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意欲的ではあるけれど……

ASUS(エイスース)が「PadFone 2」を国内で販売を初めておよそ1ヶ月経ちました。通信事業者(キャリア)を通さないで販売されるSIMロックフリー端末は日本では非常に珍しく、タブレット状のドッキングステーション「PadFone 2 Station」と組み合わせるとタブレット端末としても使えることと併せて非常に注目を集めている機種でもあります。

しかしながら、このPadFone 2、正直言って誰に売りたいのか分からないし、どうやって売りたいのか見えてこないのです。

そこで、報道関係者向けの説明会に参加したり、短期間ながら同機種を使ったりする中で、PadFone 2についてあれこれ考えてみました。

■周波数帯的にはSoftBankで使うこと前提?でも……
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PadFone 2の仕様

PadFone 2本体は、W-CDMA(UMTS)規格の900MHz帯と2100MHz(2.1GHz)帯に対応しています。前者はソフトバンクモバイルが提供する「SoftBank 3G」の「プラチナバンド」、後者はドコモの「FOMA」と「SoftBank 3G」の「メインバンド」に対応しています。

対応周波数帯を見る限り、ドコモで使うよりもSoftBankで使った方が良いように見えます。実際、ASUSはSoftBankと取り扱いについて交渉していたようですが、折り合いが付かず、結局パソコン販路でSIMロックフリー端末として出してみた、といった背景もあるようです。

一番親和性が高いと思われるSoftBankでは、PadFone 2で使えるマイクロUSIMカードの持ち込み新規契約が不可能(通常サイズのUSIMカードなら可能)なうえ、別途マイクロUSIMカードを使う機種を新規契約・機種変更してカードだけ手に入れたとしても、APN(接続先)情報が非公開かつユーザーから見えないようになっているので、電話としてしか使えない、というオチが待っています。

そこで、持ち込み新規契約でも色んなサイズのUIMカードを発行してくれるドコモか、そのMVNO(仮想移動体通信事業者)、ということになるのですが、FOMAプラスエリア(W-CDMA 800MHz帯)が使えないという問題点があります。2.1GHz帯でもある程度エリアは広いですが、それでも山間部を中心にプラスエリア単独のエリアもあります。こういうところで使えないのは正直厳しいですよね……。

じゃあ、海外で活路を見いだすための端末として考えれば、とも思いました。PadFone 2は海外の第2世代規格であるGSMにも対応しているからです。ところが、ASUSは何故かGSMで使える周波数帯を公開していないのです。もし、海外仕様そのまんまであれば850/900/1800/1900MHz帯に対応しているはずなのですが……。

仕様的に最適なキャリアで事実上使えない、という非常に「誰特」な状態なのが現状のPadFone 2なのです。SoftBankが持ち込み新規契約でマイクロUSIMカードに対応してからが、ある意味本番でしょうね……。


■APNのセットアップは案外面倒?
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ドコモminiUIMカードを挿すとmopera UのAPNが自動設定されます

SIMロックフリー端末で避けて通れないと思われるのが、APNの設定。ドコモminiUIMカードをPadfone2に挿入すると、自動的にmopera Uの設定が行われますから、ドコモと直接契約したFOMA回線で、mopera Uを契約していればすぐに問題なくパケット通信ができるようになります。


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それ以外ではAPN設定が必要な訳です

ドコモでmopera U以外のISP(インターネット接続サービス)を使う場合、またはドコモのMVNO回線で使う場合はAPNの設定をしなければならないわけですが、PadFone 2に限らずAndroidの場合、APNの設定が若干分かりにくいので、設定方法を指南する何らかの手立てが必要なのだと思うんです。

ところが、接続方法のサポートがメーカーサイトに見当たらないのが気になります。キャリア製品なら、キャリアが一貫してサポートすれば良いのですが、それを通さないとなると、メーカー側でもある程度サポートをしないといけないと思うのですが……。


恐らくは、そのようなことが良く分かっているユーザー向けの商品、というのはすごくよく分かっているのですが、これで「SIMロックフリー端末は売れない」と安易に結論づけられてしまうようなことがあったとしたら……。

日本市場の場合、売れ行きが悪いと、それに近い傾向の端末がしばらく出てこなくなることもありますから。小型端末然り、QWERTYキー付き端末然り。


■価格はそこまで高くない、と思うが……
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価格は7万円前後で案外意欲的と思うのですが……(写真はAmazon.co.jp)

日本ではPadFone 2はPadFone 2 Stationとセットで販売されていて、価格はメーカー予想価格が7万9800円で、実売7万円前後です。

タブレットとしても使えることや、日本のキャリアが販売するAndroidスマートフォンの通常価格が大体6~7万円程度であることを考えると、超が付くほどの意欲的な価格であると言っても良いでしょう。

ところが、キャリア販売の端末と違い、端末ごとに設定される月額料金の割引が受けられないという大きな問題点があります。2年間使うことを前提にすると、結局AndroidスマホとAndroidタブレットを別々に持った方が総額は安かった、というオチも最悪考えられます。もちろん、安価なMVNOサービスを組み合わせれば充分安価に使えるでしょうけど。

端末としては良い価格なのですが、それに付随する色々な価格を考えると、ちょっと微妙になってしまう、というのが悲しいところです……。


■まとめ
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SIMロックフリーはまだ厳しいのかな……?

実際に説明を受けたり、使ってみたりすると、その良さがとても伝わってくるPadFone 2ですが、日本の携帯電話の売り方を考えると正直厳しいのかなぁ、と思ってしまうんですよね。

パソコン流通のSIMロックフリースマートフォン、という点は意欲的で本当に良いのですが、特にサポート面や契約面を考えると未だに敷居が高いのかなぁ、と。

日本でSIMロックフリー端末と回線を自由に組み合わせて使う、という文化はしばらくは根付かないのかなぁ、と……。


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