空想電子画素 ┼ fantastic electro pixel

へけもこのコミPo! 作品置き場

初恋警報(アラート)

》サイレンの響きが震わす缶ビール

 

このところ世界が終わる話ばかり作っていることに気づいた。
別に破滅願望があるわけではない(たぶん)。
実のところその反対で、どちらかというと希望を描きだそうとしている。

星が昼は見えず夜にこそ現れるように、絶望との対比で希望は輝く。
世界が終わっても人生は終わらない。

私たちが終わる世界と心中しない限り。


 

思い出の水族館

 》永遠にジンベエザメの見る夢で

 

人工知能が人間を凌駕するいわゆるシンギュラリティを扱ったSF。

現行の人工知能は、人工的に感情まで付与されているわけじゃないので、実際は人類に「反抗」し始めたりはしないと思う。

でも人間と人工知能間の知性の隔絶が大きくなり過ぎて、互いに理解できなくなることはありそう。

「分かり合えない私たち」というのが自分の永遠のテーマなので、シンギュラリティについてもどうしてもそういう切り口からとらえてしまう。

虹のかかる部屋

》金魚鉢 絶望の光が照らす虹

 

ミッキーマウスは全て手書き。季刊コミュポ22号初出。

 

猛烈な憎悪がもたらす絶望と、その絶望がもたらした光に照らされる希望。

本来、無関係な生と死が万に一つの偶然で結びつく、その鮮烈な対照。

 

前半と後半でまったく違う話になるうえ、クライマックスで主人公は寝てるし、何でこんな話になっちゃったのか自分でも苦笑するほど。

 

けれどこの話はこういうふうにしかならないし、これで十分だと思う。

支配者

》ピノキオの国で奇妙な殺人事件

 

剣士の3Dモデルを使ってみたくて作ったマンガ。

ちょうど国会にデモ隊が押しかけてる時期に作ったのでなんとなく風刺ぽい話に。

といっても政治的主張じゃなく自由意思の矛盾について。

ゴースト

》亡霊に抱かれて夜をさかのぼれ

 

いわゆるファン活動としての二次創作は得意じゃないんだけど、好きな作品のアナザーストーリーを考えているうちに全く別の話ができちゃうことがある。

このマンガがまさにそうで元ネタはこの MV(ネタバレあり)

 

女の子がバイクに乗って街を抜け出し爆弾で何もかも吹き飛ばして自由になる、というあらすじは同じ。

 

ただこの子が本当にテロリストで街を爆破したという風でもなさそうなので、この MV の世界はたぶん、モデル業のストレスから解放されたいという願望を描いた彼女の心象風景なんだと思う。

 

とするとあの爆弾はなに? ひょっとしてイングレスみたいなゲームでは? ペットの生き物もホログラムかも? ……と妄想を重ねるうちに別の話ができちゃった次第。

 

二次創作というには元の話から離れすぎだし、まったくオリジナルというには依拠し過ぎている……まあ一種の語り直しということで元ネタを明記してマンガにすることに。

 

Mat Zo の MV はセンスが良くていろいろ想像が刺激される。

 

 

 

 

 

夢の都

》終わらないパーティを夢で浮かぶ街

 

◆あんたのマンガ、ハッピーエンドが一つもないよね?

…と人に指摘されて作ったお話。

 

正確にはこれとかこれとかハッピーエンドだと思うんだけど、確かに少ない。

これは別に作者の性格がひねくれてるからというわけじゃなく、テーマを重視すると安易なハッピーエンドが思いつかないから。

 

自分のマンガは願望やコミュニケーションをめぐる話が多い。

ところが人生、そんなスムーズに願いがかなったり思いが伝わったりしない。

 「かなわぬ願い・伝わらぬ思い」でみんな悩んでいるから、それが作品のテーマになる。

 

そしてテーマを問題設定とすると、こういう問題には正解がない。

「頑張れば夢はかなう」「真心があれば思いは伝わる」といった解答は一面では正しいけれど安易でもある。

 

安易な答えを避けると、どうしてもハッピーでもバッドでもない、ビタースイートな結末になってしまう。

 

なんのことはない。作者の人生観が反映されているだけだなこれ。

あれ? やっぱり自分はひねくれた性格なのかな?

 

◆元ネタがあります

ところでこの話には元ネタがあって、そっくり同じことを実際にやった人がいるんだよ!

youtu.be

この方は マーク・デヴィッド・クリステンセン(Mark David Christenson) というコメディアンだそうで、動画は2015年3月に公開されたもの。

 

アカデミー賞授賞式の夜、式の行われたハリウッドの街でタキシードを着てオスカー像を持ち受賞者になりすましたマークに市民はすっかりだまされる。マークの行くところあらゆるものが無料になり、とうとう自動車まで手に入れてしまう。

 

動画の最後、電話番号を教えてくれた女性に種明かしをするんだけど、彼女は怒るどころか「知ってたわ。いいからパーティにいらっしゃい」って言ってくれるの。

 

これを見た時、なんだかオー・ヘンリーの短編みたいだなと思った。夢をかなえた男はいなかったのに、いて欲しいっていう人々の願いが積み重なってそれ自体が一つの夢になる。

 

人間の願望の強さと切なさが浮き彫りになる、まさに夢の都ハリウッドにふさわしいいたずらだよね。