国内

ネットの“愛国者” 敵に回せば面倒も味方にしたら頼りない

 自民党総裁の安倍晋三氏がフェイスブックを積極活用し、一部のネットユーザーに熱く支持されている。これは危険な兆候だ。なぜか――ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。

 * * *
 最近、安倍晋三氏のフェイスブックが異様に盛り上がっている。11月に入ってからほとんど毎日エントリー(記事や写真のアップ)があり、それに対して毎回数千人以上が「いいね!」を押し、数百人以上が支持のコメントを書き込んでいる。

 その数は非常に多いのだが、韓国批判やマスコミ批判の記事――たとえば、李明博(韓国大統領)の竹島上陸、『とくダネ!』の司会者、小倉智昭氏らがかつての安倍氏の病気を揶揄したこと、『みのもんたの朝ズバッ!』がNHKアナの痴漢行為を伝える時になぜか安倍氏の顔写真を映したことなどに抗議する記事では、「いいね!」は1万余りから2万数千に、コメントは1千余りから数千にハネ上がる。

〈マスコミ報道との戦いです。私は皆さんと共に戦います〉〈Facebookを通じて「私は一人じゃない」と連携していく事によって、私達は日本を変える事もできます〉など、安倍氏からネットユーザーへの連帯の呼び掛けも極めて熱い。熱狂的な支持者が大挙して押し寄せた決起集会の様相を呈している。11月24日には、安倍氏の支持層が多い傾向が強いとされるニコニコ動画で党首討論するよう野田佳彦氏に呼び掛けた。

 自民党総裁就任以降の安倍氏が強気の発言を繰り返している背景のひとつには、こうしたネットの支持があると思われる。だが、ネットユーザーの支持を国民的支持と勘違いすると失敗する。

 最近では片山さつき氏だ。NHKの報道内容が韓国寄りであると批判し、音楽番組でK-POPが頻繁に登場する点を挙げて“韓流重用”だと国会で批判した。生活保護制度の改正を訴える際には、母親が支給を受けていたお笑い芸人・河本準一氏の実名を挙げた。河本氏には扶養義務があり、その能力もあるのに母親が不正受給していると批判したのだ。いずれもネット上で大騒ぎになっていた案件である。

 一連の主張や手法を疑問視する声が多いなか、ネットでは「愛国者」と持ち上げられ、「応援するデモ」まで行なわれ、片山氏自身も駆けつけて参加者を激励した。だが、彼らの多くはネトウヨ(ネット右翼)と見られ、片山氏はこのことを知っているユーザーからは呆れられている。

 熱心なネットユーザーはボルテージが高く、頻繁に書き込みを行なうので、人数が多いと錯覚してしまうが、実数は少ない。敵に回すと“荒らし”を行ない、デマを拡散するなど面倒だが、味方につけても頼りない存在なのだ。

 ネトウヨの特徴である韓国批判とマスコミ批判が強く支持されていることを考えると、安倍氏のフェイスブックに集まる人たちの政治的傾向にはかなりの偏りがあると考えたほうがいい。にもかかわらず、その声を一般国民の声と勘違いし、彼らに煽られ、彼らに阿(おもね)る言動を強めれば、安倍氏は「裸の王様」となりかねない。政治家はネット世論を過大評価しないことが肝要だ。

※SAPIO2013年1月号

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン