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新興国を中心に、世界中で急速な都市化が進行している。国連のWorld Urbanization prospects(2011年版)によれば、2050年までに中進国では86パーセント、途上国でも64パーセント、世界全体では67パーセントの人口が都市に住むと予想されている。
急速な都市化はさまざまな問題を引き起こすことになり、中でも大きいのが交通渋滞だ。インドなどでは、自家用車を所有する中産階級が急増しており、それに伴って深刻な交通渋滞が起こっている。

カーネギーメロン大学のOzan Tonguz教授は、交通渋滞を解消するためのユニークなアプローチを2009年から研究している。Tonguz教授が参考にしているのは、アリやハチ、シロアリといった社会性昆虫などの行動だ。

例えば、2つのアリの行列が鉢合わせした時、必ず数の多い方のグループが優先的に道を通り、その後で少ない方のグループが通って、渋滞は起こらない。Tonguz教授がCEOを務めるVirtual Traffic Lightsでは、こうした習性をベースにした「仮想信号機」システムを開発しようとしている。

このソリューションでは、車両通信用の無線通信技術DSRC(DSRCは、ETCやVICSですでに利用されている)を使い、車同士がV2V(Vehicle to Vehicle)の自律型のネットワークを構築する。独自に開発されたアルゴリズムによって、近辺を通行している車の数や方向が調べられ、どの方向に向かうグループが最大か判断される。大きなグループに属している車のディスプレイには青信号が表示されて、運転しているドライバーに「進め」という指示を出すという仕組みだ。

Tonguz教授によれば、既存の信号システムから、この仮想信号機システムに移行することで、交差点の通過にかかる時間が4~6割短縮され、事故も減少。さらに、交通機関のエネルギー効率が上がることで、二酸化炭素の削減や、都市の生産性向上も見込めるという。

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン