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円安インフレ進行時の「ドル売り介入」

財務省が2月7日に発表した1月末の外貨準備高は、1兆2673万ドル。これは昨年9月から「4ヵ月連続の減少」、という事になる。


11年末と12年末の年ベースで比較した場合にも減少しており、これは外貨準備を2000年4月から時価評価するようになって以来、初めてとの事。 これには諸要因が存在するが、年末ベースでの減少の主たる要因として、民主党政権時代に創出された円高対応緊急ファシリティ(11年8月創出)が活用されている事が挙げられる。


当時注目を集めたこの緊急措置だが、この措置をザックリ説明してしまえば、「外為特会のドル資金を、JBIC(国際協力銀行)を通じ、海外でM&Aを行う企業へ低金利で融資する」という事になる。海外での資源確保という名目の下、円安トレンドを作り出そうとしたテクニカルな措置だった。


この措置が創出された2011年当時(8月)は、為替介入(円売り介入)の単独介入は「効果ナシ」、とみられていた事から、そのような「相手国との協調」に労力を要さず、さらには当ファシリティ創出に当たって「法令審議が不要」だった事などもあり、民主党創出の当ファシリティである「円高対応緊急ファシリティ」はスムーズな為替政策、とも見做されていた。


当時は、日米金利差が急激に圧縮されていた事もあり、そのような大きな円高トレンドの中において、当ファシリティは効果を発揮できずにいた。しかしここ4ヵ月連続で外貨準備が縮小しているのは、この円高対応緊急ファシリティの影響が出ているとの事。制度導入から1年以上が経過して、利用が増加、制度浸透が明確になってきたようだ。 貿易赤字の恒常化や連月の経常赤字、なおかつ今後も噂される日銀の拡張的新政策(緩和措置)など、「円安」を演出するための根拠が横並び状態だが、民主党政権が創出した当スキームも、円安トレンドに貢献している、という話。


この「円高対応緊急ファシリティ」は、設立当初は1年間の時限措置だったが、ここにきて当制度の活用確認とともに、連続的に延長。財務省によれば、現時点で今年3月末まで継続する事となっている。




急激な円安トレンドに外貨準備を活用


ここのところ、「円急落」といった報道が相次ぎ、資源高などの円安インフレが囁かれているが(自分もその1人だが)、経済を阻害するような「極端な円安」になった場合には、今まで何かと議論の的となってきた、この積み上がった外貨準備を活用する事はできる。


周知のとおり、外貨準備は約7割が米国債で運用されており、更にその7-8割は米短・中期債(Tビル・Tノート)で運用されている。それら米国債は償還期限がきたら、利子分も含め再び同証券を購入しており、それが外貨準備を拡大させている要因となっている。


昨今の円高トレンドによって、この積み上がった外貨準備に為替差損が発生している事が、何かと議論されてきたわけだが、円安へとトレンド転換している現時点において、為替差損は当然ながら縮小している。 仮にこのまま極端な円安に振れた場合には、この議論の的となってきた外貨準備残高を活用および縮小する事は可能(ドル売り介入)、という話。


過去には、このドル売り為替介入は、97年12月、98年4月に大規模実施されており、その前後(98年6月等)にも実施、当時の外貨準備は残高の10分の1以上使用した、という事になっている。


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当時はワシントンG7(98年4月、蔵相会議)などを経由し、日本政府はドル売り・円買い介入実施に至ったわけだが、昨今では単独為替介入には効果ナシ、というのが定説となっている。


しかし今現在行われているモスクワG20に見られるように、「円独歩安」を危惧する声が、今後一層大きくなったとすれば、国内における「円安インフレ懸念」の声拡大とともに、ドル売り・円買い介入を行う時が、ひょっとしたらくるかも知れない。 欧米各国は喜んで受け入れる事になるだろう、そうなれば、それなりの効果は上げられるはずだ。  (円安インフレ進行、という仮定の話だが)