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やまくみさん正方形
山本 久美子
2011年5月21日 (土)

あなたが買うマンションの修繕積立金は妥当?

■修繕積立金はなぜ必要?
マンションを購入したら、毎月、管理費や修繕積立金を払うことになる。金額が少ないほど、家計の負担が少なくてよいと思いがちだが、入居して数年後に、いきなり修繕積立金が値上がりしたらどうだろう? 実際に、修繕積立金不足が原因で、想定外の値上げや一時的な支出が必要となるケースは多い。修繕積立金は、少なければよいというものではないのだ。

そもそも管理費は、マンションの設備点検や共用部分の清掃、共用部分で使う水道光熱費、管理員の人件費など、日常の維持管理に充てられるもの。日々快適に暮らすための必要経費だ。年間にかかる費用を月割りした額が、管理費として設定される。

一方、修繕積立金は、建物診断や共用部分の修繕工事費用に充てられるもの。30年などの長期間にわたって、想定される大規模な修繕工事の計画を立てて、その総額をまかなえるように割り出した額が、修繕積立金として設定される。

ところが、購入者の毎月の負担を抑えることで販売を促進したい、というマンションを分譲する不動産会社の思惑もあって、毎月の修繕積立金の額を低めに設定する傾向がある。多くの新築マンションでは、購入時に「修繕積立基金」としてまとまった額を集めることで備えているが、それでも修繕積立金が不足するという事態が起きてくる。

■国土交通省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を提示
そこで、国土交通省が目安となるガイドラインを提示したというわけだ。
専有面積1m2当たりの修繕積立金の月額(表1)が提示されているので、購入予定のマンションの専有面積を掛け合わせれば目安額を算出できる。機械式駐車場がある場合は、修繕工事費用がかさむので、別の算出方法で割り出した額(表2)を加算する必要がある。

そのガイドラインを使って、試算してみよう。管理費や修繕積立金は、通常は持ち分割合で負担する。つまり、マンション全体の中で専有面積の広い人ほど負担額が大きくなるという仕組みだ。
6階建て、建築延床面積約6000m2で、専有面積79m2のマンション(機械式駐車場なし)の例で試算しよう。表1の平均値202円×79m2=1万5958円が月額の修繕積立金の目安だ。表1で最も安い140円で試算すると、1万1060円に下がる。30年間に積み立てる累計額は、約574万円(平均値)や約398万円(幅最低値)となる。

ところが、実際の修繕積立金は、月額6550円に加え、購入時の修繕積立基金が約55万円と設定されている。30年間に積み立てる累計額は約290万円だから、ガイドラインの額より不足する計算となる。

ただし、このガイドラインには、いくつか留意点がある。まず、30年間均等に積み立てる「均等積立方式」で計算していること。あらかじめ段階的に増額する「段階増額積立方式」の場合は、増額分も考慮する必要がある。次に、国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインに沿って計画された、84事例を分析して算出したものであること。マンションの構造や設備、仕様によって、修繕工事にかかる費用が大きく変わるため、ガイドラインの目安の幅に収まっていない場合でも不適切とは判断できないという。

また、機械式駐車場の算出では、そのマンションの総専有床面積の値が必要となるが、物件広告等で記載されていることはまれなので、不動産会社に聞かないと分からない。

つまり、いずれにせよ、自分で試算して妥当かどうか判断するには材料が不足しているため、直接不動産会社に問い合わせて、ガイドラインとの違いについて説明を聞くほうが適切ということだ。万一、修繕積立金が不足することで値上げが想定されるなら、それを踏まえた資金計画を立てることが重要になる。


あなたが買うマンションの修繕積立金は妥当?

※1:事例のばらつきが大きいため、「平均値」とともに「事例の 3 分の 2 が包含される幅」を併せて示している ※2:15~19 階のマンションについては、事例が少ないため目安が提示されていないが、「15 階未満」の目安と「20 階以上」の目安との間に収まると考えられる



あなたが買うマンションの修繕積立金は妥当?

※3:機械式駐車場の修繕工事費を駐車場使用料収入で賄うこととする場合には、「機械式駐車場がある場合の加算額(B)」を加算する必要はない。1台あたりの修繕工事費×台数×購入を予定する住戸の負担割合=加算額


■国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の詳細
http://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000061.html

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