内閣府は、平成25年度の「国民生活に関する世論調査」の結果を発表した。今後の生活について質問したうち、「老後は誰とどのように暮らすのがよいか」という項目には、子どもとの同居と回答した割合より、別居や近居と回答した割合のほうが高いという結果になった。
「国民生活に関する世論調査」は、現在の生活や今後の生活についての意識、家族・家庭についての意識など、国民の生活に関する意識や要望を種々の観点でとらえ、広く行政一般の基礎資料とするために、内閣府が行っているもの。今回は、平成25年6月6日~23日、全国で20歳以上の1万人の国民を対象に、個別面接聴取法で調査を行い、6075人の有効回答を得た。
調査結果のなかから、住生活に関する項目に注目して、分析してみよう。
まず、現在の生活については、71.0%が「満足」(「満足している」10.3%+「まあ満足している」60.7%)と回答した。さらに、生活の各面での満足度を聞いたところ、「住生活」では81.1%(「満足している」24.1%+「まあ満足している」57.0%)となり、「資産・貯蓄」42.5%、「所得・収入」47.9%、「自己啓発・能力向上」60.0%、「レジャー・余暇生活」61.5%、「耐久消費財」75.6%よりも高い満足度となった。最も満足度が高かったのは、「食生活」の88.3%だった。
今後の生活において、特にどのような面に力を入れたいと思うか聞いたところ、「レジャー・余暇生活」の割合が36.9%と最も高く、「所得・収入」32.3%、「資産・貯蓄」30.4%、「自己啓発・能力向上」27.2%、「食生活」26.7%の順となった。「住生活」は24.2%だった。
老後は誰とどのように暮らすのがよいと思うか聞いたところ、「息子(夫婦)と同居する」という回答は12.6%、「娘(夫婦)と同居する」は5.8%、「どの子(夫婦)でもよいから同居する」は5.8%と、同居支持派は合わせて24.2%だった。
一方、「子どもたちとは別に暮らす」という回答が最も多く、別居支持派は34.2%。近居支持派は、「息子(夫婦)の近くに住む」は8.3%、「娘(夫婦)の近くに住む」は7.2%、「どの子(夫婦)でもよいから近くに住む」18.2%と合わせて33.7%だった。
ただし、この傾向は住んでいる都市の規模や年代などによって異なる。
都市規模では、大都市で別居支持派が多いのに対し、小都市や町村では息子と同居支持派が多い。
年代別では、息子や娘との同居支持派は、60代と70歳以上で多く、特に70歳以上で顕著だ。しかし、20代、30代、40代では、いずれかの子と近居支持派が多く、40代、50代、60代では別居支持派が多くなる。
興味深いのは、住宅の形態でも違いがあることだ。有効回答の8割を占める「持ち家一戸建て」に住む人は、同居支持派が多い。一方、持ち家・賃貸に限らず集合住宅(マンション等)に住む人は、別居支持派が多い。持ち家一戸建てが、都市の規模が小さいエリアに多いということもあるだろうが、住宅の床面積が共同住宅に比べて広いこと、二世帯住宅への建て替えなどがしやすいことなども、影響していると考えられそうだ。
調査結果では、若い世代ほど近居支持派が多いという傾向が見られた。このように、同居するか別居かという選択肢だけでなく、近居するという選択肢が最近注目されている。近居であれば、親と子どもの世帯間の助け合いや相互の見守りがしやすくなるからだ。
実際に、親世帯が住む同じ団地内の中古住宅を子ども世帯が購入したり、同じ新築マンションの2住戸をそれぞれ親と子ども世帯で購入するといった、近居スタイルの事例もよく耳にする。
また、UR賃貸住宅では、「近居促進制度」を9月1日から本格的に導入する。親子2世帯などが同一駅圏のUR賃貸住宅に近居する場合、新たな入居世帯の家賃を5年間5%割り引くものだ。こうしたニーズの多様化に対応した新しい取り組みが、今後も増えてくると思われる。