増殖中! (ソフトバンク新書)